◆テレ朝「目撃ドキュン」で、「男運の無さは生き霊の仕業」と除霊士が除霊していた。オウム事件でオカルト番組はなりを潜めていたが、最近また復活してきている。除霊VTR終了後、司会者は「カウンセリングの一種」と一応フォローしていたが、やっぱりこれは危険だろう。「男運のなさ」の原因のほとんどは、霊ではなく、階層問題である。
霊のとりついている女性が「過去にレイプされた。それが男性不信になっている」という話をして、除霊士は「それがトラウマになっています。その男が生き霊です」と言うんだけど、そもそもトラウマってのは、ある体験が傷になっていることを「本人が全く気付いていない」からトラウマなんであって、「本人が自覚している」辛い体験はトラウマとは呼ばないはずだ。日常会話でもよく「トラウマ」って使うけど、ほとんどの場合使い方が間違っていて、トラウマって、本人が語れないからこそトラウマなんである。
◆折原一『沈黙の教室』読了。厚さの割にはつまらない。折原一といえば叙述トリックだが、それも冴えていない。☆☆。
◆ブックオフ朝霞台店。紀田順一郎『古本探偵の事件簿』、志村則夫『歯医者に虫歯は治せるか』(「一日二十分ハミガキしなくちゃ」と負担に感じながらハミガキする人より、全くハミガキしなくても、ストレスもなく楽しく暮らしている人のほうが虫歯が少ないらしい)、寺山修司『新・書を捨てよ、町へ出よう』(橋本治の解説が感動的)、しりあがり寿『しりあがり寿の多重人格アワー』、尾辻克彦・赤瀬川原平『東京路上探検記』、吉増茂雄『映写機カタカタ』(ぼっちゃん文学賞受賞作。映研を舞台にした恋愛小説。さわやかだがピリリと辛口。良かった)。全て百円。
◆志木駅近くの東西書房。ここは黒い本系の古本屋。しかし昔ながらの黒い系の古本屋というのは、ブックオフなどの白い系の古本屋と比べて、棚が見にくいという欠点がある。『ヤングユー増刊 デラックスYOUNG YOU』No.3(鳩曜子目当て)、妹尾隆彦『カチン族の首かご〜人喰人種の王様となった日本兵の記録』(キワモノかと思ったら、梅棹忠夫が拔を書いているので、意外とちゃんとした本なのか?)、木村千歌『パジャマ・デート(6)』。
◆
同居人が板橋商店街のカリスマ美容師のとこへいくので、おれは久々に板橋周辺で古本屋巡り。まずときわ台駅近くで、やまだ紫『はなびらながれ』(200円)、時松早苗『キッスをください!』(100円)、中板橋駅前で『鳩よ! 特集しりあがり寿辺境を行く』、長井好弘『新宿末広亭 春夏秋冬「定点観測」』。
◆池袋フランフランで椅子二脚購入。ヘレナチェアの赤と白。
◆
英会話のジオスのテレビCM、男が周りから「補助金が出る」「24時間やっている」と様々にメリットを浴びせ掛けられ、ついに男、「やらない理由がみつからないー」と叫んで終わる。この「やらない理由が見つからない」という言葉がひっかかる。「やらない理由が見つからない」からって、やるべきなのか。それでも踏みとどまって、「やらない」という選択肢だってあるはずなのだが。多分ブッシュも「やらない理由が見つからない」と思って報復攻撃を行っているのではないか。
◆アメリカはかつて、対共産主義のテロ組織に資金援助などバックアップしていたくせに、いまさら「テロ撲滅」などと言ってやがる。
◆ブックオフ朝霞台店。さそうあきら『虫タマガワ(2)』、木村千歌『カンベンしてちょ!(2)』(いいねー、『デザート』連載だけあってエロいね。あからさまなエッチシーンはないけど、木村千歌の絵柄だと、ソフトエロでも十分クる)、高橋千鶴『ママは元総長(1)』(タイトル負け)、笙野頼子『説教師カニバットと百人の危ない美女』(文学史上に残るブス小説、これ、笙野頼子でイチバン好きだ)、安彦麻里絵『快楽でわたしたちはできている』、文藝別冊『心の詩集』(詩のアンソロジー。「私達は冬でも金魚/帰れない道をゆく」で始まる古賀鈴鳴「帰れない二人」が良い)、加藤博『ラバン』。以上全て百円均一。
◆本棚を作ったり、机を作ったり、毎日ドリルとペンキを手放せない。
◆今岡ファンの同居人と中野武蔵野ホールへ、P1グランプリ。今岡信治『濡れる美人妻 ハメられた女』(新東宝)、国沢実『不倫願望 癒されたい』(オーピー)。二本連続上映後、監督同士のトークバトル。そして観客の投票で勝敗が決まる形式。まずは、期待の今岡信治『濡れる美人妻 ハメられた女』。ファーストカット、これから自殺しようとする男が掲げる手のアップ。そういえば阿部恭久の詩にこんあのがあったなと思い出した。「眼の位置をかえよう(おっかしいな、いつもここに手ここに指…)」(「最後の夏休み」『身も心も明日も軽く』書紀書林,1977)。自殺し損ねた男、偶然に死体を見つける。その死体が自分とうりふたつ。ひょんなことからその死体の男と間違われた主人公の男、そのまま死んだ男になりすまして、死体の男の妻と夫婦生活を始めるという話。妻の部屋には書道がペタペタと貼ってあり、妻の作るご飯はいつも焦げている。精神的に不安定な妻。これは名作『それでも。』(「ぐしょ濡れ人妻教師 制服で抱いて」)を思い出さずにはいられない人物造形である。結局、男は女に「自分は夫ではない、本当の夫はすでに死んでいる」と告げる。でも女は「それでもいいの。あの人が生まれ変わってきたんだもん」と言って、二人は抱き合う。始めとおなじく手を掲げる男。「おれは誰なんだ」で、終わり。つまり一貫したアイデンティティなどない、場合によってはアイデンティティなど必要じゃないし、お互いがにせもの同士でもうまくやっていけるだろう、ってことだろうか。国沢実のほうは、陳腐な話で陳腐な芝居。過去の国沢作品は陳腐ながらも、何か突き抜けた所があったんだけど。当然、投票は今岡の圧勝。
◆タコシェで鈴木翁二『A遠』、『藤本和也作品集』。早稲田通りのブックオフで秋重学『DASH(3)』、春日武彦『顔面考』、古川日出男『アビシニアン』を百円。
◆引越し。けっきょくダンボールは本だけで百箱は超えた。これをまた開けなきゃならないと思うと…… 一部屋本で潰れる予定だが、果たして一部屋で入りきるのか。
◆引越し後、はじめての映画は『千と千尋の神隠し』。クライマックスの絵がいままでにないタッチでちょっと異様に思えた。ラストは『クラバート』がネタだろう。志木駅前のららぽ〜と、五つ上映してるのはいいけどさ、スクリーンが小さい。でも午後6時以降は千円で観られる。
◆
「いい曲やわるい曲、いい盤やわるい盤、隠れた名曲、埋もれた佳曲などはない。イイ人、イイ顔の曲があるだけだ。知る人ぞ知るなんてブタのケツ、知らなければ知ればよい。それだけだ。価値など問わずただ受け入れ続けたまえ」(船橋英雄・湯浅学・根本敬『幻の名盤百科全書』水声社,2001)。
◆引越しの荷造りに手いっぱい。とりざえず買い物メモ。六角橋商店街の古本ショップ、R・A・ラファティ『つぎの岩につづく』。
同じく六角橋の鐡塔書院、工藤ノリコ『がんばれ!ワンワンちゃん』、宮谷一彦『人魚伝説(上)』。宮谷一彦『人魚伝説』の下巻はブロンズ社版で持っている。今回買った上巻は竹書房なので、版元違いで上下巻が揃うという珍しいことに。
六角橋の古本屋にて、モラン、ルフォール、クードレイ『学生コミューン』、
安倍吉俊『NieA_7 SCRAP』、三島たけし『ツレちゃんのゆううつ(4)』、桐島いつみ『私は主人公(3)』、斎藤貴夫『国が騙した〜NTT株の犯罪』。
横浜まんがの森では、吾妻ひでお『産直あづまマガジン(1)』を。
ブックオフ(どこのだか忘れた)で、木村千歌『カンベンしてちょ!(1)』、雑君保プ『そして船は行く(1)』、野村尚志『石英の夕刻』。
横浜駅近くのぽんぽん船で、太田好信『民族誌的近代の介入』、アルノ・グリューン『「正常さ」という病い』、ビンスワンガー、フーコー『夢と実存』、金森敦子『関所抜け江戸の女たちの冒険』。フェリックス・ガタリ、杉村晶昭・訳編『<横断性>から<カオスモーズ>へ』。ドゥルーズよりガタリのほうが好き。
横浜野毛のアダルトビデオの片手間に古本も売っているアダルトショップで、大仏次郎『ちいさい隅』、高山銀之助『ちかれたびー』、別冊宝島26『メディアの作り方』、GONTA『地獄の家(3)』。
伊勢佐木町、オデオン先生堂。井筒和幸『宇宙の法則』、菅野彰『海馬が耳から抜けてゆく(2)』、R・D・Laing『Knots』。
横浜ブックオフで、遠藤純『ただ者だ(1)(2)(3)』、漆原友紀『蟲師』(ずうっと売れ残っていた。いいマンガなんだが、人気がないのか)、ピョコタン『全員友達』(ピョコタン、素晴らしい才能)、イタガキノブオ『ネコムシストーリーズ(4)』、高橋千鶴『Good morning メグ』、松田奈緒子『レタスバーガー プリーズ ok,ok!(1)』、樹村みのり『ピクニック』(これが百円ってのは、掘り出しものだ)、森田崇『クロック クロック』(正統派のタイムトラベル少年マンガ。話がまとまっていないのが惜しいが心意気は伝わった)、長谷川修平『鉛筆デッサン小池さん』、ジュール・ヴェルヌ『ミステリアスアイランド(上)』(メビウスが表紙を描いている集英社文庫のジュール・ヴェルヌ・コレクション、見かけると買っているので、集まってきた)、小谷野敦『バカのための読書術』(バカへの読書案内としてはバカ向きでない余談が多すぎる。資料を調べ尽くしてから書くのではなく、書きながら調べるほうが良いってのは勉強になった)、太田忠司『美奈の殺人』(ときどき無性にミステリーを読みたくなるときがある)。
六角橋の鐡塔書院で、J・トンプスン『ポップ1280』(中原昌也、アイカワタケシが推理小説を書いたらこんな感じか)、安藤昇『不埒三昧』(一ヶ月毎日違う女とやってたというのが凄い、大晦日だからと、付き合っている5人の家を順に廻ってセクースするとか、凄いけどちょっと笑える)。買い物はだいたい以上。百円のものがほとんど。
◆
「市立病院最上階のあの窓の僕らの指紋はどうなったろう」(村上きわみ『キマイラ』http://www.bookpark.ne.jp/utanoha/,2001)。夜眠れないときに考えるのは、決まって過去の一場面だ。
◆横浜から埼玉の志木へ引っ越し。荷造り進まず。タモリのように勤勉になりたい。とりあえず買い物リストのみで更新。
◆中板橋駅前。よしながふみ『月とサンダル(1)(2)』『本当に、やさしい。』『ソルフェージュ』。中島義道『私の嫌いな10の言葉』。よしながふみは車椅子の男性が好きなんだろうか?よく出てくる。『こどもの体温』にも出ていた。
◆
横浜六角橋鐡塔書院。成田三樹夫遺稿句集『鯨の目』、蒼色えれじ『微熱少女』。成田三樹夫の句集が素晴らしい。成田三樹夫は読書家で、読書メモを見ると、サンリオ文庫のピンチョンまで読んでいる。
◆
ブックオフ原宿。ラフォーレの近くにあるらしいということだけ知っていた。予想通り、迷った。西荻ぐりん『少女メルヒェン』、山本直樹『極めてかもしだ(1)』、柏木ハルコ『いぬ(5)(6)』、山松ゆうきち『花咲ヶ丘24時』、るいべはやみ『プロレス少女R』、桐島いつみ『ももちゃん』、ほりのぶゆき『ちょんまげどん(1)』。ピーター・ストラウブ『スロート(下)』、笠原嘉『精神科医のノート』、西研『実存からの冒険』。小坂俊史『せんせいになれません(1)』を抜かして百円。小坂俊史『せんせいになれません(1)』、いい。
◆
免許の失効手続きに自転車で二俣川まで。暑い上に坂が多くて死にそうになる。ブックアイランド西谷駅前店で、穂村弘『短歌という爆弾』、寺山修司『戦後詩』、巽孝之編『サーボーグ・フェミニズム』を。
◆
近所の軒下文庫。安藤昇『野望』、尾辻克彦『シルバー・ロード』、チャールズ・A・ライク『緑色革命』、鶴見俊輔『記録現代史日本の百年2 廃虚の中から』、『詩学』1996年4月号、小長谷清実『玉ねぎが走る』。全て百円。
◆藤本和也の作品集を目当てにタコシェへと、自転車をキーコキーコしばいて行ったのだが、まだ置いていなかった。安部慎一の限定版がまんだらけ出版から出ていて、ちょっと欲しい。帰り道、ブックオフ中野早稲田通り店で百円ハンター。黒沢清『キュア』、角田光代『みどりの月』、恩田陸『三月は深き紅の淵を』、奥成達『古都』、目黒考二『本の雑誌風雲録』、R・スコールズ、折島正司訳『テクストの読み方と教え方』、森絵都『ゴ−ルド・フィッシュ』、小玉和文『スティル・エコー』、吉田司『ひめゆり忠臣蔵』。マンガは、三原ミツカズ『4 1/4〜カトゥル・カール』。以上、もちろんすべて百円均一。今回はメジャーどころが多くて、ちょっと保守的か。
◆百円ハンター第2弾。ブックオフ要町店。風間やんわり『腹くだしダンデー』、なかむらたかし『夢の中へ』、やまむらはじめ『ハイパー・ボリア』、もりを舞『幸せの青い鳥』、長谷川集平『光年のかなたデヴォ』、長崎夏海『トゥインクル』(これは杉田比呂美の絵に惹かれて)、古井由吉『行隠れ』(初版帯付き)、福島正実・編『異色SF・おかしな世界』(1970年前半に出版された芳賀書店の福島正実編アンソロジーシリーズの一冊で、全部で十冊出ている。なかでもお気に入りは、『エロチックSF・宇宙のエロス』という一冊。タイトルが良い)、斎藤惇夫『ガンバとカワウソの冒険』、レオ=レオニ、谷川俊太郎訳『フレデリック』、松岡達英『ぼくのロボット大旅行』(福音館書店,1984)。最後の二冊は絵本。
◆この季節はデパートの古本市が多い。横浜そごうの古本市へ自転車でえっちらおっちらと赴く。長谷川伸『蹴手繰り音頭』、きだみのる『道徳を呑む者』『ニッポン気違い列島』、『現代思想』特集・ブラック・カルチャー、特集・仮構としての経済、平岡正明『地獄系24』、山松ゆうきち『天元坊(1)』。それにしても、きだみのるの本はタイトルが「気違い」ばっかりで、絶対復刻できなそう。『夜想』を2、3冊小脇に抱えた女子高生(美少女!!)がいたが、彼女のこれからの人生は大丈夫なんだろうか。心配してしまう。
◆今度は自転車で、新宿京王デパートへ、大古本市。三時間ほどかけたが、全部はみられなかった。棚を早く見るにはある種のリズムが必要なのだが、今日は体調がすぐれず、視線のつまづきが続いて時間がかかってしまった。買ったのは、梅木達郎『放浪文学論』、幸田文『黒い裾』。前者は『フランス』に連載していたジュネ論。帰りにブックオフ要町店で、水木しげる『鬼太郎の地獄めぐり』を百円で。ねずみ男の生き方には学ぶところが多い。
◆『オネアミスの翼』を観た。☆☆☆☆☆
◆『ホテル・ニューハンプシャー』を観た。☆☆☆☆☆
◆『魔女の宅急便』を観た。☆☆☆☆☆
◆『クレヨンしんちゃん爆発!!温泉わくわく大決戦/クレしんパラダイス メイド・イン・埼玉』を観た。☆☆☆☆
◆風間やんわり『腹くだしダンデー』(講談社・アッパーズKC,1999)を読んだ。☆☆☆☆☆。
◆なかむらたかし『夢の中へ』(徳間書店・MOTION BOOKS,1985)を読んだ。☆☆☆。
◆やまむらはじめ『ハイパー・ボリア』(大都社,2001)を読んだ。☆☆☆。
◆もりを舞『幸せの青い鳥』(辰巳出版・タツミコミックス,1988)を読んだ。狙ったくだらなさが好き。☆☆☆☆。
◆長谷川集平『光年のかなたデヴォ』(理論社,1993)を読んだ。☆☆☆。
◆長崎夏海『トゥインクル』(小峰書店,1999)を読んだ。杉田比呂美の絵。☆☆☆。
◆レオ=レオニ、谷川俊太郎訳『フレデリック』(好学社,1969)を読んだ。☆☆☆☆。
◆松岡達英『ぼくのロボット大旅行』(福音館書店,1984)を読んだ。☆☆☆☆。
◆目黒考二『本の雑誌風雲録』(本の雑誌社,1985)を読んだ。☆☆☆☆。
◆中島らも『こらっ』『西方冗土』を読んだ。☆☆☆☆。
◆吉田司『ひめゆり忠臣蔵』(太田出版,1993)を読んだ。ひめゆりを戦争被害者の霊魂と言い換えるのではなく、
「ムダ死にでしたと宣言し、その死者たちと手を切ることが反戦の正しい道」(110頁)という主張は明快。あとは、やくざなマスコミ稼業だぜっていう自意識の過剰さのにじみ出ている文体が気恥ずかしい。松田政男が重信房子と寝ていたとかいう本編とは関係ないような話はおもしろかったが、こんなことをおもしろがってたらイカンと自戒。☆☆☆。
◆恩田陸『三月は深き紅の淵に』(講談社,1997)を読んだ。恩田陸の文章って一応三人称なんだが、実質的には一人称と変わらない。☆☆☆。
◆宮田昇『戦後「翻訳」風雲録』(本の雑誌社,2000)、読了。神格化されがちな福島正実、田村隆一を愛情あふれるしかしそれだけに流されない冷静さで描く。地味だが良い本。☆☆☆☆。
◆石原進吾名言集。「その人を想ってオナニーもできないような恋なんて、恋じゃないね」。ただし道具は使用してもよいです。男子はコンニャク、芯抜き茹でリンゴ。女子はシャワーの湯など風流です。
◆『地獄曼荼羅アシュラ』はインド映画。思わず観たくなるいいタイトルである。主人公の女性が金持ちの男にひとめぼれされる。相手にしないでいると、男の愛は反転して一気に憎悪へ。殺人犯の濡れ衣を着せられて、刑務所の中へ入れられてしまう女。出所してから、女のくどーい復讐劇が……。まずタイトルが出るまで三十分以上かかるのには驚いた。とにかく踊ってるし。しかも「野原で男に襲われたよーん」って強姦の歌でニコニコ踊ってるし。とにかくヘンな映画だが、でも喧嘩ばっかりしてる『ガキ帝国』をインド人が観たら「日本人、ちょっといかれてる」と思うだろうな。☆☆☆☆。
◆『ガキ帝国』を観る。傑作。☆☆☆☆☆
◆電車のなかでふと思い付いた名言。「その人を想ってオナニーもできないような恋なんて、恋じゃないね」。ただし道具は使用してもよいです。男子はコンニャク、芯抜き茹でリンゴ。女子はシャワーの湯など今の時期、風流です。
◆斎藤美奈子『読者は踊る』読了。確かにおもしろいんだが、読書ガイドとしての広がりはない。でも斎藤美奈子のくさし方はホントおもしろい。☆☆☆☆
◆二、三日前にテレビのニュース(安藤優子と木村太郎のやつ)で、早稲田大学で学生と職員が夜中に大乱闘というのがあった。新しく建てたサークル用の学生会館が、カードキーになっていて出入りが自由でない、しかも内部に監視カメラがついているという至極まっとうな理由で、大勢の学生が大学に抗議した。テレビのカメラは学生の「終電終わったからいる」とか「お祭りみたいだから」とかいう言葉のみ意図的に取り上げていた。それに対し安藤優子は「昔の学生運動とは随分違っていますねー」と揶揄。昔の学生運動がそんなに高尚なもんだったとは思えないけどねー。
◆監視カメラで思い出したけど、花火見物客が歩道橋で将棋倒しの惨事で、実は警察は、橋を監視できるカメラを設置していたという。これで分かるのは、監視カメラが監視される側の「安全」のためにあるんじゃないってことだ。権力側は監視カメラなどを設置するときの理由として、「安全」を挙げるが、そんなこと本気で考えちゃいない。「安全」のためと言えば、誰もが納得してしまうから言うだけで、どちらかというと、監視される我々ではなくて、監視者側の「安全」のためなんじゃないのかね。
◆佐野眞一『誰が「本」を殺すのか』(プレジデント社,2001)読了。版元、取次、書店、オンライン書店、編集者、書評、電子出版、その他エトセトラまで含め、複合的な視点で、本が売れない現況を分析。重鎮から若手まで様々な業界人へのインタビューが主軸になるのだが、インタビュー相手がことごとく男ばかり。生協の書評紙「本の花束」以外は男しか出てこない。本が死につつあるのなら、殺しているのは「男」じゃないのかと思った。ちなみに、生協の「本の花束」は書評だけでなく、それを読んで注文した読者へと本を届ける自前のシステムも持っている。絶版本は版元に掛け合って、復刊・重版を実現させている。これって、オンライン書店や復刊ドットコムを先取りしている。☆☆☆☆。
◆夕飯の買物がてら、大山のブックマートで、G=ヒコロウ『不死身探偵オルロック』、杉山亮『子どものことを子どもにきく』を。
◆杉山亮『子どものことを子どもにきく』(新潮社OH!文庫,2000)、読了。それにしても「OH!文庫」ってネーミングのセンス…… 父親が自分の息子にインタビューした本。これ、ありそうでなかった。目次をみると「1.<三歳の隆さん>神を語る 2.<四歳の隆さん> 仕事を語る」と、毎年一回十歳まで続く。大人の常識から外れた子どもの言葉を「子どもらしい新鮮さ」なんていって纏めた、「オリエンタリズム」(サイード)系の本はたくさんあるけど、この本は普通に自分の子どもにインタビュー、つまり対話しているのが新しい。目次に「神を語る」とか「仕事を語る」とかあるのは、ただ会話の流れで神や仕事の話になったわけで、始めからテーマを設定しているわけではない。本を読んでいて久々に笑ったのは、十歳時のインタビューで、たかし君は演劇部に入っている、今度、発表会をすることになった、「あきら(父)『ふうん、台本は?』/たかし(子)『はなしのこと? 自分たちで考える。』/あきら『へぇー、隆たち、なにやるの?』/たかし『うん。「みてこうもん」ていうの。』/あきら『く、く、くだらねー。』/たかし『これ盛田君が言いだしたんだ。』/あきら『隆は何の役?』/たかし『悪役。ごんすけっていうの。』/あきら『悪役? へぇー。』/たかし『でも、あとはみてこうもんと、すけべのすけさんと、おしりをかくさんと、おぎんなんだから、ごんすけが一番いいと思う。』」(181頁)。「みてこうもん」に続く次回作は「マッチョ売りの少年」。子どもってバカだよ。☆☆☆☆。
◆なぜか自転車がパンク。大山の百円ショップにパンク修理セットが売っていたなり、と思っていったら売りきれ。しょうがなく大山周辺を漫歩していたら、古本屋を発見。ちゃんと「黒っぽい本」も売っている。黒っぽい本というのは、神田あたりで売っているような、玄人筋の稀覯本などを指し、対して「白っぽい本」というのは、ブックオフで売っているような、まだ出版されて日の浅い本を指す古本屋用語なり。(株)新日本書籍大山店にて、山浦章『ご存知!!オタクの用心棒』、井坂洋子『マーマレード・デイズ』、『村野四郎詩集』を。あと欲しかったのは『ローザ・ルクセンブルク選集』、『尾崎翠全集』、晶文社の富山の薬売りの本、安彦麻理絵のエッセイ、つげ忠夫、治安維持法の取り調べ資料本、エトセトラ。
◆山浦章『ご存知!!オタクの用心棒』(FOX出版、発売・文苑堂東京店,2001)、読了。1992年に徳間から出た『オタクの用心棒』の再編集版。最近では、小野寺浩二『妄想戦士ヤマモト』に代表されるオタク・カリカチュアもの。オタクをバカにしつつも、きっちり愛情はある。ギャグとして対象化することでしか的確に表現できないオタクの自意識って、そうとう複雑なものだ。
☆☆☆☆。
◆マンガとビジュアルで構成された新創刊エロ雑誌(誌名は忘れた)を立ち読み。松本耳子がエッセイマンガを描いていて、耳子嬢、現役バリバリのキャバクラ嬢なのだ。これはマンガ家として強みだ。
◆板橋区中央図書館で、宮田昇『戦後「翻訳」風雲録』、荒川洋治『読書の階段』、『新青年傑作選(2)』、佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』、別役実『台詞の風景』を借りる。借りてなんていないで、自分で買った本を読めばいのだが…… どうもおいらは、本が好きというより、本が並んでいるのが好きなのだ。本棚を眺めていると、至福だ。だから本屋や古本屋や図書館についいってしまう。
◆メモ。3日から新宿京王百貨店、7日からそごう横浜店、9日から新宿伊勢丹で古本市。
◆井坂洋子『マーマレード・デイズ』(思潮社,1990)、読了。続けて二回繰り返して読んだ。井坂洋子は現代詩人の中でも飛びぬけてレヴェルが高く、しかも詩を読みなれない素人にもとっつきやすい。100頁ちょっとの本で11箇所も折目をつけてしまった。「ワンルームマンションにて」の一節。「私はしがない家事見習です/だれかのお嫁さんになるしか能がない/大義名分がないのです/よって近くのスーパーでレジのバイト/たまに会いに来ても/不満のかたまりだから/かわいい女なんかになれっこない/ねぇセンセイ/私の抱き心地はどうですか/能力のない女って安心できますか//かようにささくれだってしまう/私の頭を/彼は教科書でパンと叩いた」。この悪意。とくにセンセイと片仮名にするところ、にくいほど上手い。あとは「彼女自身」の全部。「冬の朝は戦闘機こそふさわしい/さみだれた/おそろしい色をしている/身のまわりの備品をあつめ/出発するときのこころに似て//彼女は/出掛けにストッキングを破いた/コインを床にばらまいた/かびんの花を倒した/靴のまま/机の上の鍵をとりに戻った/彼女はまだ世界と和解したくない/気の許せぬうちに/すばやくなし遂げてしまいたいのだ//ともだちはいないので脇は唾して通り/溜息からさめたばかりの頭で/時間をはじきながら/美しい人たちの/にこやかな会釈を追い越していく」。写していて、ほれぼれとする。☆☆☆☆☆。
◆杉本春生編『村野四郎詩集』(旺文社文庫,1973)、読了。また「目覚ましテレビ」が始まってしまった。完璧に昼夜が逆転している。これ、ひとつひとつの詩にいちいち編者の解釈がついていてうっとおしい、というか絶賛の嵐でちょっと気持ち悪い。読まなければいいんだが、あるとつい読んでしまう。旺文社文庫って全部こうなの? ありがた迷惑だよ。村野四郎って始めて読んだけど、「ぼくたちは自分の脂で煮つめられ/自分の脂に浮いていた/眼をあけたまま/錫びきの罐に密閉されて――/何の音も聞こえなかった」(「魚における虚無」)と自らを冷静に見ていながら、書いている詩は相変わらず「自分の脂」を煮詰めているだけなんだ。戦後詩のある種の「重さ」というのは、つまりこの脂にすぎないのではないか。でも、「一日になんど死をかんがえるのだ/怯懦者(ひきょうもの)よ/おまえの胸に/人世(このよ)の桔橋(はねばし)をあげる錘でもあるというのか/わたってゆけ わたってゆけ/退屈なおとを立てて――」(「桔橋」)なんて好きだけれど。この詩人のキャリアの中では『体操詩集』だけが異質で、主観的な感情を極力排している。例えば「飛込(一)」。「花のように雲たちの衣装が開く/水の反射が/あなたの裸体に縞をつける/あなたは遂に飛びだした/筋肉ので翅で/目に焦げた小さい蜂よ/あなたは花に向って落ち/つき刺さるようにもぐりこんだ/軈(やが)て あちらの花のかげから/あなたは出てくる/液体に濡れて/さも重たそうに」。『体操詩集』は全く脂が浮いていなくて美しい。☆☆☆☆。
◆「女子だけが集められた日パラシュート部隊のように膝を抱えて」「負けたとは思ってないわシャツはだけかさぶたみたいな乳首曝しても」(飯田有子『林檎貫通式』ブックパーク,2001)。荻原裕幸、加藤治郎、穂村弘が発行人のメールマガジン「@LAETITIA」を楽しみにしている。デザインが良いし、読み応えがある。31日発行の11号では、飯田有子のオンデマンド出版された歌集『林檎貫通式』(→購入)が取り上げられていて、上の二首に目が止まった。「パラシュート部隊」のほうは、思春期のとまどい、「かさぶたみたいな乳首」のほうは、押し付けられた女性性を逆手にとって撥ね返していこうとする気迫。それにしても「パラシュート部隊」という語の選択は上手いと思う。
◆横で寝ているKの耳元で「しめじ、しめじ」と囁いていたのだが、しめじの夢はみなかったらしい。Kのほうは「ちんげ、ちんげ」とおいらの耳元で囁いていたらしいのだが、ちんげの夢は見なかった。
◆宇宙人側と地球人側に分かれて、二人でファースト・コンタクトごっこをやってみたが、あまり盛り上がらなかった。
◆現代風俗研究会編『現代風俗'98-99 不健康の快楽・健康の憂鬱』(河出書房新社,1998)、読了。「健康」に比べて「不健康」はないがしろにされているんじゃないか、ちょっと「不健康」について考えてみようという本。京大会館で「不健康勉強会」と掲示していたら、会館の人が「ちゃんと」考えて、不を勝手に取ってしまったらしい。まず恒例/高齢の鶴見俊輔インタビュー。「戦争中、昭和十五、六、七、八年、私にとって大変な力付けを与えていたのは、永井荷風が、何にも書かなくても、東京のどこかに生きているっていう事実なんですよ(……)荷風がいる、今も阿部定がいるかもしれない。(……)阿部定が健康だなんて誰も言わないでしょう。つまり不健康を守るしかない私にとって、さらに激烈な不健康の象徴、それを担っているのが阿部定なんです」(20頁)。「不健康を守るしかない私」ってフレーズ、ちょっと勇気付けられる。藤本憲一「匿名・雑音・寄生」は、寄生というと悪いイメージがあるが、そうじゃない。寄生的な生き方があってもいいじゃない、と乱暴に要約するとそう言っている。おもしろいのは「不健康なケーキの食べ方」で、ケーキバイキングというのはかなり不健康じゃないかと言っている。そういわれればそうだ。新薬治験バイト研究は興味深く読んだ。やろうかと思っていたので。よくネット上で「新薬実験バイト情報売ります」と売られているが、あれに騙されちゃいけない。検索かければ自力で探せるのだ。そういえば、三浦俊彦はサプリメントを飲みまくっているが、あれは健康なのか不健康なのか? もはや健康不健康を超えて、訳わからないことになっていないか。(目次・斉藤光「不健康という視点」、鶴見俊輔「健康・不健康」、多田道太郎「ぼくの『健康食』状況」、世相研究会「健康の売り方〜新薬治験バイト研究」、歯磨き隊の会「さまざまな健康〜ハミガキをとおして」、路地裏探検隊「石切周辺探索記」、浅野貴子「献血中毒者の『血と薔薇の日々』」、山田真澄「昼酒飲みたちの生態観察」、十川典子「不健康なケーキの食べ方」、清水健史「カフン病な私」、岡村正史「私の不健康自慢」、辻光明「不健全・不健康でも、快適で元気がいい」、澤田昌人「マラリア情報ネットワークから見えてきたこと」、藤本憲一「匿名・雑音・寄生」、畠麻美「あなたの見えない隣人『寄生虫』」、水木潤「身長をはかる」、辻伸子「素顔の行方」、斉藤光「バンコクのカップル」、神原理「広告の中の健康像」)。☆☆☆☆。
◆尾花ゆきみ『海の星』(原生林,1998)、読了。『水花姫』(太田出版,1992)の続編。続編が出ているとは知らなかったのだが、帰省中に偶然見つけた。原生林という出版社は聞いたことないな。我ながらよく見つけたと思う。前作では、主人公の少女が孤児になって養護施設へ辿り着いて終わった。今回は、クラスメイトの男子が、話したこともないのに、少女の名前を遺書に書いて首吊り自殺してしまう、というのがはじまり。この出だしのエピソードは上手いと思う。☆☆☆☆。
◆中島らも『今夜、すべてのバーで』(講談社,1991)を朝方読了。ドラッグが絡むと、らもの筆は冴えまくる。向こうにはバロウズがいるが、こっちにゃ、らもがいる。
☆☆☆☆。