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『ind's』1988 Oct-Nov NO.20 SWITCH発売

「俺たちよォ、"最近人気急上昇"とか言われるけど、いっつもこんな調子だよなあ」

   ガシガシにのりまくっては思いっきり汗をかく、バカ元気なお客に向かって、ヴォーカルのハルが話しかける。ヒューヒューと叫んで彼の言葉に反応する少年少女は、別に彼らが、"人気急上昇中の"バンドであろーがなかろーが、そんなことは全くカンケーない、といった表情をして、次の曲のカウントを待っている。"やりたいからやっている"バンドと、観たいから観にくる、聴きたいから聴きにくるお客。お互いが好き勝手にふるまいながら、それでいて楽しさを共有できてしまう気ちよさが、ピーズのライヴにはある。

   バンドの結成は87年日6月。メンバーはハル(ぺース、ヴォーカル)、アビさん(ギター)、マスヒロ(ドラム)の3人編成で、全員昭和40年生まれ。作詞・作曲は、ほとんど全部ハルが手がけている。平凡なビート・パンクとは違う、ロックンロールのストレートさと強引さを持ったサウンドは、骨っぽくてカッコいい。ステーシのドライヴ感は、どことなくローザ・ルクセンプルグを彷彿させるところがあり、「わぁーい、楽しいなぁーとっ」だけで終わっちゃうのがもったいない気もする。

   そういった力強いロックンロールにのっけて歌われる歌詞は、あくまでもカルイ。あまりにもカルすぎて、気が付かなかったようなことがあるくらいだ。

         じだらくぱかりかもてすぎる
         だったらオイラもっていー気になった
         進学校の悲しみ   アホ不足
         パンチパーマでパンク   しらふでバカ
         まともになるには楽しすぎる
         ふつーの人はかまってくれねえ
         しらふでバカ
         中学まではまともだった
         まともだったのに
         さんざんムリしてバカになった
         バカになったのに            (バカ)

         たよりないからさみしーから
         まきちらしたりばらまいたり
         チェルノブイリだの核だのなんだの
         ピルの解禁前世紀末の病いだ
         パップビビロッパァ!         (AlDS)

   この他、肉が食いたい歌、デブ・ジャージのバカヤローという歌、タクシーは大人数で乗ったら得をする歌etcと、いちいち心をくすぐってくる。ライヴ会場でテープを販売しているので、購入して感動してほしいと思う。

   今のところは東京近郊でしかライヴを行なってないが、「そろそろいろんなところを回った方がいいんじゃないかな、とか最近思ってます。あと、レコードとかも作ったりしたいけど……あー、でもめんどくさいからなぁ。どうなるかよくわかんないや」(ハル)

   この"いい加減さ"が私は大好きだ。

Copy*Misato KONDA/Photographs*Nobuo TACHI


『inds』のピーズ


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