◆ビデオ返却とサイクリングがてら、ぽんぽん船天王町店で、リンドグレーン『ピッピ船に乗る』『名探偵カッレくん』(LSdの日記を読んでいたら、無性にピッピが読みたくなって。)、安達哲『ホワイトアルバム(1)(2)』、大和和紀『ヨコハマ物語(1)』、池沢理美『チャリン娘グラフィティ』、くらもちふさこ『A-Girl』、矢追町成増『監禁遊戯』、塚本那美由『東京ガール』。その近くの小さな古本屋の店頭百円均一で、やまだないと『王様とボク』、庵野秀明『スキゾ/パラノ・エヴァンゲリオン』、星里もちる『かくてるポニーテール』、水上硯『マイペースな人々』、戸川純『樹液すする、私は虫の女』、阿部和重『ABC戦争』、別冊宝島『性メディアの50年』、『ニューフェミニズムレヴュー〜ポルノグラフィー』。なんかあまりにアレで、書いてて恥ずかしくなってきた。
◆夜、これの打ち上げで鍋。梅酒ソーダを飲み過ぎた。ある女性と少女マンガとか西炯子とかについて話す。いや発端は榛野なな恵の『卒業式』を私が前に彼女に薦めて、彼女はそれを読んで女子校時代を思い出したというようなことを話していた。で、話は飛んで(どう繋がったのか酔っ払ってて覚えてない)、最近少女漫画を読まなくなった理由を彼女が説明。むかしは、本当の自分と演技している自分がいた。前者から生ずる悩み(例えば、結婚して専業主婦になんかなりたくないとか?)を少女マンガが引き受けていたが、さいきんは人の目を気にしなくなり、演技もしなくなった。前者と後者の距離が縮まり、そうなるとマンガも読まなくなったと。で、これを聞いて思ったのは、女性ならば、例えば結婚しなければならないというようなイデオロギーの重圧で、どこかで挫折を経験するが、男の場合、そのような挫折があまりない。ということは、そのような挫折から生じる悩みがない、ということは本当の自分云々の意識があまりない。少女マンガが自意識を扱い、少年マンガがそうでないという違いはそこにあるのではないか。って、この日記はメモみたいなもので、読者にとっては訳のわからない記述が多いだろうが、勘弁。しかし、こんな日記を読んでくれている人が何人いるのかね。
◆やっと『スピリッツ』の「いいひと。」が終わる。「いいひと。」で描かれたようなヒューマニティがどれほどの愚行を生み出してきたか。いいことをいいことだと思ってするほど悪い奴はいないんだよ。
◆バイト終わって、バイト先の子と二人で、横浜のまんが喫茶まんがランドへ。品揃え悪し。いちばんどうしょうもないのは、有線がかかっていること。さらに中谷彰宏の本が全て置いてある。センス悪すぎ。おかし食べ放題というのも、ちゃちなビスケットが置いてあるだけ。ここ、そのうち潰れるだろう。
◆手塚治虫『ロック冒険記(全三巻)』。 みなし子が疑似的に家族をつくるという物語を手塚治虫が執拗に反復しているのはどういうわけなんだろうか。悪役になるまえのロックはやけに色っぽい。
◆安野モヨコ『ハッピーマニア(1)』。 つまらん。男性の女性に対する幻想を裏返したにすぎん。主人公の女性をがどんなことをしても、彼女に恋するタカハシが優しく見守っている、というような構図は醜悪でさえある。
◆関川夏央・谷口ジロー『坊っちゃんの時代(1)(2)』。 タイトル違うかも。関川夏央によると、現在の我々のいろんな苦悩は、すでに明治の知識人に先取りされているそうで、これは、一部当たっているが一部は間違っている。なぜなら、明治と違い、現在では「目指すべき西洋」という価値観が崩壊して、我々は、絶えざる相対化にさらされている。そのような悩みは明治人にはなかった。で、現代において、庵野秀明が『新世紀エヴァンゲリオン』で示したのはそういう問題だったと思うのだが、庵野のような悩みは、金子光晴に先取りされている(金子光晴『詩人』参照)。ということは、金子光晴の時代には、もう「目指すべき西洋」という価値観が崩壊しかかっていたということか、などと連想を重ねていると、もう二時間。結局、6冊しか読めなかった。800円。なんか損したような気分。
◆全冊百円ぽんぽん船で、出久根達郎『漱石を売る』、橋本治『窯変源氏物語(1)』、柳沢きみお『ソーイング(1)~(8)』、安藤昇『あげまん入門』、殿山泰司『全国女地図』。六角橋商店街、鉄塔書院で、上連雀三平『アナルジャスティス』、かるま龍狼『シノビノサクラ』。
◆さいきん、柳沢きみおが気になる。『飛んだカップル』は少女マンガを取り入れてラブコメを少年誌に確立した 画期的な作品だし、『妻をめとらば』のラストの壮絶さはどうだ。
◆『美姉妹色情飼育』監・松岡邦彦。 瀬々敬久脚本。とつぜん下宿することになった一人の男をめぐって姉妹が葛藤する、よくある同居ものだが、ところどころ、良い映像がある。常套的なカメラワークが多いのは気になったが、わざとなのかもしれない。ラスト、走りながら振り向く姉が印象に残る。このラストは瀬々らしくて上手い。
◆『インフィニティ』監・犬童一心。 広末主演、原将人監督『二十世紀ノスタルジア』のメイキング。広末映像の中でもベスト。終わりの「わたしたちは映画をつくった」という広末のナレーションで、これが、『おかしさに彩られた悲しみのバラード』へのオマージュになっていることにも気付く。
◆書き忘れていたが、数日前、検察庁から出頭命令の葉書が来た。出頭理由も何も書いて無くて、ただ「何日の何時に来い」と書いてあるだけ。「何だろう。やっぱりこの前の自転車関係だろうか。それとも他のことか。他に悪いことしてないよな」と自問自答を繰り返してしまう。こういうふうに自己確認を強要するのが権力の怖さなのだと、たしか、アルチュセールが書いていたな、と権力作用を実感しつつ、今日、神奈川区検察庁へ。「言いたくないことは言わなくてよい権利があります」と黙秘権について言われた時は、まるでドラマみていだな、と思った。「なんで自転車盗んだんだ」と聞かれたので、「買うと高いから」と答えたら、「高い安いの問題じゃないだろう」と言われたが、しかし、世の中、高い安いの問題が全てのような気もしたのだけれど、素直に反省の色を演出し、誓約書に捺印。しかしなぁ、例えば、どうみてもスクラップの捨てられている自転車を、自分で直して乗るって、そんなに悪いことなんだろうか。
◆ぽんぽん船。さそうあきら『拳骨』、あきの香奈『保健室の美知子先生』、萩尾望都『フラワーフェスティバル(1)(2)』『トーマの心臓(2)』『ゴールデンライラック』、バロン吉元『小さな巨人(2)』。東神奈川駅前のリサイクルブック・ミッキー。『青い空を白い雲がかけてった(3)』、榛野なな恵『ビッグキッドブルース/パイナップル・モーニング』。図書館、『外国人労働者の就労実態』、高木アキ光『刺青殺人事件』。
◆さそうあきら『拳骨〜高校殴られ男下剋上』小学館ヤングサンデーCOMICS,1996.。 タイトルだけみるとケンカマンガのようだが、さそうあきらが単純な不良ケンカものを描くわけがない。
主人公の少年は底辺高校に通う。体罰・教師同士の不倫、旅行会社からのリベートをもらう老教師。生徒は生徒で欝屈し、学校全体が閉塞している。主人公は妹と病気の母をかかえ、さらに、不良グループからいじめられている。彼が学校から抜け出し、別人になるまでの物語だが、さそうあきらの描く物語は、そんなに簡単に要約できるほど単純ではない。
別人になった少年を、以前から彼のことが気になっていた少女が訪ねる。「僕、キミ知らないよ」と彼は言う。彼女は「平気なのか皆に忘れられて、お母さんや妹も捨てて」。結局ふたりはそのまま別れるのだが、互いに互いの記憶で繋っている。遠く離れていても「私はあなたを憶えている」という記憶で繋がっている。こういうシチュエーションには泣けてしまうのだ。
◆『修羅の狼〜蜘蛛の瞳』監・黒沢清。 『HANA-BI』なんかより、こっちのほうがよっぽどおもしろい。近頃の黒沢清はもの凄い。とくに、ダンカンの若い仲間二人が殺されるシーンと、ラスト。震える。
◆午前中バイト。その帰りに古本屋ぽんぽん船で、倉多江美『静粛に、天才ただいま勉強中(4)〜(6)』(あと(7)(9)で全て揃う)、西炯子『ローズメリーホテル(1)』、こなみ詔子『コインロッカーのネジ(1)』、飯田耕一郎『婀キュウ昇伝』、吉村明美『麒麟館グラフィティー(2)』、色川武大『引越貧乏』、沢木耕太郎『紙のライオン』、江戸川乱歩『大暗室』、山本夏彦『冷暖房ナシ』、P・J・オローク『ろくでもない生活』。店内どれでも百円なので、ついつい。サンリオ文庫も百円。でも『ガープの世界』くらいしかないんだ。
◆『サザエさん』を見たら、劇伴の音楽が変わっていた。
◆色川武大『虫喰仙次』福武文庫,1989.。 自分を見たような記述があった。「何事によらず直になることが恐い。直になろうとする気持を微塵に砕いて、半端に、雑多にしていき、そうすることでバランスに近いものをとろうとする。小学生の頃から私は学業以外の雑多なものにばかり眼を向けていたが、しかしその雑多世界を話題にしても私なりの身の向け方というものがあって、他の級友たちと話を交わすことができなかった。私は私自身としかしゃべることができず、私の勉強部屋はそんなふうなモノローグの要素で満ちていた。そしてまたそういう私自身を強く恥じてもいた」。最後の「恥じていた」という部分は、オイラのホームページのタイトル「良かれ悪しかれ(良かれ悪しかれ)」にも現われていて、要するに、いわゆるサブカル的なものに浸りきっている自分のことを、「良い」とも「悪い」とも、いや、どちらかというと、「悪い」と思っている。(だから意外と思われるかもしれないが、『クイックジャパン』は一冊も持っていないし、例えば、いま売ってる『H』(松本大洋、南Q太、冬野さほをオシャレに纏めている)を買うのは恥ずかしい。)今の所、そういう中途半端な自分と付き合っていかなけりゃなるまい。いつか、どちらかに開き直ってしまうときがくるのだろうか。
◆『COMIC快楽天』12月号 VOL.40 ワニマガジン社。 久々に買ってゆっくり読んだ。美少女マンガ誌にしてはエロが緩いかもしれないが、内容にバラエティがあって、おもしろい。エロマンガを全く読んだことのない人にもお薦めできる。玉置勉強のヒネリも良いが、一番グっときたのは、松本耳子の絵。宮崎駿系といおうか。この絵にはまいった。めちゃめちゃツボをつかれた。松本耳子が載るなら『快楽天』買い続ける。かるま龍狼「邪天使グニュプちゃん」に、家族で乱交するような家庭が出てくる。アンモラルな家庭とか、家庭崩壊物語への欲望は自分の中にずーっと付きまとっている。小学生のとき、荒木飛呂彦『魔少年ビーティー』収録の、家を乗っ取られる話に昂奮して以来。『魔少年ビーティー』は衝撃的におもしろかったよなぁ。クラスじゃあまり人気なかったけど。
◆やまむらはじめ『トライエック』大都社,1998.。 表題作はどうということもないが、短編は切れ味よし。短編集が出たら買うだろう。
◆新体操会社『ICBM』大陸書房,1987。 「ICBM」は、International Cannon Ball Mangaの略。政治性をおちょくりまくり。表紙から裏表紙まで遊びまくっている。
◆中島小夜子のアダルトビデオ『ビーバップ・セーラー服』借りる。コンビニでエロ劇画誌を数冊読む。羽中ルイの神経症的ともいえるこだわり。なぜああまで乳輪にブツブツを書き込まねばならないのか。
◆鳩山郁子『青い菊』青林工芸舎,1998。 初版のみ蔵書票つき。非常に上品で凝った作りの本。これは買って損はないと思う。いまさらタルホの影響云々なんてここで書いてもしょうがない。どちらかというと少年マンガの文法で描かれているが、少女マンガに近い。丁寧に描かれた風景。物語や画の完成度も高く、力作。今年のベスト5には入る単行本。
◆新田たつお『満点ジャック(5)』実業之日本社,1985。 新田たつおのギャグ作品はめちゃくちゃおもろい。このおもしろさを文章で伝えるのは難しい。
◆『永井豪〜けっこうランド』マガジン・マガジン,1998。 『JUNE』を発行してるマガジン・マガジンが、なぜか永井豪のムック本を。非常にお手軽な編集というか、雑誌のインタビューや『JUNE』の読者投稿などを再編集してるだけで、あとは永井豪のいくつかのマンガが1話ずつ載っている。目玉は西炯子の描く「けっこう仮面」。『アキラ』のパロディまで披露。そしてオリジナルよりいやらしい。素晴らしい。これを読むために千円払ったようなもんだ。
◆『別冊ヤングジャンプ』VOL.5 1998.12/5増刊。 印象に残ったのをいくつか。野口堅「ソリッド」特殊訓練を受けた少年が、ヤクザに捕われた少女を救う。うまい。田埜哲文・堀口純男「オセロ物語」はオセオを作った長谷川五郎の伝記。武富智「若奥様のオナ日記」青年マンガ大賞佳作作家。瞳の描き方が新しい。若奥様と男子中学生の恋愛。男の子の表情が豊か。単行本を出せるまで描き続けて欲しい新人。佐藤コア「コミックトラッキン」は四コマのなかでは一番おもしろかった。仲村清「おにく」編集部愕然驚異の新人という煽りの割にはつまらなかったが、みるべき所は少しある。鈴野莉花「パーフェクト・ラヴ」二段階のオチに力を感じる。今のところ無難にまとめているが、画力も話を作る力もあるのだから、もっとぶっちぎれたものを描いてほしい。田村カツピロ「ボンビーボンビー」悲しすぎる貧乏。
◆『週間ヤングサンデー』NO.49。 喜国雅彦「日本一の男の魂」がおもしろかった。あと、織田吉郎・藤原芳秀「コンデ・コマ」は『空手バカ一代』を思わせる格闘成長ものでコンスタントにおもしろい。新井英樹「The World is Mine」はヒグマドンが容赦なく暴れる。この迫力はマンガでしか表現できまい。
◆『モーニング』NO.49。 一番楽しみにしてるのが、野中英次「ドリーム職人」毎回毎回笑わせてくれる。吉田戦車「油断ちゃんラグジュアリー」「大根のジェームス・ボンド煮」とかいう言葉をよく思いつくなと感心する。さだやす圭「ダニ」は主人公が正義の味方になってしまってつまらなくなった。尾瀬あきら「奈津の蔵」過去を現在の価値観から照射しているので、説教くさい。こういう描き方は間違っていると思う。
◆『ヤングキングアワーズ』。
◆横浜まんがの森。『快楽天』、やまむらはじめ『ドライエック』、牛乳リンダ『きつねとまほうつかい』、『永井豪けっこうランド』、鳩山郁子『青い菊』。その近くのぽんぽん船はいつのまにか全品百円に。新田たつお『満点ジャック(5)』、望月花梨『コナコナチョウチョウ』、大野安之『That's!イズミ(2)』、新体操会社『ICBM』、やまだ紫『性悪猫』、竹熊健太郎・羽生生純『ファミ通のアレ(仮題)(3)』、色川武大『虫喰仙次』。
◆望月花梨『コナコナチョウチョウ』白泉社花とゆめCOMICS,1994。 表紙の気丈そうな少女の画が素晴らしい。 まだ二冊しか読んでないが、望月花梨の作品の暗さは、少女マンガの中でも随一ではないか。収録作はどれも佳品だが、近親相姦的な「泥沼ノ子供タチ」の、「兄はいつものように家を出てそれっきり帰りませんでした」のコマで表現された、とり残される妹の喪失感や、「私たちはこれからどんな生き方をするのだろう」というラストの青臭さに惹かれる。
女子中学生の自閉と開放を描いた表題作は松本充代の初期を思わせる。
◆牛乳リンダ『きつねとまほうつかい』松文館別冊エースファイブコミックス,1998。 ショタだが、途中までショタだと気付かなかった。線が生き生きとしていて、カラミもいやらしい。展開のテンポも軽やかで、マンガの楽しさを再発見させてくれた。なにより作者が楽しんで描いている気分が伝わってくる。
◆体調悪いが自転車でふらふら。 未知の道を走るのって、なんて楽しいんだろう。で、初めて入ったビデオ屋で、中島小夜子の『ビーバップセーラー服2』を発見。なんと!! 前から探していて、もうあきらめかけていた物がこんなにスっと見つかってしまうとは!!
◆横浜駅近くのD-BOOKSで、松葉商人『シャンポンマツバ』と、同人誌、SYSTEM GIZZY『Sorely』を。同人誌は背表紙がないので検索が難しい。ので、適当に棚から引き出していたら、これが目について、その表紙の絵に惹かれて買ってしまった。で、しばらく行ってなかった、『母娘監禁・牝』『XYZマーダーズ』『薔薇の葬列』『ドグラマグラ』とか置いてある、結構マニアックな品ぞろえのレンタルビデオ屋(横浜ビデオサービス)に、『エヴァンゲリオン』とか『うる星やつら』の同人エロアニメが入荷していた。こんなん入れるか普通!! あとで借りよう。『ルイーズとケリー』『クワイエット・ルーム』と一緒に。
◆渋谷、道玄坂のラブホテル。真っ昼間ながら満室が多い。なんとか二時間3900円の所へ滑りこむ。ゲームがやり放題なのは良いが、スキスキスキーとか高橋名人の冒険島とか。時代が86年のままストップしているのがいい味を出している。有線で稲川淳二の恐い話を聞きつつ、二回いたす。
◆タワーレコードで、ロバート・ワイアット『Nothing can stop us』、タージ・マハル旅行団『Augaust 1974』。小杉の『バイオリン・インプロヴィゼーション』か、グループ音楽のCDもあれば買おうと思ったが、なかった。『変玉』で紹介されていたBLOOD AXISやAIN SOPHもなかった。前から思っていたが、タワーレコード品揃え悪し。欲しいCDが必ずない。もはや総合的なCD屋なんて不可能なのかもしれん。
◆入学以来ほとんど品揃えが変わっていない近所の古本屋。中野純子『乙女アルバム』、桐島いつみ『イッパツの女』、清水玲子『竜の眠る星(2)~(5)』『ミルキーウェイ』。よく調べたら『ミルキーウェイ』は持っていた。欲しい人がいたら贈呈します。
最近、だぶって買ってしまうことが多いので、マンガに限って所持リストを作りはじめたが、早々と挫折する。できないことはないが、とにかく、時間の無駄だ。
◆『ビッグコミックスピリッツ』no.48。 新連載、村上かつら「いごこちのいい場所」。展開が読めてしまうが、意味深なタイトルに期待しつつもどちらかというと「いごこちの悪い場所」へと辿り着いて欲しい。ラフな絵柄は良い。単行本化するときには過去二作も合わせて収録してほしいもんだ。石川優吾「よいこ」おもろい。アニメ化されるらしい。小林信也・秋重学「宙舞」尻すぼみに終わってしまいそうな予感。二人で閉塞せず、もっと「外部」を取り入れたほうが良くなるのでは。伊藤潤二「うずまき」主人公は恐怖を経験するけれども、最後には脱出する。恐怖の傍観者というのが伊藤潤二の主人公の特徴であって、だから、主人公=読者となる。これは古典的な手法なのだが、伊藤潤二の場合、同時に、物語を外から眺める読者の視点をも含めているのが興味深い。そのズレから伊藤潤二特有の奇妙な笑いが生じるのではないかと思ったりもするが、たぶん間違っているだろう。
◆桐島いつみ『イッパツの女〜麻雀とエッチを強引に両立する女』竹書房,1998。 多牌の場面はめちゃめちゃ笑った。素晴らしい。桐島いつみに限らず、ギャグ系の少女マンガ家があまり評価されないのはどうしてだろう。
◆望月花梨『笑わない理由(1)』白泉社,1998。 少女が傘をさして花畑に座りこんでいる表紙の絵が良かったので購入。すでに六冊の単行本を出しているのだが、この作家のことは全く知らなかった。全て集めたくなるほど、この『笑わない理由』はおもしろかった。「かわいくない」と言われ自分の顔にコンプレックスを抱いてしまった中学生が主人公。いじめられたりして、暗くなりそうな話なのだが、そうはなっていないのが見事。少女マンガの文法が洗練されたコマ運びは心地よく、絵も綺麗で、男性読者にもお薦め。自分の顔に対するコンプレックスなんて男女問わずにあるしね。しかし、そのような、対人の関係性が原因の悩みを表現するメディアが、少年マンガではなく少女マンガだってのがおもしろい。しかも、一昔前なら真面目な悲劇として描かれたであろうコンプレックスが、今の少女マンガでは、ほぼコメディとして描かれている。一段階クッションが置かれている。ここまで少女マンガの自意識は進化している。
◆『マンガの鬼アックス』vol.5。 今まで立ち読みしてたが、今回初めて買う。旧『ガロ』と比べると、マンガと文章の比率が丁度良いと思う。
特集・鈴木翁二。鈴木翁二としりあがり寿と喜国雅彦が対談。鳩山郁子は食わず嫌いであまり読まなかったのだが、今回の「passage」は良かった。アヤ井アキコ「LIFE」はモンキーパンチを貧相にしたような絵。物語は今回初めて読んだのでよく分からない。しりあがり寿「双子のオヤジ」はオチが冴えてる。笑った。これを論理的に文章化すると哲学や社会学になるのだが、笑えるだけしりあがりの方が上。本秀康「ワイルドマウンテンライフ」、キクチヒロノリ「友達讃歌」はその良さが私には全く分からない。つまりこれは純粋に子供の為のマンガなのだ。宇田川岳夫が早見純に触れている。最近、早見純についての記事を見かけること多し。値上がりしそうな雰囲気。やだなぁ。
◆先生堂。柄谷行人『畏怖する人間』、天野哲夫『禁じられた女性崇拝』、熊谷カズヒロ『サムライガン(1)』、森山塔『じっとしててね』。森山塔のフランス書院文庫は中身を確認しないと収録作がさっぱり分からないのが困る。
◆K、会社をズル休み。良いことだ。
◆ 新宿ディスクユニオン。『地獄まんじゅう』(うーうー叫んでる)、早川義夫『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』(暗くてとても良い)、三上寛『コンサートライヴ零狐徒』(時代性全面かと思っていたら、意外と、普遍的な若者の心性を歌ってる)、Spring『the last goodbye』(メロトロンばりばりプログレのSpringじゃなくて。ジャケ買い。ネオアコだった)。
◆紀伊國屋。望月花梨『笑えない理由(1)』、『SEXYコミック大全』、『アックスvol.5』。やっと『understanding comics』の翻訳が出版され、平積みにされていたが、二千円に躊躇する。
◆ハチ公のとこでKと待ち合わせてマックへ。なんだかマックは虚しくなる。意気消沈。
◆雑貨屋などを一時間程散策。紀伊国屋前で黒ずくめでおしろいの人達がパフォーマンス。寺山修司の演劇上演の宣伝パフォーマンスだった。ビラを貰うと、丸尾末広の絵。そういえば二年くらい前にも丸尾の絵の寺山演劇のチラシをどこかでもらったなぁ。寺山劇に特徴的な、土俗的な性を介したロマン主義=丸尾末広の絵なんだろうけど、そういうのはもう意味がないだろう。ま、それはそれでいいけど、べつに。撤退。
◆夜は白菜鍋。
10B/1998||12/1998
ISHIHARA, Shingo
shingoo@lily.sannet.ne.jp