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サトウトシキ
1961年、福島生まれ。
1989年、「獣−けだもの−」で監督デビュー。
日常を舞台としたウェルメイドな作風ながらも、深いテーマを感じさせる作品を次々と発表。
1995年、ロッテルダム映画祭で「痴漢電車人妻篇 奥様は痴女」が上映される。
1996年、モンキータウンプロダクション設立。
OV、一般映画の監督、さらにプロデュースなどをてがける。
劇場公開作品(「 」は公開題)
- 『夢の女』
「獣 −けだもの−」
脚・小林宏一 出・朝吹麻耶,中根徹,伊藤清美 1989年3月公開
未見
- 『鍵のある風景』
「Eカップ本番U 豊熟」
脚・小林宏一 出・藤沙月,中根徹,井上あんり,夢恋次郎 1989年5月公開
今は亡き文芸座のサトウトシキ特集で観る。
- 『おいしい水の作り方』
「田代水絵 ザ・本番アクメ」
脚・小林宏一 出・田代水絵,伊藤舞,江藤保徳,中根徹 1989年8月公開
サトウ監督の中では異色作だろう。ベッケットを思わせる。
- 『禁止区域』
「ぐしょ濡れ全身愛撫」
脚・小林宏一 出・杉本笑,中根徹,早瀬美奈,加藤康夫 1990年2月公開
未見
- 『ヨシワラ』
「最新ソープテクニック2 泡姫御殿」
脚・サトウトシキ 出・小川さおり,下元史朗,田代美希 1990年8月公開
男[下元史朗]が逃げた妻[小川さおり]を捜して風俗街にやってくる。結局ラストで妻は「待っていたのよ」と男に言う。監督が内容を対象化していなくて、はっきりいって失敗作だと思うが、ラストシーンの絵は良かった。街並みを撮るのがすごくうまい。例えば『ザ・投稿ビデオ』で描かれた歌舞伎町が最たる例。
- 『異常者たちの夜』
「過激本番ショー 異常者たちの夜」
脚・小林宏一 出・芹沢里緒,吉田春兎,上山洋子,清水大敬 1990年12月公開
ビデオだとタイトルの出し方が違うのね。テレビのテロップみたい。
都庁が建つことによって生じた影響が描かれている。
別れの場面のスローモーション秀逸。さりげない日常性の描き方もいい。
最後に拳銃で皆殺しにする主人公。この誰もが持つ暴力性は、サトウ監督の映画の随所に見られる。
ラストは主人公が死姦して自殺して都庁に弾丸が撃ち込まれる。
この映画の吉田春兎のキャラクターは「悶絶本番 ぶちこむ!」(原題『Like a Rolling Stone』)へと結実する。
タイトルに「異常者たち」とあるが、描かれているのはいわゆる普通の現代人だ。普通の人こそ精神病者なのだ。それに気づいたフロイトはやはり偉大だ。
サトウトシキ監督の映画はやたらと食べるシーンが多いような気がする。
古い『ビデオボーイ』(この雑誌のビデオ・映画評が一番おもしろいし読み応えがあると思う)をめくってたら、『アタシはジュース』についてのテクストの中で「悶絶本番」について触れられていた。
本作(引用者註『アタシはジュース』)では役者が演技しすぎで人間関係が平板になってしまった感があるが、サトウ監督に興味を持ったらピンクの大傑作「悶絶本番 ぶちこむ!」も見るべし。タイトルとは裏腹に欠落感を抱えた若者同士の共感とスレ違いを描いた90年代最高の青春映画だ。
すごい誉めようだがその通りなのだ。
ちなみにオイラは文芸座と亀有名画座で2回観てるが全然退屈しなかった。転がってく若者の話で、特にドラマティックという訳ではないが傑作だ。現代のマンガが描く若者の持つやるせなさや欠落感を映像で描けた唯一の映画だろう。よしもとよしとも『青い車』とか好きな人には是非見てほしい。こういうのがホントの映画だよな。テレビ局製作のガイ◯チ映画(例『ヒーローインタビュー』『7月7日、晴れ』。最近だと『流れ板?人(忘れた。何人でもいいわい!!)』etc.)なんて見てる場合じゃないんだよ、ほんと。
- 『第三話「趣味」』
「ザッツ変態テインメント異常SEX大全集」
脚・サトウトシキ 出・絵美,石井徹,山科薫,タック西川 1991年4月公開
未見
- 『古川敏夫の遅すぎた青春』
「アブノーマル・エクスタシー」
脚・小林宏一 出・麻倉みお,杉浦峰夫,江藤保徳,伊藤舞 1991年11月公開
未見
- 『ザ・投稿ビデオ』
「特別生企画 ザ・投稿ビデオ」
脚・小林宏一 出・秋山まり子,杉浦峰夫,岸加奈子,江藤保徳 1992年6月公開
投稿ビデオ販売のために自分のプライバシーまでも売ってしまった男が愛に目覚める映画。
ラストのガソリンスタンド店員の笑顔のストップモーションの素晴らしといったら!!!
- 『単純な話』
「不倫妻の性 快楽あさり」
脚・小林宏一 出・岸加奈子,栗原早紀,杉浦峰夫,江藤保徳 1992年8月公開
ちょっとスプラーッターはいっていて、激しい映画。おもしろい。
- 『セックスと会話と通勤電車』
「痴漢通勤電車 OLたちの性」
脚・小林宏一 出・伊藤舞,紀野真人,高樹麗 1993年4月公開
- 『ナオミ』
「ペッティング・レズ 性感帯」
脚・小林宏一 出・林由美香,ゐろはに京子,紀野真人 1993年10月公開 - これはもうめちゃくちゃおもしろい。文芸座でみたときは場内爆笑だった。物語の先が読めない。しかも画面もめちゃ美しい。ラストの色の鮮やかさ!!
サトウ作品の中で一番好きかもしれない。
- 『タンデム』
「痴漢電車OL篇 奥様は恥女」
脚・小林宏一 出・清水大敬,紀野真人,葉月蛍,扇まや 1994年4月公開
おもしろおかしく切ないロード・ムービー。傑作。
- 『「明日のジョー」は生きてるさ』
「のぞきがいっぱい 愛人の生下着」
脚・南極1号(瀬々敬久) 出・林田ちなみ,小島康志,葉月螢 1994年7月公開
ジョギング途中にぶつかった男の落としたライターと煙草を届けにいくとそこではその男と葉月蛍がSMプレイをしていた。それを覗く主人公。流されるまま抵抗もなく生きている主人公。葉月蛍と男の情事が男の奥さんにばれる。逃げ出した彼女が橋から飛び降りるところに偶然出くわす主人公。抱いてという彼女をいったんだきしめるが「違うんだ」と離れる。「あの男とは別れたほうがいいよ」「わたし幸せになりたいんです」。主人公は妻と愛人と一緒に暮らす。しかも二人とも妊娠する。そんな生活に耐えられなくなり、葉月蛍の家へ。「ジョーは勝ったのだろうか」。彼女を強姦してしまう主人公。やがて彼女の新しい恋人が帰ってきてベランダへ隠れるが見つかってしまう。ベランダから飛び降りる主人公。なんとか生きている。明日のジョーのテーマを歌いながら道路を歩いていく主人公。
この手のおとなしくて現代的(というのだろうか)で受動的な性格の主人公はサトウ作品ではしばしば目に付く。例えば『異常者たちの夜』とか『like a rolling stone』とか。前者は最後に爆発する。後者はどうだったっけ。2回観てるのに忘れるとは。日常的な映画は切れ切れのシーンしか思い浮かばない。ストーリーは忘れてしまう。オイラは記憶力が悪いのだ。社会は赤点だったし。
- 『Like a Rolling Stone』
「悶絶本番 ぶちこむ!!」
脚・立花信次(福間健二) 出・葉月螢,本田菊夫,南口るみね 1995年2月公開
もう2、3回見ているような気がするが、それほどドラマチックなわけではないのに見ていて飽きない。葉月蛍の笑わない女が良い。
セックスを描きながらもそれに伴う時代感や雰囲気や人間関係や閉塞や怠惰やネガティブさやポシティブさや「何か」を描いている。
- 『LUNATIC』
脚・小林政広 出・安原麗子,吹越満,北村康,小木茂光 1996年6月公開
未見
- 『アタシはジュース』
脚・樽谷春緒,小川智子 出・秋本奈緒美,小沢なつき,北村康,小木茂光 1996年6月公開
小沢なつきといえば浦沢義雄の脚本もよかった『ちゅうかなぱいぱい』だ。
この映画はあまりピンとこなかった。
- 『不倫日記 濡れたままもう一度』
脚・小林政広 出・葉月螢、伊藤猛、泉由紀子、佐野和宏 1996年7月公開
'96/12/21 文芸座にて。
どんでん返しの連続で観客が困惑してると、いつのまにかラストでなぜだかしみじみしてしまう。
音楽がすばらしい。
キネ旬のピンク映画評のストーリー解説を読んでいたので、ストーリーのおかしさが半減してしまった。といわけで粗筋は書かない。
サトウ監督の映画のラストはしみじみする。『Like a rolling stone』もそうだ。
トークショーで「葉月蛍についてどう思うか」という質問に「いい女なんじゃないですか、なんてバカなこといったりして(笑)」と答えていた。
池袋シネマセレサにて。二回目。
E-toneの音楽が素晴らしい。
葉月蛍嬢は浮き世離れした雰囲気があるので、幽霊役にも違和感がない。
ラスト近くの、二人が電車にあらわれる前の無人の席を撮ったカットがとても好きだ。
とても一時間で語られているとは思えないほど饒舌な物語。だいたいピンク映画というのは一時間と一般映画よりかなり短いが、一般映画以上の物語を含んでいる。
1996年度ピンク大賞第一位。
- 『夢の後始末』
「赤い犯行 夢の後始末」
脚・小林政広 出・町田康,佐野和宏,葉月蛍 1997年月公開
映画監督が主人公の一種のメタ映画。ラストの長回しの木々と陽が泣ける。ロマンチックだなぁ。うまいなぁ。映画は情熱だ。
情熱はカメラの向こうにある。
オリジナルビデオ
- 『赤い報告書2 密室淫戯』
脚・佐藤俊鬼 出・
売春は危険だ。だって素性のわかんない人と密室で過ごすんだから。男がサド趣味だったり切腹マニアだったり首締め趣味だったりちょっとあぶない人だったりしたらどうすんだ? 外見じゃ判断できないぞ。
今の女子高生も売春やるのはいいけど、ちょっと危険対策に気をくばってね。
- 『赤い報告書2 密室淫戯』
脚・佐藤俊鬼 出・
フィルム撮りと違って、ビデオ撮りのホラーはなんとも言いようのない閉塞感をかもし出しますな。(cf.『ギニーピッグ』)。
現実を疑うということ。そうさせなくしてしまうのが宗教の力の恐ろしさですな。
中野貴雄の美術はさすが凝ってますな。このグロさは後の「不倫妻の性 快楽あさり」(原題『単純な話』)という傑作へと繋がっていくのですな。
- 『闘龍伝/闘龍伝2』
脚・こがねみどり 出・馳浩,大和武士,藤原喜明,森永奈緒美 1995年2月/6月
未見
- 『河原崎家の一族』
脚・小林政広 出・井上知子,松永博史,佐野和宏,岸加奈子 1996年6月
未見
link
ピンク映画寸評(2):『不倫日記 濡れたままもう一度』
映画日誌1996年12月〜:『わたしはジュース』
Cycro -Review-:『LUNATIC』
参考資料
『P・G』no.27
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