◆渋谷で『エヴァ完結編』を観て痺れる。アスカの最後の科白には久々に痺れた。
◆ゼミ合宿。毎晩呑み、スイカ割り、酔って喧嘩、バーベキュー、早朝花火、朝靄の海岸で黄昏。やばい。
◆久々に渋谷へ。タワーレコードへ行くが休み。新宿へ。タワーレコードで、MAIN『H』、クセナキス『Chamber Music for Strings and Piano』、ウストヴォルスカヤ『composition1,2,3』。『ミュゼ』の最新号をもらうが、中身の雰囲気が変わった。内容が薄くなったようだ。
◆碕人堂で、千葉治郎『LOVE IS ALL』、関川夏央『家はあはれども帰るを得ず』、はるの若菜『御開帳』、深沢七郎『言わなければよかったのに日記』。
◆模索社で、『P・G no.37』『イーター 第3,4号』『中州通信 no.106』。
◆紀ノ国屋の前で待ち合わせて、『スタジオ・ボイス』の副編集長様らと飲む。飲みすぎて頭痛くなる。
◆山下公園へ花火大会を見にいく。
◆途中、ディスクユニオンで、ZNR『BARRICADE3』、DA CAPO『minor swing』買う。中村一義の『金字塔』を試聴したらかなりよかったので、そのうち買うだろう。ファーストでこれだけ完成度の高いものを作ってしまって大丈夫なのだろうか。
◆それにしても人が多すぎる。公園に入ることすらできなかった。しかも、近付けば近付くほど花火が見えない。しかたなし遠くから花火を眺める。自動車規制の範囲をもっと広げるべきだ。あと、露天商の数が少ない。数える程しか見かけなかった。田舎の花火大会だと、道の両側にずらっと露天商が並んでいて楽しいのだが、山下公園付近の道には(せっかく歩行者天国になっているのに)全く露天商の姿がない。つまらん。すかしてやがる。横浜もつまらん町になったもんだ。しかも一人で花火を眺めていると段々と虚しくなるというか寂しくなるというか……誰かと来ればよかったな。
◆しかも、帰り道、道に迷う。さすが方向音痴である。でも、古本屋とリサイクルショップを発見したので、まぁいいか。西炯子『えれが』、遠藤淑子『山あらしのジレンマ』、吉野朔美『恋愛的瞬間(1)』、沖倉利津子『聖子と吉三郎』、リザ・テツナー『黒い兄弟(上)(下)』。以上それぞれ百円。長田ノオト『盲獣』、松井雪子『晴庭家の三人目(1)』、鈴木正史『まるくす』、田中良成『超貧乏旅』。
◆近所のレンタルビデオ屋にV&Rの新作が入荷しないのが悩みの今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか? 僕は元気です(うそ)。
◆NHKの『ソリトン』(早く司会変更しないか!!)の俵万智がゲストの回で、初めて佐々木幸綱の顔を見る。……不動産屋の好色成金オヤジのようで、ちょっとあれは幻滅だよなぁ。評論や歌集からのイメージとかけ離れすぎていないか。作家なんてそんなもんか。でも魚喃キリコはかわいいんだよ。関係ないか。でも、漫画家というのは作家に比べて作品と作者の容姿が一致しているような気がする。
◆ SMスナイパーの北原童夢のエッセイ。現代美術で成功するか否かは賭けだというのに納得する。まぁ現代美術に限らず当てはまることだろうけど。あと黛俊郎がパゾリーニ映画の音楽をつけていたというのは初めて知った。あれはパゾリーニが日本趣味だから、パゾリーニ自身がああいう日本の音楽をつけていたのかと思っていた。
◆ 新創刊の文芸誌『リトル・モア』を買う。オイラの敬愛する浦沢義雄(『カーレンジャー』や『ポワトリン』や『忍玉乱太郎』など数えきれないほどの傑作を生み出した脚本家)と龍膽寺雄(スーパーモダニズム作家。どこかに魔子みたいな女性はいないかね? 昔の広末涼子はいいセンいってたのだがね。今はアレだが)の名前が同じ雑誌に共存しているので、思わず買っちまった。いかにもニューウェーブっぽいダサい表紙は嫌だけれど、水木しげるの貸本時代のマンガや、中原昌也による細野晴臣宅訪問などという企画がイカス。中原昌也は音楽ライターなら絶対質問しないようなことを質問していて笑える。「YMOの頃の印税はまだ入ってくるんですか」なんて聞かないよ普通。素晴らしい。これは最近出た辺見庸と吉本隆明の対談本でも感じたことだ。対談ってのは異種格闘技じゃないとつまらない。伺いましたというようなものではつまらないのだ。
◆ 『アナトミアvol.7』買う。いつもは立ち読みで済ませていたのだが、山口椿の文章が良かったので買ってしまった。オイラ基本的に人の悪口の文章って好きなのよね。あとセンテンスの長い文章。それに「女学校」とかいう言葉もいいなぁ。そういえば前ボロボロの『女学校校風物語』という本を買ったのだが、まだ読んでないなぁなんて書いてたら、NHKで突然、『思い出 〜ある記憶障害者とその家族の二年半の記録』が再放送され始めたやんけ。おお、標準で録画だ!! これは名作なんだ。記憶障害を抱えた男性と、その家族のドキュメンタリー。ホームビデオの映像にかぶさる音楽もいい!! 同じ監督の映画『幻の女』より、こっちのドキュメンタリーの方が好きだ。
◆ところで、この記憶障害を引き起こしたのが、例によって厚生省とバカ医者なんだよ。っていうか、今の医者って常識がないんじゃないのか。頭働いてる? アスカ風に言えば「あんたバカぁ」。
厚生省はもうずっと昔から大学教授と組んで凶悪なことやってんだ!! はっきりいって殺人集団だよ。最近「アリナミン」の害についての本をパラパラ読んだが、そこでもアイツラのやってる凶悪さが描かれていた。「この世で一番始末が悪いのは権力をもったバカだ」という名言を今思いついた。(いやこれは永野のりこのマンガの中にあったか)
◆大学病院なんてもはや人体実験場だよ。というより西洋医学しか学んでいない今の医者全員に問題があるのだが。ただ、アイヌの医療を研究している北大のグループがいるということには少しの救いを見いだせる。もっとこういうことを研究する医学者が出てくればいいのにね。患者を薬漬けにしたり、レントゲンで被爆させまくってるような医者ばっかだよ。金儲けしか頭にない現代日本カルト資本主義の病理が明確に露出されている。
◆ 『アナトミア』をパラパラめくっていたら『BAD TASTE』が二号で廃刊になったという文章があった。どうりで、見かけないわけだ。けっこう好きな雑誌だったのだけれど。同じ『BAD TASTE』というバカ映画を撮ったピーター・ジャクソンはどんどんメジャーになっていってるのになぁ。雑誌『BAD TASTE』の個人メッセージ・コーナーは良かった。アウトサイダー同志がつながり合える場をもっと作るべきで、これからのインターネットの役目はそれなのかもしれない(ってホントかいな?)
◆ 龍膽寺雄の小説、例えば「機関車に巣食う」や「放浪時代」をマンガ化するとするならば、それを描くのは町田ひらく以外にはいない。しかし実現する可能性はほとんどないだらう。いつかNHK出版で出版してください、黒川さん。
◆やたら杉作J太郎が『ゲリ』を持ち上げているが、今更、意味ないぞ。せっかく色んな所(といっても特殊方面に限った色んな所)に連載しているのだから、みうらじゅんみたいに変なブームを起こせばいいのになぁ。最近は、ブロンソンズの「エマニュエル夫人を抱きたいぜ 二の腕のなか」というメロディが頭のなかを旋回している。
◆メールを紹介しよう。ページで紹介してもいいとのことなので。「 はじめまして。 最近は『残酷な神が支配する(萩尾望都)』至上主義です。『日出処の天子』以来だわ,こりゃ。逆に,嫌いなマンガが増えています。とくに『東京大学物語』。いえ,実はもう,連載開始の時から大嫌い。「読まず嫌い」と言われるのがいやで,仕方なく読んでるけど,もう痛くて痛くて。江川達也の他の作品も……」。読むのが仕事とかそういうのでないのなら、嫌いな作品は読まなくてもいいのではないでしょうかね。
◆サークルで作ってる雑誌の最新号出版へ向けての編集作業で二日連続徹夜だったのだが、それはいいとして、今日のお昼に嬉しい電話があった。
◆かなり前から自己紹介のページに電話番号を書いておいた。多分、いたずら電話がかかってくるんだろうなぁと不安と期待があったのだけれど、そんなことは全然なくて、はっきりいって何も反応がなかった。ふん、どうせおいらのページ見てる人なんて少ないもんな、とがっかりしていた。が、ついに今日のお昼ごろ、おいらがぐーすか汗だくで(いや最近ほんと暑いね)寝ていると、電話のベルが。「石原です。どなたですか?」「・・・あのホームページを見て」ついにかかってきたのだ。しかも女性の人だよ。goo!!で森本みうを検索しておいらのページに辿り着たということだ。しかし、おいらは徹夜明けで頭が働いていなくて失礼なことを言ってしまったかもしれん。森本みう、かわいくて大好きよ、まぁそれはいいとして、また電話くださいね。ゆっくり森本みうとかノイズのお話でもしましょう。 なんか、こういう、はかなくて不安定なコミュニケーションっていいね。
◆とつぜんガスがでなくなったので、食料を調達するためにコンビニへ。しかし、何を考えているのか、カップヤキソバを買ってきてしまう。お湯沸かせないっちゅうねん。アホか。
◆梅雨は「つゆ」と読むのに、梅雨全線は「ばいうぜんせん」と読むのはなぜでしょうか?
◆徹夜した。とくに何の目的もなく。若い日の特権だよなぁ。久々に『目覚ましテレビ』を見た。八木亜希子は年を取るにつれて、ますますいい女になってきてるなぁ。ねぇ?(って誰に言ってんだろう)
◆床屋で、「適当に短くしちゃってください」って言ったら、本当に適当に切りやがって!!
◆黒川さん家でだらだらする。だらだらするのにとてもよい環境でした。一緒に新宿書房などへ行き、別れる。どうもおせわさまでした。また泊めてくださいね。
◆だめ連へ行く。中野駅前の公園にいくと、沖縄民謡を演奏していたグループがあったので、これがだめ連かと思い、近づいて一緒に踊っていたのだが、どうもだめ連とは違うらしいぞとうすうす気づいて、あたりを見回すと、駐輪場にたむろっている人達がいたので、そっちへ行って「これは何の集まりですか?」と聞くと、(確か神長さんが)「えっ何って・・・だめ連」と答えられたので、待ち合わせをしていた黒川さんを探すと、事前の合図通りカメラを下げていた好青年が目につき「黒川さんですか?」と問うと、「そうです」というわけで、二人は出会ったのだった。いろんな人とマンガの話ができて、とても充実したひとときを過ごしました。黒川さんの家にとめてもらう。ポカリおいしゅうございました。
◆帝京大に通う友達の家へ遊びに。中央大の近くに新しく出来たブック・オフで、清涼院流水『コズミック』、『西条八十詩集』、『日本文学全集 内田百間・中勘助・坪田譲治』、吉野朔美『ぼくだけが知っている(2)』、『アメージング・コミックス1988年春の号』。鈴木翁二『透明通信』を買う。ほとんど百円均一ものばっか。
◆ビックリドンキーでしょうもないことをだべりあう。自転車で警察に止められる。後ろに走らないとライトが点かないと言ったらうけた(ようだ)。マウンテンバイクに二人乗りしていた時点でうけていたようだが。
◆『人妻解剖学4』の「自由」というテロップに笑う。
◆久しぶりに町田に寄ると、レコファンがなくなっていた。連絡通路にテレクラの看板持ちがいた。前はああいうのはいなかった。UFOおじさんは相変わらず存在していたが、場所がちょっと小田急寄りに動いていた。中古CD専門店「D.C.D」で、ジョルジュ・ドルリュー『The London Sessions vol.3』、若山富三郎『極道仁義』、パレード『第三の男』を買う。しめて千円。高原書店で、牧野節子『極悪飛童』買う。驚いたのは、八王子の博蝶堂あたりなら一袋つめほうだい百円で売っているような本が、プレミアのつきの値段で売られていたことだ。
◆ネオ・バカ ネ ット!の日記が泣ける。
◆映画日記をHTMLで書き始めて約一年たったので、どのくらいの本数を観たのか数えてみると、211本だった。普通の人に比べたら多いだろうけど、映画おたくの人から見れば少ないのだろうな。高校時代は300本以上観ていたのだが。あの頃より暇なのに本数が減ったというのは、それだけ自分にとって映画を観るということが切実ではなくなったのだろう。
◆珍しく早起き。渋谷へ出て、まんだらけへ。永野のりこ『どーしちゃったのKENにいいちゃん!』、矢代まさこ『ノアをさがして』、陽気婢『日本の裸族』、根本敬『キャバレー妄想スター』、逆柱いみり『MaMaFuFu』を買う。しめて三千円。
◆昨日から腹の調子が悪いうえに、まんだらけの店内がクーラーききすぎ。腹が痛くなった。で、109の地下の便所で下痢便を下す。
◆たまごっちと巾着袋あわせて壱万円というテキ屋があった。すげえ抱き合わせ販売だなぁ。
◆亀有へ。亀有名画座へ。今岡信治の『痴漢電車感じるイボイボ』に泣く。今岡信治ほど現代のいきずまった雰囲気を的確に描いている作家はいないだろう。『イボイボ』のポスターをもらって帰る。亀有名画座は、欲しいと言えばポスターくれるから好きよ。ピンク映画のポスターが欲しいなんて人はあまりいないからだろうが。
◆亀有名画座の落書ボードは相変わらずタメになる。ピンクを観にきている人ってマニアックだよなぁ。『赫い情事』で流てたのがジョイ・ディヴィジョンだってのも分かったし(あそこらへんの音楽はオイラ疎いの。ジョイ・ディヴィションだって『クローサー』しか聴いたことない。)、押井守の『紅い眼鏡』が大和屋竺の『荒野のダッチワイフ』と関係しているとは知らなかったな。絵まで描いて説明してあってホント勉強になります。今までのあのボードの紙をそのまま載せた本を誰か作らないか。絶対おもしろいと思うがなぁ。
◆ 渋谷の東急入り口の所の百円雑誌屋で、東由多加『ぼくたちが愛のために戦ったということを2』買う。帰りの車中で読了。泣けた。
◆自転車のパンクを修理。横浜市立図書館へ。県立と比べると市立のほうが綺麗だというのはどこの県の図書館でも同じなのだろうか。借りたい本が貸し出し中。検索機が少なすぎる。『現代思想5月号 ストリート・カルチャー』、内田百けん(漢字が出ない)『冥途・旅順入城式』、河出智紀『まずは一報ポプラパレスより』を借りる。
◆ まんがの森横浜店で、鬼頭莫宏『ヴァンデミエールの翼(1)』、冬野さほ『ツインクル』、紺野キタ『ひみつの階段(1)』を買う。この手の店は混んでて臭くて好きじゃない。
◆古本屋で、逢坂みえこ『永遠の野原(4)(5)(6)』、別役実『マッチ売りの少女/象』、『ちくま哲学の森7 驚くこころ』を買う。全部で三百円。
◆東急ハンズでポスターパネルを買う。二千五百円もした。高い。
◆お祭りをやっていたようだが、パネルを持っていたので寄らなかった。タコ焼きを食べたかったが。
◆それにしても横浜は坂が多い。それに、歩道橋があるのはいいが、自転車は歩道橋の階段、登れないよ。どうしろっていうんだ。ほんっとに日本の道路は車の事しか考えてねえよな、くそ。サイクリストや自転車主義者のことも考えろ、行政は。パリを見習え!!
◆久々に自転車に乗っててコケた。何年ぶりだろう。段差が悪いんだ段差が。むかつく。パネルは折れ曲がるわ膝はするわ、もう超絶的にむかついた。二千五百円もしたんだぞパネル。くそ。今日は何もいいことがなかった一日。
◆以下、今月読んだマンガ↓
◆神田森莉『少女同盟』。 オウムについて描かれた、そして人間の本質について描かれた真摯なマンガ。特に最後の短篇のラスト1ページには身震いする。天才。掲載誌の『ホラーM』は少女向け恐怖雑誌だと思うが、これをいたいけな瞳の少女が読んでしまっていいのか? やばいよ。最近、この星評価の基準が自分でもよく分らなくなってきた。 ★★★★★★★[ぶんか社]
◆がぁさん『のぞみちゃんホットライン』。 ほのぼのSF。★★★[徳間書店]
◆くらもちふさこ『天然コケッコー(4)(5)』。 特に四巻の完成度が高い。これは良質の絵本だ。 ★★★★★[集英社]
◆吉野朔美『恋愛的瞬間』。 まぁ嫌いじゃあないけどね。相変わらず登場人物の名前は良いけどね。★★★★[集英社]
◆長田ノオト『盲獣』。 例えば初期の高橋葉介が好きな人ならば気に入るだろう。江戸川乱歩好きな人にもお薦め。著者は、招き猫カゲキ団やタイムスリップの愛聴者ということなので、そういう世界の好きな人ははまるでしょう。オイラも好きだが、星四つなのは、もっと凄いのが描けるはずだという期待から。★★★★[ぶんか社]
◆千葉治郎『LOVE IS ALL』。 千葉治郎の描く人物は、いつも悩み苦しみ、真剣に生きている。★★★★★[松文館]
◆大島弓子『雨の音がきこえる』。 「雨の音が聞こえる」「ヨハネが好き」を読んでいて、『ひとつ屋根の下』を連想してしまった。野島伸司はこれを読んでいたのだろうか。★★★★★[小学館]
◆大島弓子『シンジラレネーション』。 なんといっても「ローズティー・セレモニー」である。映画『ひとりで生きる』とか好きな人にはたまらんものがあるでしょう。なぜ大島弓子ばかり読んでいるかといえば、テスト前だから。テスト前は、逃避のために読んじゃうんだな。★★★★★[朝日ソノラマ]
◆ジョージ朝倉『カラオケ・バカ一代』。 思わずファンレターを書きたくなったほど気に入りました。こんなディープなお笑いマンガが『別冊フレンド』に連載されていたとは。おそるべし。いいかげんに描いていそうで実はめちゃくちゃ絵がうまい。それと、いい意味でスタンスが軽いという印象を受ける。素晴らしい。「アストロ・ワン」という単語が出た時点で無条件に爆笑してしまった。読んでてよかった『アストロ球団』。後半の内省的で暗いマンガも好み。[講談社]★★★★★
◆川原由美子『観用少女(1)(2)』。 「ああ…すてきな 青空の色だね…」 のところで、まずグッとくる。二巻冒頭短篇で、青年とプランツ・ドールが別れるところが泣ける。お客の目の玉が飛び出る描写が笑える。悲劇が多いが、全体的にみると、めちゃくちゃ暗いトーンというわけでもないのが作者の巧いところだろう。しかし巧すぎてもうひとつ何かひっかかりがないというような感じもある。読んでいて安心感がありすぎるというのかな。オイラも欲しいよ、観用少女。……やばいな、はは。[朝日ソノラマ]★★★★★
◆永野のり子『科学少年01くん』。 彼女には四コマの才能はないらしい。しかし、ストーリーものになると、すげーディープな世界が繰り広げられていて、とくに「母親と娘の関係」というのは彼女の重要なテーマのひとつだろうが、それがモロに噴出していて、読んでるこっちが痛々しさを感じてしまう。もちろん、もうひとつの重要なテーマである「アレ」も相変わらずアレでアレしまくってて、そのリリカルさには脱帽っすよ。★★★★★[アスキー]
◆坂田靖子『闇夜の本(3)』。 今まで、不覚にも『闇夜の本』シリーズは二巻までだと思っていた。一番好きなのは一巻なのだが、この三巻も相変わらず良いですな。(なんだか最近、書き口調が杉作J太郎っぽくなってしまっているのはどうしたことなのかね)。鬼が呑気にタンゴを踊るシーンとか、とぼけたサンタクロースとか、坂田靖子の真骨頂ですな。★★★★★[朝日ソノラマ]
◆中島徳博『アストロ球団(全20巻)』。最高っす。徹夜明けに読むと笑い死にするから危険です。★★★★★[集英社]
◆高野宮子『スプーン』。久々に胸をしめつけられたSFマンガ。切ないっす。★★★★★[角川書店]
◆たくま朋正『鉄コミュニケーション』。 地球最後の少女とロボット達との交流を描くほのぼのSF。よくあるエピソードをつなぎあわせているだけですな。新鮮味がない。★★★[主婦の友社]
◆ZERRY藤尾『FUN,FUN,FUN』。 二冊目の『SMILE』に比べると劣る。三冊目が楽しみだ。はたして出るのか心配だが。 ★★★[富士美出版]
◆永井豪『あばしり一家(1)』。 マンガ文庫の解説はくだらないのが多いが(なんて偉そうに書いてる自分の文章が一番くだらないのだけれど)、夏目房之介の解説はおもしろかった。★★★★[角川文庫]
◆吉野朔美『いたいけな瞳(8)』。 男二人に女一人という共同生活が理想的に描かれている話が好き。自分は共同生活をやったことないし、多分できないだろう。吉野朔美は確かにうまいのだが、もうひとつ毒が感じられない。上品すぎる印象がある。絵柄のせいかもしれないが。★★★★[集英社]
◆いましろたかし『ザ・ライトスタッフ(1)』。 いましろたかしのよく描くチビの女の子は、その絵から谷岡ヤスジを思い起させるのだ。江口寿史はいましろたかしを「かっこ悪さを極めた大友克洋」と評しているが、オイラは「ギャグを描かなかった谷岡ヤスジ」だと思うぞ。谷岡ヤスジがギャグじゃないマンガを描いていたとすれば、いましろたかしのようなものを描いていたんじゃなかろうか。★★★★★[集英社]
◆SABE『友達のいもうと』。 「幽霊とわたし」は意外にリリカルなのだが、ラストではギャグとしてまとめているのは、多分作者の照れなのだろう。「どチャリマー」は文句なしに笑った。「チャリとはそーした物だ/盗み盗まれ 再び逢えることなどないのだ」。その通りだ。★★★★[久保書店]
◆千葉治郎『リバースモード』。千葉治郎はただのエロ作家として片付けられない。魂こがしてますね。 ★★★★[白夜書房]
◆冬野さほ『hello, hello』。妙にくずし始めてる今より、このころの冬野さほの方がいい。初めの短編がめちゃくちゃ良いです。小学生の頃を思い出した。そう、オイラも逆上がりが出来なかったんだ。 ★★★★★[集英社]
◆千葉治郎『僕は君の中』。これほど感動的なSEXシーンはなかなかない。殆どのエロマンガは、主人公どうしがすぐにSEXしてしまうのだが、この作品だと、クライマックスにSEXシーンがただ一回だけあって、しかもその後、女の子は死んじゃうんだよ。う~ん、なんてオイラ好みなんだ。やっぱ死なないとダメだよダメ。ヘミングウェイも言ってるよ。「全ての物語は結局のところ死に行きつかざるを得ない」って。たぶん、言い方は違うけど。 ★★★★★[コアマガジン]
◆大島弓子『ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ』。 馬が死ぬ場面から始まるのを読んだときは嬉しかったな。自分も『罪と罰』の前半では、あの場面が一番印象的だったから。この単行本は久々に読み返したけど、『銀の実を食べた』のラスト、汽車の別れのシーンは、少しくさすぎかな。初めて読んだときは感動したんだが。『10月はふたつある』のラストは何回読んでも泣ける。★★★★★[朝日ソノラマ]
◆逆柱いみり『MaMaFuFu』。 それにしてもいい風景を描くなぁ。香港あたりの風景がベースになっているのだろう。『象魚』では一応人間の少女が主人公だったが、今回は猫らしきもののけが主人公。前作よりも描き込みもまして、めくるめく奇妙な世界が味わえる。なんだか永遠に読んでいたいマンガだよ。
とぼけたもののけや人間が、なんの違和感もなく同居している。逆柱いみりのテーマパークを造ってほしいなぁ。ディズニーなんかよりおもしろいと思うけどなぁ。水木しげるとつげ義春と内田百間をどろどろ溶かしこんだような世界だ。出前ロボットが好き。出前がぐちゃぐちゃになってしまって「ばかやろう」と少女が泣いてるコマに笑った。そんなことで泣くなよ。★★★★★[青林堂]
◆矢代まさこ『ノアをさがして』。 見えないものが見えるゆえの悲劇、その悲劇からの脱出。初期の少女マンガは読んでて辛い。サンコミックスで出てた「八代まさこ名作シリーズ」をそのまま復刻したほうが良かったんじゃないか?★★★★[NHK出版]
◆とりみき『人達』。 不条理ギャグと古典的ギャグの幸せな同居。 ★★★★[ぶんか社]
◆井上三太『ぶんぷくちゃがま大魔王』。 都会と郊外との微妙な境である町田を物語の舞台にしたというのが凄い。
例えばこれをちゃんと小説化したら絶対何かの賞を獲れると思う。いい才能はほとんどマンガのほうに流れている。★★★★★[同文書院]
◆ZERRY藤尾『SMILE』。 巨大少女が登場したり、ラストで突然作者がでてきたりする。意識的にエロマンガの枠をはみ出そうという態度が嬉しい。そのなかでも特に、『スローターハウス5』を意識したという短編「日々の名残」は、カットアップの手法が効果的で、ラストの少女の笑顔が泣ける。四天王のピンク映画に共感出来る人ならば、はまるでしょう。こういう人がいるからこそ、オイラはエロマンガを読んでいるのだ。 ★★★★★[富士美コミックス]
◆いましろたかし『とことこ節』。 昔の友人から8年ぶりに呼び出される。むかし借りてたビデオが出てきたから返すという。受け取って、アパートに帰りビデオを見てみると、それは洋ピンだった。そういう情けなくて切ない話がたくさんつまっていて、やるせなくなる。 ★★★★★[イースト・プレス]
◆冬野さほ『ツインクル』。読むのに疲れた。流し読みの出来ないないので、まとめて読むと疲れる。 ★★★★[マガジンハウス]
◆魚喃キリコ『blue』。 田舎が舞台というのは新鮮だった。 ★★★★★[マガジンハウス]
◆大島弓子『さようなら女達』。 これはもう何回読み返したか分からないほどだ。今回は近所の古本ショップでフラワーコミックス版が二百円で売ってたので、すでに持ってるんだが、これは二冊あってもいいかなと思って買ってしまった。 ★★★★★[小学館]
◆SUEZEN『マリンカラー(1)』。 『アメージングコミックス第一号』の短篇は良かったんだけど。こういう絵を描く人になっているとは知らんかった。 ★★★[角川書店]
◆永野のりこ『電波オデッセイ(1)』。 これは個人的にはめちゃくちゃくる。今年のベスト1だろうな。永野のりこは凄い表現者だ。真の表現者だ。★★★★★★★[アスキー]。mogiさんのコメント「永野のりこの電波オデッセイは私もキました。 星が7つもついているのがうれしかったです。」
◆山田花子『花咲ける孤独』。 彼女の描いたものを本当に理解できる人がどれだけいるのだろう。ほとんどの人は、分かった気になっているだけだろう。「花咲ける」と自虐的に開き直らなければ生きていけないところまで「孤独」を体験した人は少ないはずだ。山田花子や松本充代のマンガについては書きたくない。自分にとってあまりに切実すぎるものだし、いつか彼女たちのように、自分自身の手で対象化して浄化させたいし、それに自分はまだ決着を付けられず、だらだら生ているのだから。そういえば『自殺直前日記』は読んでないな。これからも読まないだろうし、読む必要はないのだ。多分彼女は、他人に読まれることを前提として日記を書いていただろう。しかし、絶対に読まれたくないという感情もあったに違いない。日記というのは大抵そういうものだ。自己分裂している人間だけが日記なんてものを書くのだ。日記なんて書かないでいられるほうが幸せなのだ。人は不幸なときにしか日記を書かない。 ★★★★★[青林堂]
◆西炯子『水が氷になるとき』 。西炯子の中では、この本が一番好き。★★★★★[集英社]
◆あとり硅子『夏待ち』 。おばさんのキャラクターがいい味だしてる。夏の雰囲気がよくでている。★★★★[新書館]
◆佐藤史生『ゼロワン』。★★★★[]
◆業田良家『歌男』。業田良家が実存主義者だということが分かる。★★★★[集英社]
◆さべあのま『優しい贈りもの』。 さべあのまの描く優しさはドルリューの音楽の優しさと同じような気がする。これでさべあのまの単行本は全部読んだことになる、多分。★★★★★[新潮社]
◆永野のりこ『どーしちゃったのKENにーちゃん!』。 すげーリリカル。たまらん。感動。永野のりこは、おちゃらけているとみえる作品、例えば『God save the すげこま君』でもリリカルさがしじみ出ている。安達哲と同じ匂いがする。★★★★★[ワニマガジン社]
◆紺野キタ『ひみつの階段(1)』。 予備知識もなく表紙の絵が目に付いたので買ってみた。綺麗な絵。難を言えばくせがなさすぎるが。しかし透明感がある瞳が良い。背景に葉っぱが茂っているのもいい感じだ。少女マンガのコマの表現というのは感覚的だと思われがちだが、実はちゃんと理由があってそうなっている。例えば「庭の小鳥」8ページ一番上の、主人公の顔にかかったコマ。このたったひとつのコマが様々な役割を果たしている。少女マンガの文法の深さに改めて感心してしまった。★★★★★[偕成社]
◆根本敬『キャバレー妄想スター』。 さすが特殊マンが大統領である。初期作品に比べてかなり特殊化が進行しているので、読み通すことができない人も多いだろう。オイラは一気に読めなかった。ときどき本から顔を離し、「凄すぎる」と呟きながら読み進めた。実際凄いよこれは。これが人生最後に読むマンガでもいいと思った。出版社の名前が笑える。濃い。★★★★★[ブルースインターナショナル ]
◆Moo.念平『あまいぞ男吾(1)』。 小学生の頃好きだった。ペンネームを引っ繰り返した著者名がおしゃれだと感じた記憶もある。今読み返してみてもおもしろい。確かMoo.念平は洋泉社の『マンガ秘宝』でインタビューを受けていた。★★★★[小学館]
◆陽気婢『日本の裸族』。 からみがない方がいやらしいかも。ヌード写真でも全部脱ぐよりちょっと服を付けていた方がいやらしいもんあぁ。陽気婢にしてはイマイチ。★★★[講談社]
◆今月の映画↓
◆横浜西口ニューシネマにて、『濡れ濡れ白衣 もっと奥まで』監・勝山茂夫。 沖縄の自衛隊を辞めた主人公が、『ゲリ』のシンジのように悩み、友人の妹をレイプした成金ヤクザを殺し、逃亡する。水野麻亜子の絡みが良かった。
岸加奈子嬢の乗る自転車で始まり自転車で終わる演出が素晴らしい。沖縄問題や神戸殺人をすぐに取り入れられるというのは、ピンクの利点のひとつだろう。画とは関係ないが、劇場で変なオヤジにつきまとわれて怖かった。おしっこしてるとこのぞき込まれるし、椅子に座ってると、段々近付いてくるのが分かるんだよね。女性のチカンに対する恐怖が分かったような気がした。劇場の窓口のおばちゃんはめちゃくちゃ優しくて、自転車を盗まれないようにと、劇場入り口にとめさせてくれた。★★★★
◆『イル・ポスティーノ』。 それまでポストマンを主体に描いていたのに、ラストカットが詩人で終わるのが納得いかない。濃い顔のポストマン。自然音録音シーンは泣けるところなのに、泣かせるための演出が下手。★★★★
◆『トワイライト・ランデヴー』監・ツイ・ハーク。 タイムトラベルラヴストーリー途中まではいい。後半だれる。★★★★
◆『スワロウテイル』監・岩井俊二。 長い割りには、長さを感じさせないが、みんながいう程いいのかなぁって感じですな。★★★★
◆『冒険者たち』監・出崎統。 ガンバと七匹の仲間たち。さすらいギャンブラー「イカサマ」が生き生きと描かれているのは、大和屋竺が脚本に参加しているからだろうか。 ★★★★★
◆『クライム・オブ・ザ・フューチャー 未来の犯罪の確立』監・デヴィッド・クローネンバーグ。 こういう尖った自主映画のような雰囲気は好きだ。絵と音楽は完璧。初期のひさうちみちおのような硬質さ。サントラ出てないのかな。出てないだろうな、こんなの。 ★★★★★
◆『チンピラ』監・青山真治。 金子正次の原作を大沢たかおとダンカンを主役に再映画化したもの。めちゃくちゃいい。カメラワークは完璧だし、ときどき象徴的に挿入される風見鶏のカットも素晴らしい。不親切に時間軸が交差しているところが好きなのだが、難解でついていけないって人もいるんだろうなぁ。思うけど、洋画とくにハリウッド映画ばっかり観てるとバカになるよ。★★★★★
◆『新・死霊のはらわた』。 ライミが『XYZ Murders』の頃に製作総指揮したゾンビもの。かなりあの頃のライミタッチで好きなのだが、テンポが悪くて途中で寝てしまった。ライミの最高傑作は『死霊のはらわた2』だと思うのだがどうだろう。特にあのラストの展開に痺れる。★★★
◆『マーシャル・アーツ・マスター』。 ブルース・リーのドキュメント。関係者がリーについて語る。実際にブルース・リーが強かったことが分かる。関係ないが千葉真一も実際は強いらしい。しかし倉田はあやしいと思う。★★★
◆『カンパニー松尾傑作選』監・カンパニー松尾。 名前は知っていてもカンパニー松尾のビデオはあまりというかほとんど観ていないので、こういうビデオはありがたい。時代の雰囲気は捕らえていると思う。映像テクニック的にもいいセンいってる。テロップの文字はちょっとしつこいが、「幸せになりたい、けど早く死にたい」とか好きだな。林由美香を捕らえた長回しの映像が良い。ハイレグヒッチハイクの女の子が「このまま死にたい」と叫びながら絡んでいる姿に胸をうたれた。カンパニーはこれからどうしていくのか。いつまでもはめ撮りを再生産していく訳にもいかないだろう。このビデオのラストは「何も変わらない、何も終わらない」だ。すごくよく分かるのだが、しかしそこから抜け出せるという希望もあるとは思う。★★★★
◆『誘惑な女』監・福岡芳穂。 青年が母親とおぼしき女と出会い、そして森の中の理想の家で母親と暮らし始める。母親を殺して終わりだと思ったが、そう簡単にはいかなかった。それより悪夢的な終わり方だった。『イカせたい女』でもそうだったが、この人はSFっぽいのが好きらしい。そして主人公が閉鎖的な世界から抜け出せないというのも。★★★
◆『痴漢電車いい気持ち』監・滝田洋二郎。 高木功と滝田洋二郎コンビの作品はドタバタコメディとして傑作だと思っていたが、繊細な描写(例えば炬燵を転がる赤チン)も見逃せない。ボーイ・ミーツ・ガール痴漢電車。必ず誰かはいい目を見ないというのがこのコンビの作品の特徴だが、高木功はどういう考えでそうしていたのだろう。観客の立場からすれば全員ハッピーエンドのほうが嬉しい。そう分かっていても、やっぱりあっけらかんとしたハッピーエンドで終わらせることはできなかったんだろうな。★★★★
◆『身体検査は魅すてりい』監・滝田洋二郎。 劇場公開題は『痴漢保健室』。去年の暮れに亀有名画座で観て、今回ビデオで観たわけだが、やっぱり何回観てもおもしろいわ。現在この路線を受け継いでいるのは中野貴雄だと思うが、でも高木功の脚本と滝田洋二郎の演出には、中野貴雄にはない繊細な抒情がある。中野貴雄にはもっとピンクを撮ってほしいけどね。『超過激本番・失神』みたいなスラップスティックをもっと撮ってほしい。★★★★★
◆『母娘監禁・牝』監・斉藤水丸。 脚本・荒井晴彦。荒井晴彦といえば今年の『映画芸術』のベスト選出の発言に覇気がなかったのを思い出す。いつまでも『映画芸術』で蓮見重彦をのさばらせておくな。がんばって欲しい。この映画は前川麻子に尽きる。こういう顔立ちが大好き。ほれた。冒頭のシーンでは片岡義男の『少女時代』を思い出した。パッケージには、彼女が劇団の座長をしていたとあるが、劇団名がわからない。今でもやっているのか。さらに『サディスティック・アサコ・バンド』のレコードは出ているのか。どこかにこの映画のポスターは売っていないのか。情報もとむ。検索したらこんなページがあった。さらにこんなのも見つかって、インターネットってなんて便利なんだ。あとはポスターがどこに売っているかだ。前川麻子に★★★★★★★★★★
◆6/3(火)、亀有名画座にて、 『俺たちゃ二十一世紀の糞ガキタチ』監・瀬々敬久。 二回もみちゃったよ。もうスクリーンで合計何回見たかわからん。相変わらず画面の美しさに酔う。これが何で全国公開されないのかね。「ピンク」映画としては失敗作だが(事実出ていった観客がいた)が、ピンク「映画」としては傑作だ。今これほど色にこだわり構成力のある映像を撮っているのは、瀬々敬久と阪本順治ぐらいじゃないか。★★★★★
◆『THE TRAGEDY OF A SHAMELESSMAN』監・今岡信治。 『彗星まち』がかなり良かったので、期待して観たのだが、どうも前作と感じが違っててダメかなぁと思っていたら、すげー傑作ではないか。画面に吸い込まれた。悲しい歌の流れるラストシーンが素晴らしい。ときどきぼけるのも意味があるのだろう。「世界」や「現実」の危うさを表現しているのではないか。今岡信治ほど現代の閉塞感を明瞭に表現している監督はいない。僕らの時代は革命家は過去の追憶に浸り、爆弾さえ爆発しない時代だ。福岡芳穂監督の『イカせたい女』でもそうだが、世紀末がきたってなにひとつ変わりはしない。クレジットの出し方は『エヴァンゲリオン』の影響か。ピンク映画のポスターは再生産的デザインで新しさがなかったのだが、この映画のポスターは上品で部屋にも飾れる(と思う)。水野麻亜子もかわいく写っているのでもらってきた。★★★★★
◆『コギャル・コマダム・人妻・美熟女 淫乱謝肉祭』監・池島ゆたか。 これも二回見た。五代暁子の脚本は当然うまいし、池島ゆたかの絡みの映像もいやらしくて上手。ピンク映画の見本のようだ。ただラストシーンで最後まで少女が父親に手を振っていたのが気にいらなかった。途中で手を振るのを止めて後ろを振り向いたら良かったのに。★★★
◆今月の本↓
◆松尾由美『ジェンダー城の虜』。 ★★★★[早川書房]
◆古井由吉『白髪の唄』。これは凄いね。このエクリチュールは。 ★★★★★[新潮社]
◆エバン・ハンター『去年の夏』。 エバン・ハンターより、エド・マクベインの筆名のほうが有名だろう。でもこれはミステリーではなく青春もの。残酷で切ない青春物語。一回映画化されたらしいが、現代の日本を舞台にリメイクすれば、きっといい映画になるだろう。橋口亮輔あたりが撮れば良い。★★★★★[角川文庫]
◆太宰治『ヴィヨンの妻』。 太宰自らが書いてている通り、小説とは「いいわけ」である。太宰治は人一倍それがうまかった。どうもこの短篇集に収められた作品群は、読んでいて、反感ばかり起こった。自分のことを赤裸々に書いているようでありながら、実はそうじゃないんだね。もしオイラが女で、太宰と付き合っていたとしたら、拳でぶん殴るね。「死ね」って。自虐的な男だから応えないだろうが。★★★[新潮文庫]
◆太宰治『津軽』。 これはいい。これは傑作。とくに乳母たけと逢う場面。あとラストの一行。しかし解説はいらないなぁ。太宰の文庫本の解説はいらないだろう。書いてる人が全て同じというのもつまらない。★★★★★[新潮文庫]
◆清涼院流水『コズミック』。製本が大変だろうな、このぶ厚さ。アンチとかメタ・ミステリーは好きで、話題になったのは読んできているつもりだったが、情報というのはアンテナを張っていないとなかなか手に入れられないもので、この作品のことも最近妹に教えられて初めて知った。これは個人的には失敗作。犯行の動機は自分にとっても切実なものだったけれど、どうも納得いかない。世界を反転させるところまでいってない。厚い割には長さを感じさせないで、すんなり読めたのは作者の力だろうが。この謎解きはどうなるんだろうと久々にワクワクさせてくれたのは嬉しかった。探偵同士の推理合戦が白熱しないのは、メタ探偵だから仕方がないのか。直感とか潜在推理とか言われても読んでる方は困るよな。ミステリーMLに参加する。cf. 「インターネット・ミステリ大賞」の『コズミック』評 。★★★[講談社]
◆河出智紀『まずは一報ポプラパレスより』。 短かすぎる。仕方ないことだろうが。でもこういう話は、もっと長さが必要だろう。 ★★★★[集英社]
◆牧野節子『極悪飛童』。 児童文学。ところどころ、いい。 ★★★★[文渓堂]
◆島村洋子『せずには帰れない』。 スケベエッセイ(というのだろうか?)。傑作。 ★★★★★[双葉社]
◆東由多加『ぼくたちが愛のために戦ったということを2』。「悲しみのキッチン」「街のメロス」収録。なんだか凄く熱血している感じだ。戦いが激しい。まだそれが可能な時代だったのだろう。共同幻想を嘲笑しながらもそれを捨てていなかったのだろう。現在の戦いは静かに孤独に行なわれている。今岡信治のピンク映画『痴漢電車 感じるイボイボ』を見よ。今は小さな爆弾さえ爆発しない時代だ。「いや、犯罪者でさえ生き生きと生きていたに違いない。だが、俺たちは、寒い、長い冬に、ふるえていた。現実の壁にもたれて、ただ遠くを見ていた。ひとかけらのチャンスもない。ひとかけらの夢もない。いったい、誰のことを青春と呼ぶんだ!? 俺のことを誰もまだ青春とは呼ぶな」。★★★★★[而立書房]
5/1997||8/1997
ISHIHARA, Shingo
shingoo@lily.sannet.ne.jp