#26(木)◆『もののけ姫』監・宮崎駿。 冒頭のテロップを見た時に「ヤバイな」と思ったのだが、予想的中。おもしろくない。映画になっていない。紙芝居を見ているようだ。期待しすぎたのか?★★★
#22(日)◆『天安門』監・?。 これじゃあ、テレビのドキュメンタリーと一緒じゃないのか?! ★★★★
#21(土)◆ KAMEYAMA & Co.
◆『ヤクザと抗争』監・佐藤純弥。 安藤昇の原作がめちゃくちゃおもしろいのに、なんでこれだけつまらない映画になるのか不思議だ。政治性を絡ませるとつまらなくなる。原作に描かれた雑多で魅惑の新宿風景や、学生ヤクザの若い破天荒な疾走感がまったくない。ただ愚連隊の子分たちの(『探偵物語』の松田優作を思わせる)軽さが救いだった。それにしても音楽がどうしょうもない。徳間書店は安藤昇の原作本をすぐさま復刻すべし。cf.任侠映画作品リスト。原作と比べたら★★
◆『花魁』監・武智鉄二。 一応、谷崎潤一郎原作で、三分の二くらいまではマトモなのだが、そこから突然バカ映画に変わっていき、ラストは絡みシーンにクレジット流れて終わる。脱力する。人面楚が女性器にとりついて、侵入しようとするペニスを加え、何やら白い液体で神父を攻撃するあたりが笑える。神父が女性器に十字架をつっこんで「悪魔よ去れ」って攻撃するのもバカバカしくて良い。ヒロインは葉月蛍(って言ってもピンク見てる人以外にゃ分からんだろうけど)にちょっち似ている。出だしのあえぎ声エコー、遊廓風景は迫力あって、セットや衣装も金かけてて、これはいけるんじゃないかと思ったのだが、ラストがあれじゃぁね。音楽もラスト近くになると腑抜けてくる。誰か山口椿の『雪花ものがたり』[トレヴィル]あたりをちゃんと映画化してくれないだろうか。★★★
#20(金)◆アンテナ。
◆『連続オナニー乱れる』監・上野俊哉。 脚本・瀬々敬久。瀬々脚本は、たしか以前の上野俊哉監督作品では中上健二をぱくってたが、これも中上健二的な物語(なんて断定できるほど実は読んじゃいないのだが)。瀬々敬久の凄いところは、ぱくりであることを公言するところだ。ぱくりだからってつまらない作品にはなっちゃいないぜっていう自信があるからだろう。じじつ松本大洋の忠実なパクリ作品「牝臭とろける花芯」(原題『おれたちゃ21世紀の糞ガキたち』)は傑作だしね。ただちょっと観念先走っちゃう傾向があるのが玉に瑕。『KOKKURI』なんてモロだもんね。佐野和宏のおかま役が妙に似合っていて素敵だ。何を演じても絵になるのが佐野和宏なのである。AVに見せかけるためのモザイクはまぁ許そう。しかしときどき、特に規制すべきとは思えない言葉にピーピー規制音が入るのが耳障りだ。1994年度ピンク大賞第一位。ビッグモーカルよりマスカットビジュアル文庫シリーズとしてビデオ化されている。しばらくピンク映画を観ていなかったが、こういういいピンク映画と出会うと、またピンク映画館通いが始まってしまいそうで恐い。もう夏休みも終わって授業もあるのに。が、とりあえず槙原めぐみ嬢の『巨乳美乳淫乳もみくらべ』は観にいくだろうし、佐野和宏の新作は絶対に観にいくだろうし……。ほとんど映画以前の映画とも呼べないガキ相手のつまらん映画を観にいくくらいなら、ピンクを観たほうがいいことは確かだ。少なくとも、映画にはなっている。新東宝はすぐさま佐野和宏全集をリリースすべし。★★★★
#19(木)◆『ラジオ・デイズ』監・ウディ・アレン。 これはもう3、4回は見てるだろうが、父親の職業がタクシー運転手だと分かるくだりは何回見ても泣ける。ラジオからまだやさしい音楽が流れていた時代の物語。★★★★★
#18(木)◆それにしても読む雑誌がないな。1974年あたりの『宝島』みたいな雑誌はないのだろうか?
◆とうとう偉大なる佐野和宏の新作公開なり!! 9/26(金)〜公開予定 公開タイトル「熟女のはらわた〜なんたらかんたら〜」 原題「ふくろうの夏」。いちはやく電話で情報をくれたさっちゃんに感謝!!さっそく公開初日に見に行こうか。
◆鈴木文成『まるくす』。 なぜ自動車であって、自転車でないのか!!!! 自転車のための理論家を求む!! 車乗りより自転車乗りの方が孤独で迫害されている!!★★★★[二玄社]
◆山本夏彦『やぶから棒』。山本夏彦の文章はどこからが引用なのかが分りにくい。いきなり「と誰々が言っていた」みたいな文章が出てくる。始めに「誰々が言っていた」という文章があるなら分るのだが。全集はまだ出ないんすか。ぷんすか。★★★★★[新潮社]
◆谷川史子『きもち満月』。 心地よい少女マンガ。★★★★[集英社 りぼん マスコットCOMICS]
#17(水)◆バイト辛い。棚卸しなんて向いてないことが分った。早くやめたい。
◆高野文子を検索する。アガタマニアと高野文子というのがあった。あがたファンで高野文子ファンの人がいるとは。同志なり。
◆重みづけ
◆小林信彦『時代観察者の冒険』。 「人生はつきつめれば人を裏切るか裏切らないかだ」というような文章があるのだが、これは処女作の『冬の神話』に通じるものがある。それにしても角川はいつまで『冬の神話』や『虚栄の市』や『オヨヨシリーズ』を絶版にしておくつもりなのか。絶対おかしい。あほ。★★★★★[新潮社]
◆市松まあち『空に太陽があるかぎり』。 ありがち。つまらん。★★★[集英社 MAEGARET COMICS]
◆西炯子『三番町萩原屋の美人(6)』。 めちゃくちゃうまい。泣ける。★★★★★[新書館 WINGS COMICS]
◆桐島いつみ『まっかな人間像(1)』。 桐島いつみは天才である。infoseekで「桐島いつみ」を検索したら、六件中四件が自分のページで、あとの二つはデータベースだから名前があるだけ。みんな分かってないね。★★★★★[集英社 BOUQUET COMICS]
◆沖倉利津子『聖子と吉三郎』。 幼い頃から好きだけれどお互い言い出せない幼なじみという典型的な少女マンガパターン。いまでも延々と伝承されてきているが、昔のマンガはヒロインが人を傷つけて自己卑下したりいろいろ内省して悩むのが良い。昔から少女マンガは内面の葛藤を描いてきたわけで、だから今だに我々(例えば少女マンガMLの人たち)は少女マンガを読んでいるのだろう。★★★★[集英社 MARGARET COMICS]
◆由貴香織里『天使禁猟区(1)』。 まだ一巻しか読んでないので分からん。兄と妹の禁じられた愛は個人的に好きだが。 ★★★★[白泉社 花とゆめCOMICS]
◆清水玲子『天使たちの進化論』。 清水玲子の描く女性は綺麗で良いなぁ。話も泣けるし。何だかんだ言って見かけると買っちゃうもん。でも長編になると話広げすぎてつまらないんだな。★★★★[白泉社 花とゆめCOMICS]
◆遠藤淑子『山アラシのジレンマ』。 ★★★★[白泉社 花とゆめCOMICS]
#16(火)◆よく考えたらバロウズが死んだのだった。ペヨトル工房の『ソフトマシーン』の解説で書かれていたバチもんの『ソフトマシーン』まで持っているくせに、とくに何の感慨もないのはなぜだろう?
◆quadition
#15(月)◆台風。
◆よく考えたら9月2日で22歳になっていたのだった。
◆ 若い男は嫌いだ。
#14(日)◆山口未央子提供曲傑作選のテープでも作ろうかと(それにしても暇なことやってんなー)、いろいろ聞き返していたら、田中陽子のあまりの下手さに愕然とした。ここまで下手でよいのか。しかも声がふてくされている。『ようこそようこ』のアニメは好きだったけどな。(いまだによっきゅんくらぶやってる人もいる!!) ちなみに編曲は『エヴァ』の鷲巣詩郎なんだな。『エヴァ』というのは一皮剥くとダサいものだったんだ。あの観客を取り入れた映像も、いまどきそんなことやるかーって感じで確かにダサかった。でも、おれは好きだったよ。ああいう本来ならイメージ・フォーラムとかアップリンクで密やかに公開されるような個人映画が全国公開されるのはいいことだよ。
◆『ドクター・クイン』を久びさに観た。マイク先生のお腹が大きくなっていた。時間は残酷だ。ジェーン・シーモアも老けていく。物語にネイティブ・アメリカンが絡むと、アメリカ正当化が鼻につくのは仕方のないことなのか。『ダンス・ウィズ・ウルブス』もそうだったが。
◆ 佐倉しおり『Sigh…。』は名盤だ。森山塔のマンガに「佐倉しおりのムネ」という書き込みがあったのがすごく印象に残ってる。森山塔のエロマンガの本棚の描きこみからヴィトゲンシュタインなど知ったわけだから、そういう点では、おいらは森山塔に一番影響されてるのかもしれない。
◆原田依幸・鈴木勲『六月のあやめ』[off note]も名盤だな。原田依幸の現代的な響きのピアノと、鈴木勲の古典的ビートが織り成す響きが、とても良い。
◆『えろとぴあ』の玄田生「終わらない歌をうたおう」の短期連載が終わった。人生はいいものだと一瞬思った。
◆伊藤麻衣子『夢の入口』のレコードジャケットの写真がめちゃくちゃかわいいので部屋に飾る。
◆『新世紀エヴァンゲリオン』におけるTV的あるいは映画的記憶とこだわり、そしてもがき
◆『ファンキー! 宇宙は見える所までしかない』松尾スズキ。 身体障害・近親相関を扱いながらも何故かギャグ。素晴らしい。こまっちゃうおじさん(だったっけな?)は『ぼのぼの』のしまっちゃうおじさんから来ていそうだ。マルクスと昔のタモリのとこもおもしろい。めちゃくちゃそうで、実はよく構造が練られている。 cf.大人計画,悪人会議★★★★★[白水社]
◆『ゲバルト斧』くしびき圭太。 本屋で見かけて、あまりにインパクトのあるタイトルに魅かれて買ってしまった。内容はくだらねえんだろうなあぁと思ってたが、以外とおもしろい。下半身の怒張が最高潮に達すると超人的肉体に変身する男が主人公。なぜそういう体質なのかという説明が全くないのが物足りないし、ヒロインの死がちゃんと描かれていないし、ストーリが男性ご都合主義すぎるという欠点はあるものの、こういうジャンルもあっていい。cf.満大。★★★★[双葉社]
#13(土)◆川上宗薫『贋教師』、くしびき圭太『ゲバルト斧』百円で購入。川上宗薫の初期短編や非エロ短編はかなり良いのだ。(もちろんエロもいいけど)。 筒井康隆も「「夏の末」を読んで一晩眠れなかった」というようなことを書いていた。
◆横浜美術館にて、特集上映「おばあちゃんの映画」。↓
◆『家、回帰』監・石井秀人。途中から観た。正面から年老いた体を撮るという真っ当な攻め方。観ていて辛くなった。★★★★
◆『おばあちゃんのもの』監・デビッド・ラーチャー。いろいろな特殊効果がうざったい。寝た。★★★
◆『眠る花』監・小口詩子。フィルムの状態が悪い。★★★
◆『冬中夏草』監・上岡文枝パンフによると、いつか家を出ていくのだという気持ちを表現したとあるが、どこらへんがそうなのかよく分からん。★★★
◆『親不知』監・上岡文枝。 こちらは風景を綴っただけだが、『冬中夏草』よりも時間が重層的で、より深くなった。16ミリフィルムは美しい絵が撮れる。★★★★★
#12(金)◆新宿、模索社にて、原田依幸・鈴木勲『六月のあやめ』[off note]購入。
◆フリーペパー『ALT vol.2』のインタビューを読む。サブカルチャーや前衛だらけで、メインカルチャーも後衛もない現代の不幸。敵が見えない。だからサカキバラくんが苛立つのだね。
◆新宿fuにてイメージリングス上映会↓
◆『私と、他人になった彼は』監・大谷健太郎。別れても別れられないカップルの話。ありがちな話ながらも丁寧な演出に引き込まれて飽きない。★★★★
◆『東京ホテル恋人フェンス』監・白尾一博。反復する恋人の映像に撮影者の解説がかぶさる箇所が非常に良かった。 ★★★★
◆『SPAGHETTI』監・原川玲美。スパゲッティを作るのが得意な女の子の日常の話。★★★
◆『わびしゃび』監・井口昇。 前半、個人的風景をつづり、後半はかつて好きだった女の子を撮影しにいく。繰り返される女の子との会話、「僕の名前は?」「井口昇先輩です」ってのが良かった。全体を通して非常に内省的というのも好きだ。★★★★★
◆『ブロードウェイのダニー・ローズ』監・ウディ・アレン。 テレビ東京はときどき深夜に良い映画をやるね。『死霊のはらわた2』を初めて観たのもテレ東の深夜だった。★★★★★
#11(木)◆近所の特殊レコード屋「ゴクラク」にて、CAN『カニバリズム1,2』購入。解説はいらんから、歌詞の日本語訳をつけてくれ!!!
◆『ガルシアの首』監・サム・ペキンパー。 cf.quadition#24, GOWの映画の部屋, 1997年6月の日記★★★★★
◆『秘密の花園』監・矢口史靖。 例えば岩井俊二が何もないのに対して、矢口史靖には何かあるから何回でも見返すことが出来る。どちらかというと『裸足のピクニック』の方が好きだが、これも過剰な物語ながらもさりげない哲学が感じられて素晴らしい。cf. 『壁の中の秘事』/65/若松孝二, ひみつの花園。★★★★★
◆いい映画を続けて2本も観たので、自転車で走った。
#8(月)◆『ダウンタウンDX』で初出演のつぶやきシローに対して、浜田「ちゃんとしゃべれや!!」というつっこみ。この破壊的とも、身も蓋もないとも言えるつっこみ、凄すぎる。笑った。
◆『どきどきヴァージンもう一度I LOVE YOU』監・中原俊。脚本・じんのひろあき、監督・中原俊という『桜の園』コンビにしてはつまらん。ちゃちなSFXなら使わないほうがまし。中山忍の水着シーンの乳首が素晴らしかった。それだけ。cf.日本の若手映画監督「中原俊&金子修介」。★★★
◆『ピストルと少年』監・ジャック・ドワイヨン。この監督の名前、どっかで聞いたことあるな。有名なのかな? 現代の『大人は判ってくれない』という謳い文句だが、この映画の大人は凄く物分かりがよい。安易に若いやつに迎合するという点では現代的ですな。物分かりのいい大人ってやだね。うだうだして世界と決着つけられなかった大人はさ。そういうのは30までだな(と自分に言い聞かせる)。いつまでもシンジみたいに生きてたら、「気持ち悪い」って言われちゃうからな。cf.『ラ・ピラート』。★★★★
#7(日)◆タイム凉介『日直番長(1)』、谷川史子『きもち満月』と岡田あーみん『お父さんは心配性(5)』、二冊で百円。
◆タイム凉介『日直番長(1)』。 雑誌で毎週読むなら面白いが、まとめて読むとちょっとだれる。流麗なモノローグとバカバカしい内容のミスマッチによる笑いは、新タイプの不条理ギャグマンガだと、雑誌で読んでた時はそう思っていたが過大評価していたようだ。★★★★[集英社]
#6(土)◆二階に住んでいた夫婦が引っ越していった。ドアに返済催促の封筒がたくさん挟まっている。おもしろそうなので、もらってきた。「電話一本くらいできるでしょ。このまま放置すると大変なことになりますよ」だそうだ。なるほど、大変なことになる前に引っ越してよかった。
◆バイトさぼる。暇になったので、竹坂かほり『空のオルガン 全八巻』、全巻一気に読破。こういう素晴らしい少女マンガを読むと、もう映画も小説もいらない、少女マンガだけ読めばいいやという気持ちにもなる。 ★★★★★[集英社]
#4/5(木/金)◆近所のエロメディア専門店で、エロ雑誌を立ち読みする。戦前の梅原北明の時代から、エロ雑誌は文化のパイオニアなり。
#1(月)◆作ってるミニコミの企画で、24時間自転車耐久。もちろんオイラはそんなことやらない。マンガを読みながら定期連絡を待つ役なり。結局、途中で財布を落として中止。
◆『天才柳沢教授の生活(1)~(8)』山下和美。 ★★★★★[講談社]
◆『動物のお医者さん』佐々木倫子。 ★★★★★[白泉社]
◆ タワーレコードで、V.A『NIGHT PASSAGE』[DOROBO]購入。池田亮司,Thomasa Koner, etc. タイトルからも分かる通り、静謐音響系。最近、この手のコンピレーション・アルバムが多くて嬉しい。でも、ashレーベルの日本人音響派コンピ・アルバム『地球』は、ジャケット・デザインが悪すぎる。色が嫌いだ。それに比べて、この『NIGHT…』は、青い夜に電柱と山という雰囲気のいい写真が使われていて素晴らしい。
◆東横線よ冷えすぎだぜ、体に悪い。
◆横浜帰って夜11時ごろだと、近所では牛丼屋くらいしか食べるところがないのだが、これがまずい。連続して食べると下痢する。特にカレーが不味くて、目眩がしそうだ。それでも、他に安い店がないから、なしくずし的に入ってしまう。しかも有線が無神経に暴力的だ。セリーヌに『なしくずしの死』ってタイトルがあったが、まさにそんな感じだ。(「セリーヌ」検索かけたら「セリーヌ・ディオン」ばっかだ!!)
◆muguykasya 5
◆アップリンク・ファクトリーにて、「犬童一心作品集」。新作『二人が喋ってる』で、日本映画監督協会監督新人賞及びサンダンス映画祭in東京グランプリをとった犬童一心の過去の作品をまとめて上映。↓
◆『すべての夏休みの終わり』監・犬童一心。 ラスト、ヒロインがくるりと回るところが良い。前の日に、阿部恭久の「生きるよろこび」という詩を読んでいたので、余計印象に残ったのだろう。初夏
反歯の教師にSVCの文例問われた
I feel fine.
ぼくの答えに振りむいた女の子
くるり
プールサイドでしたことは
解かれて薄暮
膝がなきそうだった
それもこれもくるりくるり
女の子も
英語に振りむくなんてあれっきりだろう★★★★
◆『夏がいっぱい物語』監・犬童一心。 オープニングはあがた森魚「ヂパング・ボーイ」をかぶせて、流麗に流れるカメラが夕暮の風景を捉える。少年たちと、高校生カップルの夏物語。『百万回生きた猫』のテキストが映画全編に挿入される。犬童一心は空の描写が多いので、心地よくボーっと出来る。キスの前、吹奏楽団が現われるシーンで、フェリーニを連想したりもしたな。ハリウッド映画だけが映画だと思っている人には、散漫で退屈だとしか思えないだろうけれども、本当の映画とは、この映画のような、時間の重みを描いた映画なのだよ。★★★★★
◆『何もかも百回も言われたこと』監・犬童一心。 美術予備校に通うヒロイン。とどまっている自分、なんだかうまくいかない、未来が分からない、過去によって自分はすでに規定されてしまっている。そんなデュルケム的社会観な感じで閉塞しながらも死なずに過ぎていく夏。今岡信治のピンク映画のテーマと似ているが、今岡信治の描く人物は世界とつながろう、または破壊しようという意志があるのに対して、この映画の主人公はそれが希薄だ。例えば瀬々敬久は『こっくり』でもそうだが、たいていラストは死で終わらせる。それは世代の違いなのか時代認識の違いなのか。死で全てを片付けるのは簡単であり、むしろ死ねるということは幸せで、殆どの人は、生殺し状態のまま生きていかなければならないのだから、やはりそう簡単に主人公を殺してしまっては困る。優しく潔癖な牢獄に住んでいる現代人は、そうそう簡単に死ねないのだ。『気狂いピエロ』の時代は終わった(あたりまえか)。犬童一心は、夏と青空の作家であるから(いま勝手にそう決めた)、暗い内容でも画面まで暗くならならず、とても良い。★★★★★
8/1997||10/1997
ISHIHARA, Shingo
shingoo@lily.sannet.ne.jp