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1996年12月

◆川崎球場でホームレスの越年対策事業のバイト。

◆亀有名画座へ。滝田洋二郎による滝川真子の痴漢シリーズを見に行く。

◆いまこそペルーへのりこむ時だ猪木!! 1･2･3･ダー!!

◆クリスマスだというのに、幻の名盤解放同盟＊お色気編、サンドラ・ジュリアン『セクシー・ポエム』なんてのを買ってしまう。クリスマスに一人これを聞いてるというのも悲惨な状況だなぁ。あと ウィンダム・ヒルのアンビエント、Oystein Sevag + Lakki Patey『visual』と、得体の知れない怪しいジャケの M・ナウシーフ+D・フィリップマン『ヴィーナス・スクエアー・マーズ』 というのも買ってみた。

◆山手線は一周約一時間かかる。女子高生がスマップの載ってる車内吊り広告を堂々と盗んでいて、自分の姿を見ているようで笑ってしまった。でもオイラは堂々とは盗めないな。今週のヤンジャンは広末涼子だけど、また盗みにいくんだろうなぁ。今度は女子高生を見習って堂々とやろうか。そんなの見習ってどうすんじゃ!!

◆ マクドナルドで時間つぶす。高校生が、バリューセットについてくるカードをたかっていた。トレーの上にはなんと広末涼子が。もちろんもらってくる。

◆高校生があまりにもうるさく騒いでいて禁煙なのに煙草すったりして回りに迷惑をかけていたので注意したら喧嘩売ってきたのでありがたく買う。いつもはそんなことしないのだが、どうも徹夜明けでハイテンションだったらしい。結局店員に止められてマクドナルドを出る。

◆若いうちから煙草買って税金払ってやることないのに、などと思いながら畸人堂という古本屋へ。あやしい名前だがごく普通の古本屋。尊敬する西原理恵子嬢の『ぼくんち(1)』と、敬愛する井出薫嬢の写真集が500円で売ってたので買う。

◆ 　タイムズスクエアの紀伊国屋で、瀬々敬久監督の『生まれ変わるとしたら』というセルビデオ買う。カレンダー売場で「わたしこの子大好き」とOLが広末涼子のカレンダーに近付いた。するとそのOLの連れの女性が「知ってる。戸塚にすんでるんだよ。おばぁちゃんち」。うぉー。なぜそんなこと知ってるんだぁー。一般にもそういうことが知れ渡ってるというのが広末涼子の特徴か。

◆高島屋は入場制限されていた。

◆手持ちの金がなくなって、新宿郵便局へ下ろしに行く途中で、「お茶してください」と女性二人組にいきなり声をかけられて驚いた。お茶してください四人計画(だったか?)というのをやっているらしい。4人の人とお茶するということらしい。いかにも怪しげなので断る。あんなの連いていく男がいるのか?　ちょっとかわいかったから連いてく男いるのかも。

◆亀有へ。商店街でスピッツがかかっていて、なんだか妙なデジャヴを感じた。なぜだか分からない。不思議な感覚だった。

◆で、四天王作品4本見る。

◆文芸座のオールナイトへ。

◆ピンク映画のページのカウンターが凄い勢い。Yahho!!に登録されたとたん増え始めた。さすがエロの力はすごい。でもオイラの対象とするピンクは全然Hじゃないけど。エロ目当てでくる人を騙してるようで、なんか気が引けるなー。

◆親から「凄いクリスマスプレゼントがあるよ」と電話があった。何かと思ったら、NTTに勤めている友人からドコモの広末グッズ一式(カレンダー・クリアファイル・ポスターetc)を手に入れたとのこと。嬉しいけど、最近冷めつつあるからなぁ。雑誌も買ってないし。

◆超極悪HTML研究所 なるおもろいページを見つける。なんとそこから『カーレンジャー』のページへ行けた。ストーリーが書いてあって、途中から観始めたオイラにとってはありがたい。レッドレーサーとゾンネットちゃんがスキスキ同志ってことだって前回の放送で初めて知った。

◆マクドナルドの銀はがし(というのだろうか。詳しい内容は17才の日記参照)。透けないかなーと光にかざしたりしてたら、女子校生に笑われたよ。結局4点獲得。アップルパイと変換(変換って日本語は変だな)。

◆昨日拾った、永野のり子『God save the すげこまくん』の1~5巻読む。

◆録画しておいた『カーレンジャー』二本立てを観る。

◆本を拾う。そのなかにあった『アリスの城』を5冊まとめて読む。いい作家の作品はかなりいい。町田ひらく・夕凪薫。

◆痴漢専門雑誌『フィンガープレス 2号』。レイアウトを間違えたのか空白が出来てしまったところに、四角でかこって「お絵描きスペース(何も聞かんでくれ)」とあったのには笑った。

◆山手線でぐるぐる眠りしようとしたが、食べたポップコーンとトイレの臭いのせいで気持ち悪くなり新宿で降りて紀伊国屋そばのロッテリアへ。

◆それにしてもどこの店も有線がやかましい。日本の文化水準が下がるぞ。もっと耳を養わなきゃダメだ。

◆タイムズ・スクエアへ初めて侵入。爆弾しかけてきてやった(ウソ)。

◆紀伊国屋でマンガのお宝フェアをやっていた。ガロで表題作を読んで気にいっていた管野修『ローカル線の午後』と、買いのがしていた『COMIC CUE VOL.2』を買う。中原昌也『ソドムの映画市』ちょっと立ち読み。いちばんいいのは後書き。

◆ ディスクユニオンで、いしまるー『わーすと　おぶ　1986』(ジャケ違いの同じタイトルのがあって迷ったが安い方を購入)、大好きなMainの『FIRMAMENT 3』と、 MARILYN CRISPELL & IRENE SCHWEIZER『OVERLAPPING HANDS:EIGHT SEGMENTS』(ジャケ買いだったが、セシル・テイラーっぽくて当たり)、いままで見かけても、いつでも買えると思って買わなかったデビッド・チュードア『Microphone』を買う。友人はゴブリンを買う。

◆疲れたので駅前で座ってちんどん屋の演奏を心地よく聞いてたら、いきなり「募金してください」。人にたかる暇があったら自分で働いて募金すればいいじゃないか!!

◆渋谷の大盛堂の地下の怪しい洋書店で、女性性器のぬりえ本を発見。うーん、くだらなくていいぞ。あと最近発見したくだらない本といえば、夜眠れない時に羊を数える時に使う本だ。ただ羊の絵が描いてあるだけ。 広末テレカ、YJの4500円、「もう始まっている」3000円、NEXTのデカポスターの3000円。買わないけど。

◆ レコファンで『タイムボカンシリーズ』の歌を集めたCD買うか買うまいか迷う。あがた森魚の新譜発見。弾き語りでジャケは高野文子。欲しい。

◆ミリタリーショップを覗いて、ブルース・リーのかっちょいいポスター欲しいななんて思いつつ、まんだらけへ。

◆伊藤潤二『画家』、しりあがり寿『真夜中の弥次さん喜多さん　第一巻』、 『プチアップルパイ　第５巻』買う。最後のは、あびゅきょ目当て。

◆疲れて、友人とはもうれつに混んでいた渋谷駅で別れる。

◆『家なき子レミ』を観てせつなくなる。ああ、おれは汚れている。レミのように前に進まなければならない。

◆『祈り−バリのガムラン音楽』『EL&P ライブ』それぞれ500円で買う。 『小説アリス』買う(バカ)。アーウィン・ショー『ローマは光のなかに』、坂田靖子『おばけ地帯』、小林信彦『大統領の晩餐』(早川の初版)、サガン『悲しみよこんにちは』を200円で買う。 『林芙美子傑作集』、片岡義男『アップルタイザーと彼女』、かんべむさし『宇宙のぼっちゃん』もらう。

◆文芸座のオールナイトへ。

◆フジのドラマ『僕が僕であるために』の予告で、大滝詠一の「君は天然色」が流れていた。この曲を聞くとシャルロット・ゲンズブールを思いだしていたけど、これからは広末涼子を思いだすことになりそうだ。

◆尊敬するねずみ男先生に弟子入りするべく、その旨書いた手紙を妖怪ポストに投函する。

◆『マタンゴ』見る。

◆指差した。

◆ 「田渕由美子選集」なんてのが文庫で出てるとは知らなかったな。

◆転ぶ。

◆続けて9本のピンクを見たら流石に疲れて、家帰って寝る。

◆亀有名画座へ

◆ 続けて文芸座オールナイトへ。池袋駅から文芸座への道がわからなくて迷う。

◆ ピンク映画を見いていて、呉智英が根本敬の漫画の後書きで書いていた「短いページでよくこれだけめちゃくちゃな話が描けるものだ」というような事を思い起こしたりする。

◆大学の生協で、得南晴一郎『人間時計』と、写真集『天使』買う。『天使』は期待はずれだ。しかし安藤希と水谷妃里はいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい、いくっ、どぴゅ。

◆恍惚日記の作者の方から嬉しいメールをもらう。返事を出す。

◆たまたま立ち読みした『スピリッツ』に、写真集『天使』の写真が載っていて、その安藤希の可憐さに失神しそうになる。とりあえず『すっぴん』の96年01月号を探す旅に出る事にする。

◆『こんな私に誰がした』見逃す。もうダメらしい。

◆最近、小杉武久の「ヘテロダイン」を聞かないと眠れない。おいらは「ヘテロダイン」を勝手に「裏風の谷のナウシカのテーマ」と呼んでいる。

◆前日に引き続きパルテノン多摩へ。 『kids』『スモーク』『アンダーグラウンド』を見る。特に『アンダーグラウンド』は凄かった。

◆今月の映画↓

◆12/29、亀有名画座にて、 『痴漢保健室』84年。 『桃色身体検査』85年。 『痴漢通勤バス』85年。 『痴漢宅配便』86年。全脚本・高木功、監・滝田洋二郎　主演・滝川真子。高木功の脚本は、ダイナミックな移動が特徴だ。日本へ行ったりインドへ行ったり、銭湯にバイクで飛び込んだり。とにかく場所が動く。個人的には、バックに時々合唱の流れる学園ものの『痴漢保健室』が一番好き。やっぱ学園ものは合唱が流れないとね。『桃色身体検査』は病院が舞台で、保険金目当てに(死体がないと保険金が下りないので)死体安置室から死体を盗む物語。男の死体が必要なのだが、盗んだ死体がおばあさんの死体だったというオチ。『痴漢通勤バス』は三億円事件の犯人の隠した三億円を手に入れようとする物語。手に入れるが旧札だったので、それを知らない外人の女の子に「にせ札いけません」と燃やされてしまう。 結局どの作品でも主人公はいい目をみないのであった。

◆12/22、亀有名画座にて。 『九月の堕天使』「本番レズ 恥ずかしい体位」監・瀬々敬久。『「あしたのジョー」は生きてるさ』「覗きがいっぱい 愛人の生下着」監・サトウトシキ。 『LOVE-ZERO=NO LIMIT』「いやらしい人妻 濡れる」監・佐藤寿保。 『BREAK ON THROUTH』「性春の悶絶　こんにちはクリスチャン」監・佐野和宏。以上詳しくはピンクのページへ

◆12/21(土)、文芸座にてオールナイト。↓

◆『俺たちゃ二十一世紀の糞ガキタチ』「牝臭・とろける花芯」監・瀬々敬久。

◆『不倫日記』「不倫日記・濡れたままもう一度」監・サトウトシキ。 どんでん返しの連続で観客が困惑してると、いつのまにかラストでなぜだかしみじみしてしまう。音楽がすばらしい。キネ旬のピンク映画評のストーリー解説を読んでいたので、ストーリーのおかしさが半減してしまった。といわけで粗筋は書かない。サトウ監督の映画のラストはしみじみする。『Like a rolling stone』もそうだ。 トークショーで「葉月蛍についてどう思うか」という質問に「いい女なんじゃないですか、なんてバカなこといったりして(笑)」と答えていた。

◆『危険がいっぱい』「本番!!どすけべ夫婦」監・上野俊哉。 一流会社を首にされ婚約者には振られた男が、突然訪ねてきた家出してきた女といろいろ自殺を試みるが、なかなか成功しない。婚約者に電話で別れを告げ(この別れの言葉がおかしくて場内爆笑だったのだが、忘れてしまった)、車を盗み山奥の宿へ。そこで女の亭主から「女房を殺してくれ」と頼まれる男。それで女を殺そうとすると逆に「亭主を殺してくれ」と頼まれる。で、なんやかんやあって女と絡んでいるときに女の亭主が入ってきて、実は女の家出は倦怠期の夫婦が仕組んだものだったと分かる。「あんたら狂ってるよ」と夫婦に毒ずく男。亭主は「人間なんてみんな狂ってる」「人生なんとかなるさ」という真理を男に言う。男が帰ると婚約者が。「赤ちゃんができたの」。ハッピーエンド。『生きる』のブランコシーンのパロディーがおもしろかった。後半になると演出が冴える。

◆『海の駱駝』「ドすけべ母娘」監・松岡邦彦。 トークショーで、「撮ってる時はホントに好きになってしまう」と監督が言っていただけあって、今まで観た葉月蛍の出演作の中では彼女の魅力が一番でている。もちろん亀有のピンク映画祭で見た実物はめちゃくちゃかわいかった。 幼い頃父親に聞かされた果てしない砂浜を憧憬する少女。その父親の言葉で映画は始まる。母親は何人も男を連込む。SEXシーンをのぞく少女(そのときの葉月蛍の表情がいい!!)。母親の相手と寝て処女を失い、母親と争い（この喧嘩のシーンがすばらしい）、殺してしまったと誤解した少女は逃げだし海辺の町に辿り着くが力尽き倒れる。ホステスの女に助けられ、スナックで働く。「普段は暗いけど、客の扱いはうまいのよね」。やがて女の情婦の薬売り（この男の科白まわしがピンク映画っぽくないので好き嫌いが別れるところだろう）と関係を持つ少女。風船をお腹につめるシーン。薬屋は女の家から宝石類を盗む。「おまえ下りろよ。赤ん坊でも何でも勝手に産め」と言われた少女は、宝石類を男の手から奪い海岸へと駆け出す。それを追う少女を好きな少年。少年は少女を迎えにきた。「なんでここが分かったの？」「お前が話してた砂浜だろ、ここ」。母親の死んでいないことを知った少女は家に帰ろうとする。そのまえに宝石類を返そうと女の家へ。「おれが返してくるよ」と少年が家に入る。そこには少女の作ったガスの詰まった風船が。明かりを付けるためにライターの火をつける少年。風船に引火して大爆発。重体の少年を背負った少女が砂浜を歩く。「死なないで」唐突に画面が暗くなりエンド。 瀬々敬久脚本なので、当然海のシーンがある。横浜寿町のシーン。冒頭のセーラー服のシーンが印象に残る。月の砂漠を歌う葉月蛍。突然終わるラストも瀬々脚本らしい。瀬々作品はラストがめちゃくちゃかっこいいのだ。しびれる……

◆『エクスタシーの星』「エクスタシーの涙・淫乱」監・大木裕之。 60分60シーン60カットの実験作。新東宝ではなく国映配給。こういう実験作を自ら配給する国映の姿勢がすばらしい。 音楽がこってるな、と思ったらジョン・ゾーンだった。なるほどね。しかしジョン・ゾーンもいろいろやってるなぁ。宇宙人の母親と父親。自分たちが宇宙人だと知った兄と妹。不思議な空間。ピンク映画の絡みのシーンには定石があるのだが、そもそも大木裕之はピンクの監督じゃないのでピンクらしいSEXシーンはあまりなく、どちらかというとAV的なリアルなSEXシーン。

◆12/14(土)、文芸座にてオールナイト。↓

◆ 『誕生日』「痴漢電車・いやらしい行為」監・佐藤寿保。a boy meets a girl.林由美香の唄で終わる印象的なラストシーン。

◆『海鳴り−あるいは、我々は後向きには歩けない』「狂乱不倫妻・熱いうめき」監・佐野和宏。 『ラストショー』[IMDb]を彷彿とさせる厳しい青春映画。傑作。

◆『ガタンゴトンがまたいいのよね』「痴漢電車・絶倫女」監・橋口卓明。古典的ピンク映画って感じ。古臭い。ほとんどのピンクの観客はそれを求めている。しかしおれはそれを求めてはいない。

◆『彗星まち』「獣たちの祝宴・イクときいっしょ」監・今岡信治。 極めて現代的な演出。岡崎京子の『リバース・エッジ』の死体を取り入れつつ、彗星を待つ(それは彗星でなくともいいのだろう)若者を描く。主人公三人の役者が素晴らしい。ラストの青空。 見終ったあとの感触を例えるならば、よしもとよしともの漫画を読み終った後の読後感だ。例えになってないか。分かる人には分かるだろう。

◆『超過激本番・失神』監・中野貴雄。 奇想天外な不条理コメディー。ここまでやられると傑作だとしか言いようがない。見終ったあとの感触を例えるならば、とりみきの漫画を読み終った後の読後感だ。例えになってないか(笑)。分かる人には分かるだろう。

◆『マタンゴ』監・本多猪四郎。 いろいろ思うところはあったのだが、忘れてしまった。

◆12/7(土)、文芸座にてオールナイト↓

◆「痴漢電車・朝の悦しみ」監・滝田洋二郎。 竹中直人ふんする松木清張が密室殺人に挑む。最高にバカバカしくてピンク史に残る傑作。

◆「禁断・生贄の女」監・廣木隆一。 フレンチポップスマニアの監督らしく、犯される場面でかわいい唄が流れて、その歌と美しい画面とがあいまって独特の雰囲気を出している。

◆「神田川淫乱戦争」監・黒沢清。 麻生うさぎがかわいい。これだけカラミが少ないピンクも珍しい。

◆「変態家族　兄貴の嫁さん」監・周防正行。 小津安二郎のパロディ。おもしろいが、一番眠くなる時間にこれを上映するとは。眠気が襲ってきて2、3分寝てしまった。

◆「女教師を剥ぐ」監・高橋伴明。 高橋伴明は凡庸な監督だと思ってたが、それを再認識した。

◆亀有名画座にて↓

◆『KYRIE ELEISON』「生盗撮リポート 恥話」監・佐藤寿保。 ピンク映画の音楽はかなり良い。日本映画の中でも最高だろう。

◆『Don't let it bring you down』「変態テレフォンONANIE」監・佐野和宏。 2回目。泣ける。傑作!! 佐野和宏監督の映画は私映画のようだ。

◆『わたくしの汽車は北へ走っているはずなのにここではみなみへかけている』「痴漢電車いけない妻たち」監・瀬々敬久。 圧倒的な風景!! ピンク映画のカラミのシーンは得てしてワンパターンに陥りがちだが、この映画は違う。ラストのテロップの出し方とか最高。これがピンク映画と言うだけで正当に評価されないのはおかしい。『キネ旬』のベストテンならば一位レベルの傑作なのだが.......。『映画秘宝』のパイ投げ攻撃に怒ってるような『キネ旬』で一位を取ろうとた取るまいとどうだっていいのだが。

◆『ザ・投稿ビデオ』「特別企画　ザ・投稿ビデオ」監・サトウトシキ。 投稿ビデオ販売のために自分のプライバシーまでも売ってしまった男が愛に目覚める映画。ラストのガソリンスタンド店員の笑顔のストップモーションの素晴らしさ!!!

◆『青春群像』監・フェデリコ・フェリーニ 。 ぐーたら男たちの映画。パゾリーニの『乞食』と似てる。

◆12/1「第六回TAMA CINEMA FORAM」パルテノン多摩にて

◆『 kids』[IMDb]。 古びてしまう映画。 これを見るなら山本直樹のマンガ読んだほうがいい。この映画はセックスを描いてるだけで、その先の何かが描けていない。「若いうちは先のことを考えずセックスしまくる」というようなナレーションが流れて終わるのだが、それで終わってしまったら登場人物がただ現実に逃げてるだけの映画になってしまう。重要なのはその先だ。まぁ、しかし人は現実へと逃げ続けながら生きていってしまう。就職の時期になれば就職へと逃げてしまうし、結婚の時期になれば結婚へと逃げてしまうし。そうしたほうが楽だからね。そういえば『エヴァンゲリオン』でシンジが「逃げちゃだめだ」って言う。あれは、「逃げちゃ駄目だ」って言いながら実は現実へと逃げているだけにすぎない。それで終わっちゃったらつまんなかったけど『エヴァンゲリオン』はその先を描いていたから傑作になり得た。

◆『スモーク』[IMDb]。 この監督はラストにだらだらクレジットを流したくなかっただろうなぁと思った。 ハーヴェイ・カイテルはデニーロに似てる。 クリスマスの話は本当なのか嘘なのか？と隣のカップルが話していた。いい映画はいくとおりもの解釈を許す。ええ話で、泣けた。

◆『アンダーグラウンド』[IMDb]。 圧倒された。それしかいいようがない。これは十年に一度出るか出ないかの傑作。ここまでやるかって感じ。音楽サイコー。燃えながら回る車椅子。ラスト、島が割れる所でゲーム「ディグダグ2」を思いだした。

◆今月のマンガ↓

◆坂口尚『石の花』。今年最後に読んだ大作。なぜか今まで読んでいなかったのだが、古本屋で文庫を全巻見つけたので。一巻のカラーぺージの絵。これこそが坂口尚の絵なんだなぁ。いい!!!!　これはユーゴを題材にしているが、極めて普遍的な物語である。現実を安易にみとめて逃げ込んではならない。それこそが戦争を生み出すのだということ。

◆西原理恵子『ぼくんち　第一巻』。うーん。これはかなり凄いぞ。

◆永野のり子『God save the すげこまくん 第1~5巻』。 こんなにドキドキするラヴストーリを読んだのは久しぶりだ。小学生のとき女の子にふざけて顔に雑巾を投げつけてしまったのだが、そのときの女の子の悲しそうな表情を思いだしたりした。

◆岡田あーみん『ルナティック雑技団 第一巻』。 確か、主人公二人が電車で逃げる所あたりまで、リアルタイムで『りぼん』で読んでた。
岡田あーみんなくしては桐島いつみも出なかった?

◆得南晴一郎『人間時計』 。 なんだか凄い。買うつもりはなかったけど、ふらふらといつのまにかレジに本を出していた。推測だけれど、この描線は山上たつひこに影響を与えたんじゃないかと思う。

◆あさりよしとお 『ワッハマン 第1~5巻』。 ほのぼのロボット戦闘マンガ。好き。

◆江川達也『ゴールデンボーイ(1)-(7)』 。 すごくラジカルなマンガだ。根源的という意味でも、過激という意味でも。『まじかるたるる〜と君』は少年誌ゆえかテーマが巧妙に織り込まれていた（織り込まざるをえなかった?）ので、反『ドラえもん』というそれに気付いた人が少なかった。それで青年誌で過激に主張しはじめたのかもしれない。エロを混ぜるというのは読者獲得に最適で、コリン・ウィルソンも（初期の）大江健三郎もエロ要素がなかったならおいらは読まなかっただろう。 江川達也はコリン・ウィルソン的手法でエロを混ぜている。だから、もろのHマンガよりよっぽどHなのだ。 例えば、学校の勉強はゲームであるというのは清水義範の『国語入試問題必勝法』で扱われているが、江川達也はその先のもっと根本を問題にしている。なぜゲームになってしまうのか?　ゲームだとわかっていてもそれに従うべきか?　それとも根本を解決するべきか?　江口達也は後者の社会主義・マルクス主義的思考のようだ。こういう問題を考えるときいつも思いだしてすしまうのはチェーホフのある短篇なのだが、タイトル忘れた。チェーホフの短篇小説は良い。とくに太宰治の好きな人にお薦め。桃ばっかり供えてないで、チェーホフも読むべし。

◆高橋葉介作品集4『宵闇通りのブン』。 雑誌『マンガ少年』で読んだし、サンコミックスでも読んでるけど、せっかく拾ったので再々読。ブンはニヒルだ。かっこいい。「バーカ」の科白がしびれる。高橋葉介にははラヴクラフト全集マンガ版を描いて欲しい。

◆羅川……『赤ちゃんと僕』。 本当の子供はこんなに都合の良いものではない。

◆『マンガ地獄変』。 梶原一騎については思い入れはないのでわからないけど、コロコロコミック系の漫画は小学生の頃かなり読んでいたので、その部分は読んでておもしろかった。

◆今月の本↓

◆いとうせいこう『マルクス・ラジオ』。 大昔に意訳か直訳か論争があったというのを読んだ事があるが、この本を読めば分かるように意訳の方が正しい。だじゃれを直訳してもなんの意味もないだろう。しかしこの本はばかばかしくてやっぱりマルクス兄弟は凄い。

◆網野善彦『異形の王権』。 網野先生のテスト対策で読んだんだが。まるっきり役にたたなかった。百姓が一揆の時、決意を表すために非人の格好をしたというのはおもしろい。

◆仁川高丸『微熱狼少女』。 同じ著者の『F式・夏』はタイトルにひかれて(大島弓子『F式・蘭丸』って名作と似てたから)、読んだことある。あんまりおもしろくなかったけど。『微熱狼少女』は『F式・夏』より良い。『F式・夏』はひねくれすぎてた。『微熱狼少女』の方が素直で読みやすい。いかにも男の好きそうな女子高生像だし。切り取ってファイリングしてあるマンガ、稲光伸二『灰皿もって』を思いだす。あの作者はどうしたのだろう。『灰皿もって』好きだったのになぁ。

◆小杉武久『音楽のピクニック』。この本による即興の定義。「『生産性』情念の固定フィルターを忘却し、『無産性』としての可変フィルターを内在し得るかということのほうに意志を持つこと」(p.146)、「あらかじめの想定を越えた音楽。「意識」が「無意識」からの音をたえず聴くこと」(p.129)。これは音楽だけに適用すべきものではないなー。このように生きることは、資本主義に対抗することでもある。これに従うとキース・ジャレットのソロ・ピアノなんて即興と言えないんじゃないだろうか?　特に『Paris Concert』はもろバッハの影響であって、そもそも真の即興に何かの影響の入り込む余地があるのだろうか。小杉武久があまりバイオリンを使わないのは、やっぱりバイオリンだと即興にならないからで、例えばキース・ジャレットがピアノじゃなくて、コップでも叩いて音楽を出したら、それこそ真の即興だろう。意識を志向するコーニリアス・カーデューと、無意識志向の小杉武久の対談はおもしろかった。カーデューがひき逃げで死んだことを始めて知った。

◆斎藤惇夫『冒険者たち』。 ちょっと眠れないから読み始めたら、いつの間にか読み終ってしまって、朝だった。また意味もなく徹夜してしまった。『ガンバ』の原作。

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11/1996||1/1997

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ISHIHARA, Shingo
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