1997年5月


#30(金)

◆秋葉原へ。テレコを買う。一番安い4000円の。

◆ディスクマップで、マーマレード・スカイ『パーマネント・バケーション』というインディーズ盤をジャケ買い。だって曲名が「ある日どこかで」とか「皆殺しの天使」とかなんだもん。思わず買ってしまった。猛毒のベストも欲しかったが、四千円はキツイなぁ。猛毒が解散してしまったのは日本の音楽界の大きな損失だろう。あとあがた森魚 の『永遠の遠国』のミニ盤みたいなのも欲しかった。いつになったら完全盤が出るのやら。

◆ユーロスペースへ。テレコで『ギャングよ向こうは晴れているか』を録音。

◆家で『パーマネント・バケーション』を聴いてみた。曲は悪くはない。ジャケットワーク、歌詞は完璧。ただアレンジがチープすぎる。しかしホントに詞はいい。




#26(月)

◆群馬に実家へ帰る。妹の入院のつきそい。以前は突然叫んだりしてめちゃくちゃだったが、まともに戻っていた。良かった良かった。

◆ ブックオフやらで、大野晋『日本語の年輪』、『堀辰雄 集』、Moo.念平『あまいぞ男吾(1)』、『キラキラ 全8巻』安達哲、オースン・スコット・カード『死者の代弁者(上)(下)』、 ふくやまけいこ『タップ君の探偵室』、 浅田弘幸『蓮花(1)』、中川李枝子『かえるのエルタ』『らいおんみどりの日ようび』、植芝理一『ディスコミュニケーション(1)』、 浜岡賢次『浦安鉄筋家族(6)』、 山尾悠子『オットーと魔術師』、 湯浅学根本敬船橋英雄『ディープ・コリア』、西原理恵子『サイバラ式』を買う。全て百円だ。おいらは百円均一主義者だから。




#25(日)

亀有名画座へ友人と。第九回ピンク映画大賞。

◆ 喫茶店に寄ってスパゲティを頼んだら出てくるのに四十分もかかりやがって一本目の吉行由美監督作品を見損ねた。劇場内はほぼ満員。テレ朝の『トゥナイト2』とあともうひとつどこかの取材がきていた。受賞式では池島ゆたかと林由美香がプレゼンター。オイラの座った席は前列いちばん右で、壇上に上がるのに使用する階段(ビール箱というのがいい味だしてる)のすぐ近くだったので、女優を間近に見ることができてラッキーだった。来年も同じとこに座ろう。去年に比べると来場した女優が少なかった。葉月蛍嬢が劇団の稽古で来られなかったのは残念だったが、水野麻亜子嬢や槙村めぐみ嬢がめちゃくちゃかわいかった。槙村めぐみは菅野美穂に似ているようだ。容姿も性格も。プレゼントコーナーでは「牝臭とろける花芯」のポスターをもらって、その上、槙村めぐみ様にサインをいただいた。嬉しい。これは家宝だ。今岡信治が獅子プロの助監督募集中と言うのを聞いて、その手があったかと思った。そういう方向に進むのも悪くはない、というよりサラリーマンになるよりはそっちのほうがいい。『P・G』を3冊ほど買って帰る。六本も高レベルの作品が観れて、しかも綺麗な人も観賞できて、その上いろいろ楽しめるんだから、これで千二百円はめちゃくちゃ安い。普通のくだらん映画を千八百円出して観るなんてもう考えられないな。『不倫日記』は三回目だったが、おもしろい。切ない。これだけ豊穣な物語を含んだ切ないエンターテインメント映画がピンク映画館だけでしか上映されないというのが信じられない。下らない映画は全国公開されるのに。




#22(木)

◆ユーロスペースへ。ついでにタワーレコードで、AMI『spiritual voice』(1040 label)、『Liminality』(デジタル・ナルシス)を買う。後者が久々の名盤。一生聴き続けることになるだろう。




#20(火)

「行くこと 戻ること /ぼくらはできる 忘れること /それから眠ってしまうこと /めざめる 苦しむ 年とること /それからまた 眠ること /死を夢みること /眼をさますこと 微笑むこと 笑うこと /若返ること」(プレヴェール「このアムール」)




#19(月)

◆「鼻毛が出てるよ」と指摘される夢をみた。




#18(日)

◆今日はいい天気だからだろう、サイクリストをたくさん見かけた。オイラも自転車で横浜の港あたりをぶらついた。ママチャリダーしんごの日本一周紀みたいなことをしている人にオイラは憧れる。帰りに伊勢佐木町の有燐堂で立ち読み。『悪知恵マニュアル』という本のセコさに笑う。ただで映画館に入る方法として、出てくる客にまぎれて後向きに段々と入っていくというのが紹介されていて、その絵を想像するとおかしくなった。

◆古本屋とビデオ屋をひやかして帰る。ビーフシチューをつくる。自分でつくった料理は何故おいしく感じるのだろう。

NHKを偶然みたら、谷川俊太郎と湯浅譲二が対談していた。湯浅譲二はかなり好きな作曲家なのでそのまま見ていたら、「僕らの若い頃は実験工房で仲間と切磋琢磨していたけど、いまの若い子はそおゆうのあるのかぇ」、という話がでた。あぁ、こういうこと言うオヤジにだけはなりたくねぇよなぁ。でも湯浅譲二の曲も谷川俊太郎の詩も好きだけどさぁ。

トリアーの『ヨーロッパ』観る。ウド・キアー出てたとは知らんかった。

◆ レンタルショップで、たしか妹が欲しがってたので、ヤプーズ『ダイヤルMを廻せ』を450円で買う。若松孝二監督『犯された白衣』、サトウトシキ監督『最新ソープテクニック2』借りる。新東宝のピンクのビデオがある店は近所でここ一軒だけだ。2、3本しかないが。そういや若松孝二の傑作『荒野のダッチワイフ』もビデオ化されたはずだが、レンタルショップにはない。セルのみだったけ? スピッツ『クリスピー』も借りる。

◆ゴダールで好きなのは『カルメンという名の女』[IMDb]だけだ。その主演のミリアム・ルーセルが主役のソフトエロ映画があったのだが、借りなかった。

◆いや、オイラが一番好きなのはシャルロット・ゲンズブールなのだ。ナタキンもいいけど。でもどっちも老けたな。美しい人は永遠に美しくあってほしいもんだ。




#17(土)

日本女子大学で「寄せ場学会」。初めて女子大に入る。芝生があって、建物も洋風でチャペルがあって、教室では合唱が響いていて、いかにもミッション系の女子大って感じぃ。男子トイレもあった。近くにある丹波哲郎の家が豪邸だった。学会が終わってから、西荻窪駅前の居酒屋で親睦会。なんか最近、飲み会ばっかや。学会で話題になったのは、寿は普遍性をもち得るか云々。実際にホームレス社会を観察してみて、オイラがいちばん問題だと思ったのは、ホームレス同志でのコミュニケーションがほとんどないことだ。なくとも生活はできるからそうなってしまうのだが。寄せ場やホームレス社会は社会の縮図だなぁ。寿ではバナナが房ではなく、一本で売っているというのには笑ってしまった。山谷の会館の人の話によると、住民との対立がスゴイらしい。商店街に野宿生活社がこないように、雨が降ると、電動の屋根をわざわざ開けるということだ。そういう卑劣なことをするのは、自分の現実を一度も疑ったことのないヤツラだ。




#16(金)

◆ちょっち金かけて人生ゲームする。百円負けた。




#15(木)

◆開校記念日で大学は休み。新しくできた横浜駅近くの古本ショップへいく。浜岡賢次『浦安鉄筋家族(14)』、陽気婢『えっちーず』、小原慎司『ぼくはおとうと』、犬木加奈子『スクールゾーン(1)』、秋葉凪木『きらきら』、斎藤綾子・伏見憲明『快楽の技術』、福島章ほか『日本の精神鑑定』(これは前から欲しかった)を買う。

◆図書館で、オルテガ『大衆の反逆』、赤坂憲雄『排除の現象学』、その他を借りる。

◆伊勢佐木町のオデオンビル地下の百円ショップで、とうとう野菜が売り出された。シチュー用に玉葱その他を買う。




#14(水)

◆町田ひらく『卒業式は裸で』定価で買う。すごくいやらしい。それだけではないが。注目。




#14(火)

◆『デカメロン』いいなぁ。竹中直人いいなぁ。竹中直人は早すぎたんだな。火曜日はTBSの深夜にかぎる。『デカメロン』『マガ不思議』(チンペイさんステキッ!!)『アイドル王』とやけにマニアックなプログラムが組まれているのだ。『デカメロン』の前の『FACE2』も、番組の製作意図とは逆に、反面教師としておもしろい。実はそれが真の意図だったとしたらスゴイけど。




#12(月)

◆渋谷へ。タワーレコードで、Willy Stolarczyk『Symphony for 96 Pianos & Percussion』、OGAWA Noriko『JUST FOR ME』、John Cage『in a Landscape』、『Morton Feldman』を買う。今日は現代音楽系で散財してしまった。あとアバド指揮の『Wien Modern 3』も欲しかった。これは試聴できたのだが、クセナキスかけたら例によって冒頭からドカーンときてビビッた。ボリュームが最大になってたのだ。教訓・クセナキスを試聴するときはボリュームを下げませうね。『in a Landscape』は何故買ったかというと、ケージの静かな曲は、寝るときかけると丁度よいのだ。ガムラン風のプリペアードピアノが天使の羽のように優しく眠気を誘う。高橋アキ『季節はずれのヴァレンタイン』にもそういう曲が収録されてるけど、あれはクセナキスとかいろいろ収録されてるから寝るときには不向きだ。

◆ユーロスペースの入り口で 「どちらをご覧になりますか」と聞かれてオイラが一瞬たじろいでいると、「瀬々監督ですか」と言われた。何故わかったんだろう。受け付け嬢の眼には、「こいつ絶対ピンクの客だ」と映ったんだろうか。『ユメの銀河』を見にきた客とは映らなかったんだろうか。席に座ると前の席がハゲ親父。円形ハゲが目の前に見えて、思わず「人生とは……」なんて考え込んじゃったよ。

◆で、「課外授業・暴行」(原題『羽田へ行ってみろそこには海賊になったガキどもが今やと出発を待っている』)を見る。やっぱり何度観ても傑作やで!! 始めて観たのは、有楽町の四天王特集だった。今思えばあのプログラムはベストだった。入れ替え制じゃなくて画面も大きくて。ミニシアターは入れ替え制ってのが一番気に食わない、画面も小さいくせにさ。




#11(日)

◆新しくレンタル屋の会員になって、佐藤寿保の『人妻コレクター』と、ラース・フォン・トリアーの『ヨーロッパ』と、『カーレンジャー vol.1』と、『イグアナの娘 オリジナルサウンドトラック』を借りる。NHK教育の『女人、四十。』を録画しておく。

◆『コミック ピクシィー 6月号』、舞登志郎の「妹の匂い」が傑作だったので買ってしまう。あと、うらまっく『まにまに』、『COMIC アリスくらぶ vol.2』、松平龍樹『発情期 ブルマ検査』と『ビデオTHEワールド 6月号』を買う。

◆今月の26日にはサトウトシキ監督の傑作(多分ラストカットはピンク映画史上最長の固定長まわしだろう!!)『夢の後始末』が発売されるし、ピンク四天王のビデオも続々発売されるし、瀬々監督はユーロスペースで上映がある(明日は絶対「課外授業 暴行」見にいくぜい!!)。四天王もそろそろ次の動きを始めるようだし、四天王の次の世代もいい作品を撮っているし、ますますおもしろくなってくなぁ。阪本順治の『傷だらけの天使』も良さそうだし、日本映画がつまらないなんてほざく奴はバカですな。

◆『COMIC アリスくらぶ』は何故売れないんだろうなぁ。これほどオイラ好みの青臭いリリカルなマンガが載ってる雑誌(いやこれは果たして雑誌なのだろうか?)は他にはないっす。Hマンガの中にこそ純粋なものがあるのだが、しかし、それを求めるのは少数派なんだろう。『アリスの城』→『マシュマロくらぶ』→『COMIC アリスくらぶ』などと名前を変えつつもしぶとく生き残り続けてきたが、とうとう力尽きたか。悲しい。




#10(土)

◆木・金のメールが消える。アンケートを送っていただいた方や、ダイレクト・メール送ったのに返事がこないぞ、という方がいましたら、もう一回送っていただけると嬉しいです。

◆ 新宿、イメージ・リングス上映会「平野勝之・FILM大回顧展」へ。イメージ・リングスはインタビューの載った冊子くれるから好き。この日は平野勝之本人がフィルムを回した。

◆渋谷のタワーレコードに行くと、欲しいCDが多すぎてクラクラしてくる。そいで結局なにも買わずに店を出てしまうのさ。

◆『クイック・ジャパン』はますますつまらない雑誌になってくなぁ(最初からつまらないという意見もあるだろうが)。だいたい、いい大人が『エヴァンゲリオン』ごときにはしゃぎすぎ。シンジくんの悩みなんてものは、ハタチ前にケリをつけとくもんだぜ。それに比べて、今月の『現代思想 特集ストリート・カルチャー』はおもしろい。サブ・カルチャー小僧は『クイック……』読んでる暇があったら、今月の『現代思想』を読んだほうがこれから生きていくうえで役に立つでしょう。例えば、オイラは最近、中学時代の友達から「アムウェイ」の勧誘をされている。そういう場合どうやって逃れたらいいのかというのは重大な問題だが、『現代思想』は参考になる。ところで「アムウェイ」はどう考えたってネズミ講だよねぇ。なのに捕まらないのはなぜなんだろう。




#9(金)

◆『折口信夫全集 第2巻』を読み始めるが、ぜんぜん読めない。内容が理解できない。10ページくらい読んで、自分が情けなくなってきたから寝た。という語は、「ほ・うら」と意の近いもので、前兆・前触れという意味だというのが妙に頭に残った。

◆松田聖子の新曲のクリップの子供は何で白人なんだ。オイラ情けなくなってきたよ。






#7(水)

大井武蔵野館へ石井輝男特集を見に行こうと思ってたのだが、だるくて止めた。喉がいらいらする。咳が止まらない。連休前に仕掛けたごきぶりホイホイに未だ一匹もかかってないというのは意外だ。




#6(火)

◆亀有名画座へ。電車の中で矢作俊彦『スズキさんの休息と遍歴』[新潮社]を再読。おもしろすぎて乗り換え駅の日暮里を通り過ぎてしまった。大和屋竺『荒野のダッチワイフ』、福岡芳穂『イカせたい女』、サトウトシキ『赤い犯行 夢の後始末』の三本立てを観る。画面が大きくていいな。『荒野の……』はBOX東中野でも観たが、やっぱ迫力が違う。『P・G no.35 特集・瀬々敬久インタビュー』を買う。『ぴあ』を立ち読むと、ユーロスペースで瀬々監督の自薦作品上映があるということだ。これは見にいかねば。

◆『ガロ』、音響派特集を立ち読む。サウンドLSDについての記事はおもしろかったが……。ほとんど民族楽器特集になってる気が。そういうのを非西洋的という始点から眺めて音響派っていうのもちょっち違うよなぁ。現代音楽では2、30年前からハリー・パーチなんかが微分音を出す楽器を作ってるわけだし。『マーキー』でも音響派特集をやってるというので、たぶん1年振りくらいで『マーキー』を手に取る。でもポップな音響系のみでつまらん。オイラが好きなのは例えばタゴマゴやTAMARUのような、空間を微分するようなダークな音響派なのだ。ピチカートよりMAIN岡野弘幹やタゴマゴやTAMARUや梨木良成やソルマニアにインタビューしてほしいよ。ソルマニアの『Evil Bed』[Alchemy Records]は良かったなぁ。ソルマニアは音響派ノイズだ。それにしても『マーキー』って相変わらず昔の遺産で成り立ってる雑誌だよな。なんで日本はそんなにプログレ天国なんだろう? どんどん限りなくレアなのを発掘して発売することにかけては世界一だ。でももはや、過去の音楽を「プログレッシブ」と呼ぶのは矛盾してないの?




#5(月)

◆横浜に帰ってくる。都会に近付くにつれて電車のなかで綺麗な女性が目に付くようになるのは気のせいだろうか。

◆ ビデオの延滞料金2000円ぐらい取られた。悲しい。

◆できればなりたくなかったが、『カーレンジャー』を借りるために、くされブロックバスタービデオの会員になる。




#4(日)

◆ブックオフでCD、IMAGE WORK『調和への共振1 森を聴く』を800円程で。浜岡賢次『浦安鉄筋家族(2)(3)(10)』、新川和江 編『花の詩集』、風見潤 編『海外ロマンティックSF傑作選3 見えない友達34人+1』を400円で。後者二冊はコバルト文庫。コバルトのアンソロジーはなかなかやる。

◆ブルジョアって有閑市民って書くんだね。




#3(土)

◆がぁぁぁぁぁぁぁん。こっちに帰省する前に借りてたレンタルビデオ返すの忘れてた。今頃気が付いた。全部巻き戻して袋に入れ、返す用意は万全だったのに、家を出るとき持って出なかったんだ。バカ。肝心なところでボケかますのがオイラだよ。情けない。しかも借りてたの『Attack of the killer tomatoes』だよ。アホか。これがホントのキラートマトの逆襲や!!

◆友達と前橋西武デパートの古本市へ。なんと龍膽寺雄全集があったのだが、5,6,7,8巻だけだった。バラで揃え始めるとけっきょく高くつくのは必死なので買わなかった。坪内逍遥監修『国民の日本史 東京時代守成期』と赤江爆を一冊買う。200円なり。




#2(金)

◆『あこがれ』(監・増村保造)、『地球防衛少女イコちゃん』(監・河崎実)をレンタルして観る。両方いい。




#1(木)

◆病院に泊まった夜に風邪をひいたらしく、ずっと喉がムズムズして咳が出るのが治らない。妹はベッドの上で相変わらず同語反復に陥っている。

広末涼子主演『悪霊学園』第一回。テンポの悪い演出に眠くなりながらも最後まで観れたのは広末涼子だからで、やっぱり彼女は偉大ですな。音楽がオリジナルでないのは残念だが、佐久間正英の『リプレイ』を使っていたのはなかなか良かったですな。




◆今月の映画↓

◆5/30、ユーロスペースにて、『来るべき光景』監・瀬々敬久。 冒頭、からみの場面で男が言う。「これから何回お前とこんなことするんだろうな」。
安寿[葉月蛍]は、会社の同僚である男[伊藤猛]の恋人[工藤翔子]の死を予知する。(この予知イメージの傘が落ちてくる絵がスタイリッシュで良い。赤と黒の重苦しい色が全体を占めるこの映画の中で唯一開放感がある明るい絵なのだが、しかし、それすらも死に繋がる絵だというのがこの映画の救いようのない暗さを象徴している。)安寿は会社をやめる。男は女の能力に気付いて女を追いかける。安寿は自分の予知能力に苦しんでいた。男は安寿をなんとか救いたいと思う。安寿は厨子王[川瀬陽太]と暮らしていた。男と交わった安寿は、男が厨子王に刺されることを予知する。「お願い。私を信じて逃げて」「決まっているのか。何もかもきまっているのか。誰が決めるんだ」安寿の予知どうり厨子王はナイフを手にして男を刺そうとする。だが刺されたのは男ではなく・・・。
亀有名画座、ユーロスペースと一週間内に二回も観たが、あまりピンとこなかった。泉由紀子と伊藤猛がなんで結婚したりするのか分からないし、葉月蛍の行動もよくわからんし、伊藤猛の葉月蛍に対する気持ちも葉月蛍の伊藤猛に対する気持ちもよくわからん。例えば「牝臭とろける花芯」では主人公の感情も行動も内容も抽象的だが理解できる。それに比べてこの「赫い情事」は冒頭のカラオケシーンから終わりまで具体的で世俗的な事物を描いているのだが、よくわからない。瀬々監督にしては描写が具体的すぎる。それを狙ったのかもしれないが、カラオケとかそういう描写は嫌いだ。葉月蛍嬢のぎこちない歌は良かったけど。いいなぁ。 ★★★

『ギャングよ向こうは晴れているか』監・瀬々敬久。 ギャングと右翼少年と、両親の出会った一面菜の花の景色を探している少女モモの逃避行。音楽ほぶらきん。 ★★★★★

◆5/25、亀有名画座にて「第九回ピンク大賞 授賞式及び上映会」↓

『禁じられた情事 不倫妻大股開き』監・榎本敏郎。 昔のATG映画のようだという評価が多いが、オイラはATGを殆ど見ていないのでそこらへんは分からない。とにかくいい映画だ。すれ違いのヒロインと主人公がラストで絡みながらも、結局状況は変わらないところが良い。バカなテレビドラマとは大違いだ。あれはあれで馬鹿さを楽しむことはできるが。 ★★★★★

『十八歳』監・橋口卓明。 これを見ていると世のなかの男が全員ゲイに思えてしまう。★★★★

『SM教師教え子に縛られて』監・池島ゆたか。 ラストのダムでのSMの景色が良かった。★★★

『来るべき光景』監・瀬々敬久。 よく分からない。★★★

『不倫日記』監・サトウトシキ。 傑作。 ★★★★★

『ゴキブリ刑事』監・小谷承フ?。2回目である。今度は友人と一緒に観た。笑い通しであった。 ★★★★

『宇宙少女刑事ブルマ』監・清水敏ー?。 主演・幸田磨衣子。彼女が宇宙少女刑事ブルマだ。変身シーンがいいぞ。ちゃちだぞ。泣かせる。バカ話をそのまま映像化したような映画だ。根本的なアホさがにじみ出ていて良い。 河崎実の系譜というのがある。必ず女の子に歌を歌わせるのだ。しかも妙に頭にこびりつく歌を。「ブルーマーブルーマー」の歌声が脳髄を貫く。『地球防衛少女イコちゃん』のときは「お願いしてもいいかしら」の歌声に貫かれた。河崎実の『地球防衛少女イコちゃん』の方が上。 ★★★

『ゴキブリ刑事』監・小谷承フ?。前々からレンタルショップでそのインパクトのあるタイトルが気になってはいたのだが、なかなか借りる勇気がなかった。しかし、とうとう借りて観た。渡哲也である。これはハードボイルド渡哲也映画である。不思議な魅力がある。かっちょよすぎるぜ。 ★★★★

『海の駱駝』監・松岡邦彦。 2回目。やっぱこの映画好きだ。葉月蛍はこの映画と『不倫日記』がベストだろう。★★★★★

『彗星まち』監・今岡信治。 2回目。素晴らしい。
でも、ビデオだと何でからみのときにモザイクかけるの? 本番らしく見せるために、販売元のビックモーカルがそうしているのだろうが、見苦しいことこの上ない。アダルトビデオやシースルービデオの溢れるなかで、ピンク映画をビデオ化して流通させるためには仕方ない策なのかもしれないが、しかしこれで騙される人がいるのだろうか。ピンク映画で本番やるわけないよ。★★★★★

◆5/22(木)、ユーロスペースにて 『迦楼羅の夢』監・瀬々敬久。 レイプして捕まった男が出所後そのレイプした女に救いを求める。そして鳥のように塔から飛び降り死ぬ。象徴的な鳥の映像からだろうが、つげ義春のマンガ「鳥男」を連想した。子供を殺してしまうシーンの重苦しい緊張感に、改めて伊藤猛の役者としての力を実感する。伊藤猛や川瀬陽太は日本でもトップレベルの俳優だと思うのだが――例えばスマップ連中の出演しているドラマや映画と比べてみればその差は歴然だ――活躍の舞台がほとんどピンク映画しかないというのが日本の文化レベルの低さだ。それでも、川瀬陽太は福居ショウジン監督の『ラヴァーズ・ラヴァー』に主演したりしていて、川瀬陽太ファンのオイラとしては嬉しい。瀬々監督作品のなかでは最も静かで残酷。あとをひいて体に悪い映画。 ★★★★★

『ヨシワラ』監・サトウトシキ。 男が逃げた妻を捜して風俗街にやってくる。結局ラストで妻は「待っていたのよ」と男に言う。
監督が内容を対象化していなくて、はっきりいって失敗作だと思うが、ラストシーンの絵は良かった。街並みを撮るのがすごくうまい。例えば『ザ・投稿ビデオ』で描かれた歌舞伎町が最たる例。★★★

『ヨーロッパ』監・ラース・フォン・トリアー。 画像処理が最初のうちはおもしろいが、そのうち飽きてくる。うちの小さいテレビで見たので細部がよく分からなかった。こういう手のこんだ映画はスクリーンで見たかった。よく考えたら『2001年』なんて14インチのテレビでしか見たことないもんなぁ。悲しい。★★★★

◆5/12、ユーロスペースにて、『羽田へ行ってみろそこには海賊になったガキどもが今やと出発を待っている』(公開題「課外授業・暴行」)監・瀬々敬久。 スクリーンで三回見たことになるが、やっぱりこれはオイラにとって特別なフィルムだ。何回見てもしびれる。中島小夜子が素晴らしいなぁ。山本竜二のチンピラもさすがだし、佐野和宏の「金魚」役もめちゃかっちょいい。とくにラスト、殺されるときに、サングラスをかけるのがいい。 ★★★★★

『水の記憶・羽田私景』監・撮影・瀬々敬久。 羽田の海老取タ?(漢字ちがうか、?)の船上で生まれ、少女時代を船上で生活し、その後裏ビデオに出て捕まった女性を追い求めるドキュメント。瀬々監督の映画は実際の事件がモチーフになっていることが多いが、「課外授業・暴行」もこういう事件がモチーフにあったとは知らなかった。GHQによる48時間以内強制退去も追求している、というよりこっちの方が主になってしまっているのだが。しかし、ラストでは、港を町をうろつく少女に、事件の少女をオーバーラップさせて終わる。 ★★★★

◆5/10(土)、新宿Fu-にて、 イメージ・リングス上映会「平野勝之・FILM大回顧展」

◆5/6、亀有名画座。 『荒野のダッチワイフ』監・大和屋竺。2回目だが、やっぱり冒頭近くで、木を撃ち倒した後の科白「あんな枝ぶりのイイ木は・・・」が笑える。★★★★★

『イカせたい女』監・福岡芳穂。ちょっと若気の至り的な部分もあるが、冒頭の映像の美しさには魅かれた。意欲的な作品。「ぼくらはどこから来てどこへ行くのか」。★★★★

『赤い犯行 夢の後始末』監・サトウトシキ。主演が町田康。近々ビデオ化される。映画監督が主役の『8 1/2』チックな物語。ラストの長回しの木々と陽が泣ける。ロマンチックだなぁ。うまいなぁ。「映画は情熱だ。情熱はカメラのこちら側にある」。★★★★★

『くちづけ』監・増村保造。 野添ひとみの走り方が生き生きしてて良い。もしかしてこの走りの躍動感は宮崎駿のアニメに受け継がれているのかもしれないなぁ。★★★★

『地球防衛少女イコちゃん 1&2』監・河崎実磯崎亜紀子主演の1作目は傑作だが、増田未亜の2作目は駄作。磯崎亜紀子のかわいさは筆舌に尽くしがたい。2にもちょこっと出てくるのだが、もう崩れている。女の子のきらめきはほんの一瞬ね。★★★★★


◆今月のマンガ↓

植芝理一ディスコミュニケーション(1)』。『モーニング』のマンガには疎くて、fj.rec.comicsで話題になるまで全く知らなかった。こんないいマンガを見のがしていたとは。まだまだ修業がたりんな。★★★★★[講談社]

浅田弘幸『蓮花(1)』。映画を意識したラストがかっこいい。★★★★[集英社]

安達哲『キラキラ 全8巻』。安達哲は太宰治から続く自虐の系譜の作家だと大槻ケンヂが書いていたが、太宰治が最後までネガティブなのに対して安達哲はラストに必ず救いがある。救いがあるというよりも、輝かしい未来があるというほうが正しいのかもしれない。切通理作は『お前がセカイを殺したいなら』の中で、自虐ではなく自涜という語を使って安達哲を評している。★★★★★[講談社]

犬木加奈子『スクールゾーン(1)』。 女楳図というだけのことはある。学校を舞台にしたノンストップ・ホラー。完結したら一気に読みたい。★★★[リイド社]

小原慎司『ぼくはおとうと』。 姉と弟のいる静かな場の雰囲気。★★★★[講談社]

陽気婢『えっちーず(1)』。 酒に酔っていたのだろうな、「かんたんな,かんけい」を読みおわって泣いた。 ★★★★[ワニマガジン社]

浜岡賢次『浦安鉄筋家族(14)』。 小鉄の母ちゃんはいい女だ。★★★★[秋田書店]

秋葉凪樹『きらきら』。 抒情派。★★★★[ワニマガジン社]

町田ひらく『卒業式は裸で』。町田ひらくの絵は好き嫌いが分かれるだろうし、内容も好き嫌いが分かれるだろうが、オイラはすごく好きだ。とくに『ホットミルク 1996.11月号』に載ったカラー短編は、裸も絡みもないけれど、すごくよかった。感動した。この本は、ハード路線で、実際こんなことねぇよなって感じの内容だが、なんか妙にリアルに感じるのも確かだ。gooで「町田ひらく」を検索してみた。コミックリストと自分のページを除くと、Mutti Lab.ホームページの更新記録PLAZET BAKUU --- DIARY WITH BOOKS ---の二つしかない。 ★★★★★[一水社]

山野一『ウオの目君(1)(2)』。 一見よくある、ちょっと変わったサラリーマンが主人公のギャグマンガのようだが、実はまったく違う。普通のギャグマンガは、異質な主人公をまわりの正常な人物たちが笑い者にして成り立つものだが、この『ウオの目くん』の主人公は正常なのだ。この主人公は凄く正しい。正直に生きている。だから周りが主人公を笑い者にしても読者はなんとなくスッキリしない。なぜなら、「あの人は変だね。私たちは正常で良かったね」でメデタシメデタシではなく、『ウオの目くん』の場合もっと複雑なので、私たちの方が異常に見えてしまうからだ。
例えばスピリッツ連載の『いいひと』の主人公は普通ではない。ならば排除されるはずだがそうならない。『いいひと』はあきらかに嘘を描いているが、『ウオの目君』に描かれているのは真実なのだ。思えば一貫して山野一は、何のごまかしもなしに、メタファーではなくあからさまに真実を描き続けてきた。たとえそれが不気味でグロテスクに見えようとも、真実とはそういうものだ。生易しくはなく、恐いものなのだ。だから排除され、故意に忘れ去られる。
真実は美しくない。★★★★[リイド社]

『COMICアリスくらぶ VOL.2』。 確かに大山田満月が描いていないというのは残念だが、しかし、江戸川春泥「いもおと」やディグ「FISH CAN TALK」や夕凪薫「時計仕掛けのLiddel」やナヲコ「たからもの」とか大好きだ。オイラがHマンガを読み続けているのは、こういう作品があるからなのだろう。ナヲコのマンガは舞台が習字塾で、懐かしいな。オイラも通ってたな。一応、習字六段なんだけど、そのわりには字がきたないのはどういうわけだ。早く夕凪薫の単行本でないかな。あとナヲコのも。『ホットミルク』の五月号の載っていたナヲコのカラー短篇がとても好きでした。★★★★[コアマガジン]

うらまっく『まにまに』。 すごくほのぼのした線とキャラクターだが、だからこそ妙にいやらしく生々しい。 ★★★★[司書房]

大島弓子選集10『ダリアの帯』。 少女マンガにおける空白表現の深さ。 ★★★★★[朝日ソノラマ]

永野のり子『土田くんてアレですね』。 珍しくおちゃらけていない永野のりこの作品集。そのリリカルさはまるで立原道造の詩を思わせる。「人間はみんな去っていくんだ/心をひきちぎって知らない処へ
なのになぜその残像は優しいんだろう」★★★★★[日本文芸社]

浜岡賢次『浦安鉄筋家族(2)』。 のり子登場。★★★[秋田書店]

浜岡賢次『浦安鉄筋家族(3)』。 春巻登場。186ページの3番目のコマののり子の絵が好きだ。のり子は成長したら心の美しい女性になるのだろう。★★★★★[秋田書店]

浜岡賢次『浦安鉄筋家族(10)』。 春巻が学校の屋上で遭難する話が最高!!★★★★★[秋田書店]

浜岡賢次『浦安鉄筋家族(12)』。 不条理ギャグはそれはそれで好きだけれど、浜岡賢次のようなギャグマンガも大好きだ。このマンガのおける主人公とその友人グループのキャラクター構成は完璧といえる。★★★★[秋田書店]

好美のぼる『感情線悪魔の子守歌』。 これ何で買ったかというと、152ページの、怪物に変形させられた女の子の顔の絵がおもしろかったので。それだけ。★★★[立風書房]

陽気婢『えっちーず2』。 「このひとを、だまそう」のラストの絵がいい。エロマンガに比べるとエロビデオのストーリーはあまりに貧弱すぎる。ま、エロビデオにストーリーを求めるのは少数派だろうけどさ。『GON』でポスト・バクシーシと紹介されてたジャンジー谷村監督の『人妻解剖学』シリーズを探してるんだが、ない。「このひとを、だまそう」はピンク映画化すべきだ。★★★★[ワニマガジン社]

木崎ひろすけ、作・カリブ・マーレイ『少女・ネム(1)』。 今のところ、なんで人物を動物化してるんだか分からない――例えばジョージ秋山『ラブリンモンロー』なら残虐描写のためだと分かる――のだが、オイラの好きなタイプの話でGOOD。★★★★[アスキー出版局]

尾崎かおり『ピアノの上の天使(1)』。 良いです。 cf. 積ん読パラダイス ★★★★[新書館]


◆今月の本↓

湯浅学,根本敬,船橋英雄『ディープ・コリア』。紙質が悪くて写真が鮮明でないのが惜しい。★★★★[星雲社]

西原理恵子『サイバラ式』。生きるとはこういうことか。★★★★★[宝島社]

中川李枝子『かえるのエルタ』。なんだか泣ける。★★★★★[福音館]

中川李枝子『らいおんみどりの日ようび』。★★★[福音館]

中弘子、原案・今関あきよし『りぼん』。 読みやすい。今関あきよし監督で映画化されたもののノベライズ。だから当然大島弓子っぽい少女もの。映画よりもこの小説の方がいい。映画の方は千住明の音楽が良かったなぁぐらいしか思い出せない。今関あきよしのほとんどの作品はは悪くはないけど、そんなに良くもない。新作の『タイム・リープ』はどうなんでしょうか。予告では結構よさそうだったけど、劇場に観にいく気はしないなぁ。
最近は全然コバルトとかホワイトハートとか読んでない。もうあの手の過剰な一人称の文体はうっとうしい。それに当たり外れが大きすぎるからなぁ。まぁそれは何でもそうなんだけど。でもこの『りぼん』という少女小説には妙に魅かれる。なぜだ。なぜだかいつまでも引っ掛かる。★★★★★[集英社文庫コバルトシリーズ]

松平龍樹『発情期ブルマ検査』。 主人公のヒロインに対する視線の純粋さが良い。ルビの使い方が独特でおもしろい。例えば「先生の目」に「内申書」、「優等生」に「無関心」とルビをふっている。いちばんおもろかったのは、小学生が「Hグチさんって言えば、もう一度『Eヴァンゲリオン』の絵コンテ切ってくれないのかしら?」などと会話しているとこ。笑いました。あとクライマックスでも『エヴァ』とからんでくるので、『エヴァンゲリオン』を知らない人には「なんのこっちゃ」って感じの官能小説ですな。そうそう、ヒロインがオタクに犯されないでよかった。★★★★[マドンナ社]

龍膽寺雄『塔の幻想』。龍膽寺が好んで描いたタイプの少女「魔子」が登場する作品がほとんど収録されていないので物足りない。★★★★[サバト館]

塩山芳明『嫌われ者の記』。 副題「エロ漫画業界凶悪編集者血闘ファイル」。石井輝男と大衆文学好きのエロ本編集者の生きざまが素晴らしい。こんなふうに生きられたらいいよなぁ。でも超長距離通勤だけはヤダ。★★★★[一水社]

佐藤洋次郎『神名火』。中上健二と同じくピンクの原作にちょうどいい。 ★★★[河出書房新社]

薄井ゆうじ『青の時間』。 これは基本的に『樹の上の草魚』とおなじだよなぁ。好きだけどさ。★★★★[文芸春秋]

柾悟郎『もう猫のためになんか泣かない』。 この本を読んで思ったが、この人には青春小説を描いてほしい。
読点が多すぎて読みにくいのが気になったのだが、オイラだけだろうか。 ★★★★[早川書房]

福永武彦『廃市』。★★★

長野まゆみ『鳩のすみか』。 著者の装画が良いです。長野まゆみの本はなんとなく今まで嫌厭してきたけれど、読んでみると良いですな。でも、短篇集だからかもしれないが、軽すぎて残らないのですな。今度は長編を読もう。ところで行間がやたら空いてる本って、損した気分になるのはオイラが貧乏性だからだろうな。 ★★★★[集英社]





4/1997||6/1997


ISHIHARA, Shingo
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