◆車のCMで「クレオパトラの夢」がかかってたので久しぶりにバド・パウエルのCDを聴き返す。。村上春樹のエッセイで、学生時代は車を手に入れるなんて夢のまた夢だと思っていたけれど、年をとるとみんないつのまにか車を持っていて不思議だ、というようなのがあったけれど、自分もいつか車を持つのだろうか。イヤだな。
◆ひさびさに新宿へいく。目的はピンクのビデオ探し。しかし見つからなかった。
◆歌舞伎町でやたら声をかけられた。強引に本番の写真を見せてくる。しつこい。さすが歌舞伎町だ。
◆ 高島屋の近くで女性に「お茶しませんか」と声をかけられる。まったく都会はこれだからやだな。オイラが声をかけられやすいだけかも。
◆ ディスクユニオンで、john duncan, bernhard gunter『HOME, UNSPEAKABLE』、 DAREN SEYMOUR & MARK VAN HEN『AUROBINDO: INVOLUTION』、 reum fur notizen『NONPLACE URBAN FIELD』(これはテクノっぽくてはずれ)、 以上音響系。音響系はジャケットでいいか悪いかだいたい分かる。 あとb-flower『World's End Laundry』を買う。
◆ ビルの二階の男の本とビデオの店で、町田ひらく『きんしされたあそび』と『デラボム』を買う。
◆ 古い紀伊国屋で『日曜研究家7』を買う。6号を買い忘れていたのに気付く。
◆ 模索舎の外観はいつみてもいいなぁ、喫茶店みたいで。本屋って感じじゃない。
◆『P・G』を立ち読みしたら、瀬々敬久の「牝臭・とろける花芯」が松本大洋の『鉄コン筋クリート』を元にして作られた事を初めて知る。とりあえず『鉄筋コンクリート』を手に入れなければ。模索舎では、樹村みのり『夢の入り口』、『The Lucky Horror Show 36 特集・怪奇漫画』、『ゲームウォッチ大作戦』と、欲しかったCD原田依幸ユニット『原田椅子』を買う。
◆新宿をあとにして東中野BOXへ。東中野BOXは初めて。初めての映画館に入る時って緊張するな。予告で流れた『イコちゃん』の監督の新作のばかばかしさに感激する。で長いコマーシャルのあと、大和屋竺監督の『荒野のダッチワイフ』を見る。
◆これであと見る予定なのは、園子温監督の『部屋』『桂子ですけど』と亀有の四天王だ。
◆ 帰ったら炬燵がつけっぱなしだった。しかも最大で。危ないなぁ。
◆『SPA』に載ってるキャバクラマンガが最高。めちゃくちゃおもろい。『江戸前アメリカン』の作者が描いてる。
◆テストの季節です。今日のテストの授業ははほとんど出ていなかった。だって教科書読んでるだけの授業なんだもん。そんならテスト前に教科書読めばいいのだ。で昨日読んだら、マルクスの引用の多い教科書だった。神奈川大はマル経の先生が多い。というわけで、今日のテストの論述問題、いまどきブルジョア批判なんてしちまったぜい、ははは。
◆井出薫嬢が結婚したって「がんばらナイト」で広末涼子が言ったのを聞いて驚いた。くそ。オイラに無断で結婚するとわ。片岡Kと。
◆『カーレンジャー』MLに入る。やったー!!「激走!!アクセルチェンジャー」ホワイトレーサーの「ティラミスこんにゃくミルフィーユ」見たいな。早くビデオ出てくれないかな。
◆去年見たTV番組ベスト5をやろうと思ったが、4つしか思い付かなかった。↓
◆ 1.『想い出〜ある障害者とその家族の二年間』(NHK 12/27放送)。 2.『イグアナの娘』(テレビ朝日)。 3.『激走戦隊カーレンジャー』(テレビ朝日)。 4.『家なき子レミ』(フジテレビ)。 あれ、『エヴァ』って去年だったっけ?それなら『激走戦隊カーレンジャー』の前か後ろかな。
◆去年読んだマンガベスト5↓
◆ 1.よしもとよしとも『青い車』。 2.西原理恵子『晴れた日は学校を休んで』『ぼくんち 1巻』。 3.坂口尚『石の花』。 4.松井雪子『マヨネーズ姫 1巻』。 5.あびゅうきょ『彼女たちのカンプグルッペ』。 次点:岡崎京子『リバース・エッジ』。 特別:たしか7月発売の『プレイボーイ』(馬淵英里何嬢が巻頭グラビアの号)に載った山咲トオルの短篇。番外:文庫版『亀ノ頭のスープ』
◆ついでに去年読んだ本ベスト↓
◆ ジョン・アーヴィング『ホテル・ニューハンプシャー』、 深沢七郎『人間滅亡的人生相案内』、 川上宗薫『傾斜面』、 加藤治郎『サニーサイドアップ』
◆なんで梅味じゃないのに「ウメッシュ」なんだ? 絶対おかしいぞ。
◆去年観た映画ベスト5を勝手に選考することにする。ビデオで観たのは除く。ただし去年公開以外も含む。↓
◆ 1.瀬々敬久『羽田へいってみろ 海賊になったガキどもが今やと出発を待っている』(公開題「課外授業・暴行」)。1.『End of the World』(公開題「すけべてんこもり」)、これで本格的にピンクにはまった。自分の知らない世界で凄い事になってたんだなと実感した。 2.エミール・クリストツァ『アンダーグラウンド』、この脂っこいしつこさ!!。しばらく音楽が頭の中で回っていた。一緒に観た友人もかなりまいっていた。 3.佐野和宏『Don't let it bring you down』(公開題「変態テレフォンONANIE」)、今まで泣けた映画というと『ニューシネマパラダイス』『ある日どこかで』『恋のエチュード』あたりだが、それ以上に泣けた。「ラブミーテンダー」を無意識に口ずさむようになってしまった。 4.サトウトシキ『ナオミ』(公開題「ペッティング・レズ 性感帯」)、 鮮やかな色彩。トリュフォーを思わせるモノローグ。突然の死による笑い。 5.風間志織『冬の河童』、グリーグのピアノ曲によるオープニングと、さりげないラストシーンと、空間の心地よさと、演技と演出の自然さと……。 番外:ケン・ローチ『ケス』、 良かったんだけど、なぜ番外かというと観た環境が最悪だったので。混んでて観にくい上に画面は小さいし観客はうるさいしポケベルは鳴るし。
◆最近、映画館の闇が薄すぎるような気がしてならない。子供の頃は、もっと真っ暗だったような。
◆30日から4日まで川崎球場でホームレスの越年対策事業のバイトをした。めちゃくちゃおもろかった。これについては社会学のレポートに書くので、完成したらページに載せるだろう。
◆今月の映画↓
◆11/29、BOX東中野にて、 『荒野のダッチワイフ』監・大和屋竺。 幻想的ハードボイルドギャグ映画。夢野久作を連想したりしたのは時計のベルの音からか。もっと現実と幻想の境が分からなくなるくらいぐちょぐちょぬるぬるにして欲しかった。でも、かっこ良かったのでポストカードを買う。★★★★
◆『過激本番ショー異常者たちの夜』監・サトウトシキ。 前に亀有名画座で見たからこれで2回目。ビデオだとタイトルの出し方が違うのね。テレビのテロップみたい。都庁が建つことによって生じた影響が描かれている。別れの場面のスローモーション秀逸。さりげない日常性の描き方もいい。最後に拳銃で皆殺しにする主人公。この誰もが持つ暴力性は、サトウ監督の映画の随所に見られる。ラストは主人公が死姦して自殺して都庁に弾丸が撃ち込まれる。この映画の吉田春兎のキャラクターは「悶絶本番 ぶちこむ!」(原題『Like a Rolling Stone』)へと結実する。古い『ビデオボーイ』(この雑誌のビデオ・映画評が一番おもしろいし読み応えがあると思う)をめくってたら、『アタシはジュース』についてのテクストの中で「悶絶本番」について触れられていた。「本作(引用者註『アタシはジュース』)では役者が演技しすぎで人間関係が平板になってしまった感があるが、サトウ監督に興味を持ったらピンクの大傑作「悶絶本番 ぶちこむ!」も見るべし。タイトルとは裏腹に欠落感を抱えた若者同士の共感とスレ違いを描いた90年代最高の青春映画だ」。すごい誉めようだがその通りなのだ。ちなみにオイラは文芸座と亀有名画座で2回観てるが全然退屈しなかった。転がってく若者の話で、特にドラマティックという訳ではないが傑作だ。現代のマンガが描く若者の持つやるせなさや欠落感を映像で描けた唯一の映画だろう。よしもとよしとも『青い車』とか好きな人には是非見てほしい。こういうのがホントの映画だよな。テレビ局製作のガイ◯チ映画(例『ヒーローインタビュー』『7月7日、晴れ』。最近だと『流れ板?人(忘れた。何人でもいいわい!!)』etc.)なんて見てる場合じゃないんだよ、ほんと。★★★★
◆『赤い報告書2 密室淫戯』監・佐藤俊鬼。 売春は危険だ。だって素性のわかんない人と密室で過ごすんだから。男がサド趣味だったり切腹マニアだったり首締め趣味だったりちょっとあぶない人だったりしたらどうすんだ? 外見じゃ判断できないぞ。
今の女子高生も売春やるのはいいけど、ちょっと危険対策に気をくばってね。★★★
◆『赤い報告書 鮮血の天使』監・佐藤俊鬼。 フィルム撮りと違って、ビデオ撮りのホラーはなんとも言いようのない閉塞感をかもし出しますな。(cf.『ギニーピッグ』)。現実を疑うということ。そうさせなくしてしまうのが宗教の力の恐ろしさですな。中野貴雄の美術はさすが凝ってますな。このグロさは後の「不倫妻の性 快楽あさり」(原題『単純な話』)という傑作へと繋がっていくのですな。★★★
◆『我が胸に凶器あり』監・青山真治。 さびれた風景がいい。最初のほうで足を撃たれるチンピラもいい。ところどころふざけてていい。ラストの決闘がばかばかしくっていい。意識的にやってるのかな。Vシネマのエンドクレジットの出し方ってみんな同じでつまらないぞ。★★★
◆『十八歳の肖像』構成・杉本れいな。 最近の『宝島』にグラビアが載ってる。名前は漢字になって杉本麗奈。オイラは普通の人のAVの見方とは違って、からみの部分はうざったいので早送りしてしまう。このビデオの一番の見所は、初からみの前の彼女の涙だろう。こんなの見ちゃうと、「うんうんカラミなんてしなくていいよ」と声かけたくなってしまう。ファンクラブ入ろっかな。★★★★
◆『人体模型の夜』監・佐藤寿保。のりうつり、盗聴。基本としてはピンクでやってることと変わらないけど、ピンクほどの緊張感がない。時間が長すぎるからだろうか。エンドクレジットの音楽がふぬけ。ノイズ系の音楽を使用したりして音楽のセンスはあるはずなのにどうしたことだ。★★★
◆『ユージュアル・サスペクツ』。 まあ、暇つぶしにはなるわいな。相変わらずこの手の映画の音楽はつまらんですな。ダニー・エルフマンのエピゴーネンにさえなってまへんがな。★★★
◆『亡霊学級』監・鶴田法男。 出演・宮澤寿ヘ?、石橋けい。 学校には何かが潜んでいるのか。じわじわくる。ラストまさかああいうラストとは!! 石橋けいの顔は恐いぞ。とてもキオスクのポスターで微笑んでるのと同一人物だとは思えない。『女優霊』も恐かった。恐怖映画女優。 少女独特の憂いというか、あの時期の雰囲気というか。やっぱ美少女は良いね。(オヤジかおれは) 学校民俗学。串間努。学校のフォークロア。つのだじろう先生へのインタビューというオマケがあり。 ★★★★
◆『Love Letter』監・岩井俊二。 出演・中山美穂、豊川悦司、酒井美紀。 中学時代の映像が秀逸。思いっきり青春学園ドラマ作ってくれないかな。話を詰め込みすぎてるような気もする。音楽が上品で、クライマックスでやたら下品に盛り上がる映画音楽が多い中、Remediosの音楽は貴重だ。ストリングス系の音楽はとくに下品な感じに陥りやすいのだが、そういうこともないし。岩井俊二は音楽に恵まれてる。映画は音楽が一番大事なんだよね、実は。プルーストの『失われた時をもとめて』が小道具で出てくるが、この映画のテーマはまさにそれなんだろう。しかしオイラはプルースト読んだことない。あんな長いの読んでられっか、ふん。 二人二役という手を使えば、筒井康隆の『ロートレック荘事件』を映像化できるかも。★★★★
◆『制服クリーム』監・長谷川九仁広。 脚・沢木毅彦。 出発点をラストにもってくる構成は、丸谷才一『笹まくら』のようだといったら誉めすぎか。兄貴の台詞であるナレーションが杉本れいなの声なのも新鮮。 それにしてもAVはなんでパッケージに監督も脚本も明記してないのか!! ★★★★
◆『ワーキング・ガール』監・マイク・ニコルズ。 さすがマイク・ニコルズだけあって演出が上手くて見てて飽きないが、学生のオイラにとってはそんな切実じゃないテーマだ。★★★
◆『キッズ・リターン』監・北野武。 人生だよ。★★★★★
◆『18歳〜夢に暮らす』監・バクシーシ山下、カンパニー松尾。 これは専門の雑誌でかなり評価されているアダルトビデオ。等身大の18歳の肖像。★★★★
◆『硝子のサイレンサー』公開題「レズビアンレイプ 甘い蜜汁」監・佐藤寿保。 脚・夢野史郎。 SMの快楽というものが理解できた。SMは関係性の逆転に醍醐味があるんだね。わかりやすい映画ばかり氾濫する中で、佐藤寿保は刺激的な映画を、刺激的である故に分からない人にはまったく分からないであろう映画を撮り続ける。鈍い奴には分からないってこと。★★★★
◆『生まれ変わるとしたら』監・瀬々敬久。 出演・山本太郎、あがた森魚、その他。宮沢賢治、海岸、金魚殺し、と瀬々作品によく見られるモチーフが見受けられる。海岸で賢治と妹が出会うシーンの美しさに泣きました。★★★★
◆『 突然炎のごとく』監・井筒和幸。 出演、山本太郎・坂上香織ほか。WowWOWのJ-Movie War の一本。 新しくダビング用デッキを買ったので、さっそくレンタルショップの会員になって初めて借りた。白黒の映像美。特に坂上香織が公園で恋人を待っているのを遠くから撮ったショットが良かった。井筒監督はオイラ大好きで、特に『宇宙の法則』は良かった。ありがちななにげない話だったけれど、なぜか感動した。★★★★
◆『 インディアン・ランナー』監・ショーン・ペン。 IMDb。 兄弟の葛藤。★★★★
◆今月のマンガ↓
◆しりあがり寿『真夜中の弥次さん喜多さん 1巻』。 なんか凄いことになってる。やっぱり、しりあがり寿は天才だったんだね。 ★★★★★
◆南Q太『かみさまお願い』。 表題作と「さよなら三月」。後者は名作。 映像だとセックスを描くのは簡単だが、それだけしか描けない。マンガだとセックスを描きながらもそれに伴う時代感や雰囲気や人間関係や閉塞や怠惰やネガティブさやポシティブさや「何か」を描くことができる。例えば山本直樹のマンガからは「何か」を感じることができていい感じだが、その映像化作品のほとんどからは何も感じられない。南Q太とか岡崎京子がAVを作れば名作ができると思うんだけどな。 ★★★★★
◆いくえみ綾『POPS』。いくえみ綾はほとんどハズレがないので安心して読めるのであった。★★★★
◆いくえみ綾「15年目」。『君たちはガラス 第二巻』収録。最初の1ページ目の絵とモノローグの配置。★★★★★
◆岡田あーみん『お父さんは心配症』。ギャグは飛躍のおもしろさなのだが、岡田あーみんはそれが巧い。しかし一番巧いのはとりみきだろう。遠くのもの同士を結びつけるのがギャグであり、また詩でもある。★★★★
◆宮川匡代『エチュード』。恋愛あり家庭問題ありという典型的な少女マンがの完成形といえる。★★★
◆川原泉『笑う大天使』。川原泉は長編より短編のほうがいいんでねーの。★★★
◆魚喃キリコ『Water.』。川崎の古本屋で200円で購入。 マンガは絵とセンスであるということを再認識させられる。★★★★
◆玄田生『青年の性的闘争』。川崎の?堂(名前思い出せそで思い出せない)で購入。玄田生は群馬出身だろうか。登場人物の名前が、高崎とか前橋とか安中だし、慈光通りも出てくるし、群馬テンコモリ。「時計仕掛けのせつな」は山本直樹の「Blue」と同じ感触を受ける。せつなくなった。「じゃがたら」を聴いた。ちょっと元気が出た。★★★★。キタノさんのコメント「どうもこんにちは。『青年の性的闘争』玄田生の所で「絶対群馬出身だ」と書いておりますが、彼は群馬出身ではありません。彼は北海道出身です。どうして知っているかというと10数年前彼と知人だったからです。群馬の地名が出てくるのは、彼は高崎経済大学に在籍していたことがあるからでしょう。(たしか中退しているはず)では、そういうことで」。
◆逢坂みえこ『永遠の野原 3巻』。川崎の?堂(名前思い出せそで思い出せない)で三冊二百円で購入。(ちなみにあと二冊はリルケ『純白の幸福』とパトリック・ジュースキント『ゾマーさんのこと』)。『永遠の野原』シリーズを読むと誰でも恋愛したくなるに違いない。「永遠の野原」という言葉からは、果てしないあたたかいさのようなイメージが思い浮かぶ。それこそが恋愛なのだろう。しかし今日、松田聖子と神田正輝が離婚した。永遠には続かないのか(T_T★★★★
◆伊藤潤二『画家』。富江シリーズ。ちなみに『GON』のインタビューによると、富江という名は「お富さん」からとられたとのこと。伊藤潤二の画の綺麗さと恐さは他の追随をゆるさない。★★★
◆『COMIC CUE vol.2』。新宿タイムズスクエアの紀伊国屋で購入。松本大洋の『ドラえもん』のカヴァーが絶品。坂口尚『石の花』を読んでから読むと分かるが、この『ドラえもん』という凝縮された短篇は、『石の花』全五巻の内容をも含んでいる。違うのは、坂口尚が、悩み続け戦い続ける主人公を描いたのに対して、松本大洋は、苦悩する主人公に「疲れるだろそういうのも。気楽にやれ」と忠告する老人を描き、主人公はそれを受け入れるということ。この違いは作者の年令からくるものだろうか。時代の違いか。どちらも現実を安易に受け入れないという点では共通しているが。常に現実に違和感を持つというのは大切なことだが、持ち続けるのは難しい。その他、ギャグでは、おおひなたごうの『魔太郎がくる』のカヴァーが一番おもしろかった。朝倉世界一は実は絵が上手いんじゃないのか。絶対そうだ。高野文子の絵の独特の視点。かつて真崎守が実験的にやっていたことを高野文子は自然にやっている。とりみきは『ホモホモセブン』をネタにしてるが、いまどきよっぽどマニアじゃないと『ホモホモセブン』なんて知らないんじゃないだろうか。『COMIC CUE』を読むのはマニアだからいいの? 冬野さほはポスト高野文子だと思う。いやポストさべあのまと言うべきか。★★★★★
◆山野一『どぶさらい劇場』。伊勢佐木町オデオンビルの先生堂で購入。以下三冊も同様。オデオンの地下は日本最大の百円ショップが新しくできていた。百円ショップに行くとついついくだらない物を買ってしまう。山野一は真実をあからさまに描く。その不快感から読めない人もいるかもしれない。例えば根本敬の描く物語は寓話的だからそれほど抵抗もなく受け入れられるだろう。しかし、山野一のそれはリアルで徹底的に救いようがない。私は山野一の描く排便シーンが好きだ。好きだというのもおかしいが奇妙な感動をおぼえることは確かだ。★★★★
◆徳弘正也『シェイプアップ乱 3巻』。あぁこれ昔読んだなぁ。小学校のころ読んだマンガというのは刷り込まれる。忘れない。このマンガは今読んでも十分おもしろい。★★★
◆八木教広『エンジェル伝説 4巻』。実は真面目な主人公。顔が恐いゆえの誤解に基づき話が進んでいく。話もおもしろいが、その独特の絵もいい。★★★
◆夢野一子『自転車にのって 1巻』。典型的な少女マンガの心地よさ。★★★
◆土田世紀『未成年』。近くの古本屋で、吉野朔美『ぼくだけが知っている 4巻』と島田清次郎『地上』と一緒に購入。これ、かなり画面が猥雑で読みにくい。しかしその猥雑さこそ未成年期の特徴だ。★★★★
◆今月の本↓
◆佐藤通イ?『リアルタイムの短歌論』。 とにかく短歌集は本屋に置いてない。かろうじて塚本邦雄や俵万智があるぐらいで、大きい本屋でも岡井隆があればいいほうだろう。だいたい図書館にだって現代短歌の歌集なんてほとんどないもの。短歌ってものがあることは誰でも知ってるけど、果たして現代短歌ってのがあることを知ってる人はあまりいないのではないか。現代音楽ならばタワーレコードなどで触れることができるが、短歌なると一般人との接点がほとんどない。(これは結社制度をとっている短歌側にも問題がある)。しかしこれだけは言える。穂村弘や加藤治郎や萩原裕幸の短歌を知らないというのは不幸なことですよ。この本はタイトルにリアルタイムとあるが5年前の本だ。俵万智や吉本ばななが出てきた時点のリアルタイムである。ひとつ気になったのは、性差のない人物を描いているから吉本ばななは新しいという記述があるが、そんなの吉本ばななよりもっと前に大島弓子が描いてるじゃんか。それに主体化が性差をも含めて行われるのが事実だとすれば、性差がないってことは主体以前だってことだよ。性差という点では、おれはラカン派だよ。バトラーの構築主義は気楽すぎるよ。この本とは、全然関係ない話だけれど。(五柳書院)★★★
◆金子雅臣『ホームレスになった』。 戦後資本主義の競争社会によって歪められた人間関係がホームレスを生み出しているという主張。人間関係の崩壊によりホームレスにならざるを得ないということ。住所がないということは、書類が作れない、ということは書類社会の中では生きていけない。ひどい病気でないかぎり「労働可能」と見做されてしまう福祉制度。ノルマノルマのタクシー運転手。北野武監督の『Kids Return』に描かれているのはまぎれもない現実だった。(築地書館)★★★
◆森川直シ?『あなたがホームレスになる日』。手っ取り早くすぐ読める。しかし、あまり深刻でない進んで話すホームレスに重点を置いていて、話すことのできないホームレスには取材していないのが物足りない。★★★
◆山田太一『岸辺のアルバム』。めちゃくちゃおもしろい。青春小説としても読める。★★★★★
◆呉智英『インテリ大戦争』。右も左も超越しているのがいいところだが。どちらかに転ばず、そこでずっと半畳をいれ続けていて欲しい。★★★★
◆小林恭二『小説伝』。同じ作者の『ゼウスガーデン衰亡史』も読んでるけど、どうも熱くないところがあまり好きじゃない。おもしろいんだけど。文章も巧いし。でもどうも業界向けに閉じている感じがね。★★★
◆島田清二郎『地上』。 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』や、堤抄子のマンガ『クラリオンの子供たち』や、夕凪薫のマンガを思わせる。その純粋さ。★★★★★
◆『ゾマーさんのこと』。 少年は空を飛べる。しかし早川義夫が歌うように、大人になっても僕らは「しようと思えば空だって飛べる」。話の雰囲気で坂田靖子を連想したので、彼女がマンガ化すればいいのに。★★★
12/1996||2/1997
ISHIHARA, Shingo
shingoo@lily.sannet.ne.jp