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『ぴあ』2004年3/8号 NO.1042

「去年は忙しかったけど、楽しかった」と、はるは言う。一昨年、Theピーズが復活したと思ったら、去年、はる&シンイチロウ組は、奥田民生やYO-KINGとともにバンド、O.P.KINGでライブにアルバム発売にとフル回転の働きっぷり。

「O.P.KINGのおかげで新しいお客さんをガっとつかめるかなと思ったけど、全然効果ないね(笑)。余計、自分たちのショボさをアピールする場になったような。いやいや、素晴らしい仲間たちですよ(笑)」

その素晴らしい仲間との日々を経て、Theピーズの約1年ぶりのニューアルバム「アンチグライダー』が完成。全作『Theピーズ』のラストに収められていた曲が、「グライダー」。10年前も10年先も、ビルの屋上から遠く望む空が目に浮かぶような、いろんなものが目に染みる曲だった。

「あれで美しく完結しちゃうんだよな。あそこでまた活動停止でもイイと思ったんだけど、“ちょっとちょっと!”って。“もう1コ”って言われたから(笑)。去年は、ライブは楽しかったけど、曲作りする時間があまりなかったから、甘く見てた。でも、ちゃんとギリギリまでヘロヘロになるとね、神様が降りてくる。パタパタパタパタ……とね。で、“なんでもいいからやれ”と(笑)。考えなくてもいいとこまで行けば、こっちのもんだよ」

「ギリギリ間に合わした」とか、「どうにでもなってしまえ」とか「全速力で遠回せ」とか。リアルというより、そのまんま。けど、ザラっとした音の感触や、ちょっとだけ鼻にかかったはるの声は、ガレージで鳴らしたロックンロールをそのまま詰め込んだみたいで、やけに温かいし密度も濃い。

「ギターがここまでガンガン出てるレコードなんてそうないよな。でもアビさんがあまりにも血走ってるから、“下げろ”とは言えない(笑)。レコーディングもなんとか順調だったよ。バンドも順調。全然問題ない。身体がガタガタきてるだけ。みんな、やりたいことやってるっていう自覚があるからね。迷ったヤツの負けだからね。このトシでバンドやるのって」

そのあたりの腹の括り方は、さすが不惑を前にした大人の男。ただし、歌の中では相当、ジタバタ悪あがきしたり、ヤケクソになって好き放題毒づいたりしまくってますが。

「それは俺のキャラだからさ(笑)。弱者気取りしてるわけさ。小羊どものために。もう、大変ですよ、“ダメ人間キャラ”を売りにすると。本当は、僕だって幸せになりたい。けど、ちょっとでも幸せになって、ダメ人間オーラがなくなってきたと思われると、ヤバい。このキャラをキープするので、僕は人生を棒に振ってしまいました(笑)」

ガーンっとギターを鳴らして、日常のクサクサした気分をブチまけるTheピーズ音楽の、何がこんなに聴き手をアツくさせるのだろうーか!? 来月から始まるツアーの最終日は、日比谷野外音楽堂。初の野音ワンマンだ。

「どどーん!(笑)。いい天気になるといいけど、どんな天気でも野音は思い出になるんじゃないかな。酸素もあるし。俺らも楽しみにしてるから、元気にその日を迎えましょう」

取材・文*梶原有紀子/撮影*源賀津己


はる


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